ええ、私には貴方に懐い（憑い）ている少年が視えますが……

２興味

２－２ お化けは総称

アカリさん高校生ですよね？なんでダメって言われてる事しちゃうのかな？ごめん、で済む問題なのかな？

「ごめん、でもソラっていいでしょ？俺、明星（あかり）がアケボシでひなたちゃんが太陽でし。どっちも空に関係あるからソラ」

ジトリとしたワタシの視線に耐えられなくなったようにアカリさんが早口で言う。
アカリさんは早口で言い訳するように言いながら　どら焼きの入った菓子鉢をこっちに押して寄こした。

「ワタシもオニイサンと一緒で名前は付けてはいけない派なんです。だからワタシに視えるモノ、たぶんこの世の者でない存在の事はまとめて”お化け”って呼んでるんです。」

どら焼きでは誤魔化されません！と思いながらチラリとどら焼きを見ると「のんびり」と平仮名の焼き印が目に入る。これは！のんびり堂の限定のどら焼き？！つまりはのんびり焼きではありませんか！


**


気がついたら、ワタシはのんびり焼きが5つ入った紙袋を持って、アカリさんと一緒に駅に向かって歩いている。

アカリさんの傍らに少年は居ない。暫く起きそうも無かったから寝かせたままにしてきた。

知らないモノに名前を付けてはいけない。のと”名付け親”の重要性は共通点があるような気がする。名前をつけることによって存在を認めるし、責任が生じるのだ。
さっきの座敷で、少年がアカリさんについて行かないでワタシと話をした事も眠ってしまった事も名付けと関係があるのだろう。

黙って歩いているワタシに恐る恐ると言う感じでアカリさんが口を開いた。

「ソラって名前は駄目だったのかな？」

「そういう問題じゃないんです。アカリさん、あの少年に対してちゃんと責任を持てるんですか？一生一緒に居ることになるかもしれないんですよ？」

「それは、良いんだ」

良いの？！視えない霊を一生くっつけて歩くんだよ？あ？視えないから分かんないのかな？

「オニイサンに祓ってもらったりしないで下さいよ」

ワタシには関係ない。あの少年が一生アカリさんに憑いていようが、祓われちゃおうがどっちでも良い。そのはずなのに祓われたら可愛そうな気がするのは無防備な寝顔を見たからか？それともソラって名前を聞いてしまったからか？

「そんなに睨まないでも大丈夫。ソラは俺が面倒見るから！な ソラ？」

睨んでません！し、そこにソラは居ませんからね

「ソラは居ませんよ」

ワタシもとうとう少年をソラと呼んだ。もうヤケクソだ、一蓮托生、乗りかかった船だ。ワタシも船に乗ってあげるよ

「え？なんで？居ないの？」

「なんで？って　眠っているならそっとしておこうって言ったのアカリさんですよ」

居ないと知ってアカリさんがソワソワしだした

「もう駅そこですから、帰っていいですよ。心配なんですよね？オニイサンに祓われてるかもですよ？」

少し意地悪だったかな

「大丈夫、兄さんにはあんまり視えてないみたいだし」

「そうですか。まぁオニイサン縁がある場合は祓わないんですよね？名前つけちゃったから　もうアカリさんとソラの間には縁が生まれちゃいましたからね。大丈夫だと思いますよ」

意地悪を言った分　フォローしておく。マッチポンプって言うんだっけ？

「では　さようなら。のんびり焼きありがとうございます」

帰りたそうなアカリさんにポストの前で頭を下げる

「ごめんね　うん　じゃ　またね」