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第三部
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次に話をしたのは、治であった。中也は彼に、白秋と別れて関西へ移り住むことを告げた上で、一連の事情を辰雄に内緒にしてくれるよう頼んだ。すると治は、驚いたような声を上げた。
「とても信じられません……。いえ、最初にお聞きした時は、男性同士ということで驚いたものですが、マンションにお邪魔した時、思ったんです。お二人は、本当に愛し合ってらっしゃるんだなあと」
「――そうでしょうか」
「ええ。僕と大城さんが話す度に、名人は刺すような眼で僕を睨んでいましたよ」
治は苦笑交じりに言った。
「その彼があなたを手放すなんて、しつこいようですが、信じられません。まあ、人様の恋愛に口出ししたくはありませんが……」
「もう終わったんですよ」
中也はきっぱりとそう告げた。
「ホリ先生。お願い事ばかりで恐縮なのですが、最後にもう一つだけ。先生はお仕事上、囲碁関係の人と関わることも多いでしょう。でももし白秋や、それ以外の人に聞かれても、絶対に僕の居場所は教えないでもらえますか」
「――仕方ありませんね」
治は、不承不承といった様子で承諾した。
芙美子も、治と同様の反応を見せた。
「関西へ行くということは、遠距離恋愛になるの?」
当初彼女は、そう思ったらしかった。
「いや、白秋とは別れることになった」
そう告げると彼女は、目を見張った。
「嘘でしょ? 白秋先生、公開プロポーズまでしたじゃない」
「プロポーズと言ったって、法的に結ばれたわけじゃない。雑誌のインタビュアーだって、言っていただろう? 所詮、男同士なんて、脆い絆なんだよ」
それでも芙美子は、納得しない様子だった。
「そうかなあ。白秋先生、中也さんのことを溺愛って感じだったじゃない。自分も関西に住んで、そこから手合いに通うとか言い出しそうよ」
――そんなこと、あるはずが無い。自分を探すことすらしないに違いない。
中也は、そう自分に言い聞かせた。
「とても信じられません……。いえ、最初にお聞きした時は、男性同士ということで驚いたものですが、マンションにお邪魔した時、思ったんです。お二人は、本当に愛し合ってらっしゃるんだなあと」
「――そうでしょうか」
「ええ。僕と大城さんが話す度に、名人は刺すような眼で僕を睨んでいましたよ」
治は苦笑交じりに言った。
「その彼があなたを手放すなんて、しつこいようですが、信じられません。まあ、人様の恋愛に口出ししたくはありませんが……」
「もう終わったんですよ」
中也はきっぱりとそう告げた。
「ホリ先生。お願い事ばかりで恐縮なのですが、最後にもう一つだけ。先生はお仕事上、囲碁関係の人と関わることも多いでしょう。でももし白秋や、それ以外の人に聞かれても、絶対に僕の居場所は教えないでもらえますか」
「――仕方ありませんね」
治は、不承不承といった様子で承諾した。
芙美子も、治と同様の反応を見せた。
「関西へ行くということは、遠距離恋愛になるの?」
当初彼女は、そう思ったらしかった。
「いや、白秋とは別れることになった」
そう告げると彼女は、目を見張った。
「嘘でしょ? 白秋先生、公開プロポーズまでしたじゃない」
「プロポーズと言ったって、法的に結ばれたわけじゃない。雑誌のインタビュアーだって、言っていただろう? 所詮、男同士なんて、脆い絆なんだよ」
それでも芙美子は、納得しない様子だった。
「そうかなあ。白秋先生、中也さんのことを溺愛って感じだったじゃない。自分も関西に住んで、そこから手合いに通うとか言い出しそうよ」
――そんなこと、あるはずが無い。自分を探すことすらしないに違いない。
中也は、そう自分に言い聞かせた。
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