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第二部

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 翌朝目覚めた中也は、驚いた。朝食にしては豪華すぎるメニューを、白秋が準備してくれていたのだ。それも、中也の好物ばかりだった。デザートのパンケーキも、中也のお気に入りの店のものだった。
 ――このために、昨夜は夜食を控えろと言ったのかな。
 白秋は、中也が食べる姿を、にこにこしながら眺めていた。食事が終わると、彼は中也に、一冊の週刊誌を差し出した。
「待たせたね。これは、今日発売なんだ。まずは、読んでくれるか」
 そう言って彼が指差した見出しに、中也の目は釘付けになった。
「四冠棋士の息子、『指導碁詐欺』か?」
 記事の内容は、次のようなものだった。
『囲碁の和倉泡鳴四冠の息子に、詐欺の疑いが浮上している。自身も囲碁棋士であるJは、都内の碁会所で指導碁を行った際、特別指導を追加するという建前で、店の規定料金を上回る金額を客に請求。しかし、そのような追加サービスは行われなかった。不満に思った客の一人が、Jに直接苦情を申し立てたところ、Jはその客を呼び出して、殴る蹴るの暴行を働いた。他にも、Jは同じ店に通う女性客複数に対し、個人指導という名目でホテルに連れ込み、薬物入りの酒を飲ませて性的暴行に及んだ疑いが持たれている。警察は、近く、Jと碁会所に対して、事情を聞くものとみられ……』
 記事には、匿名で複数のプロ棋士の証言も載っていた。大手合昇段を決める対局の際、『J』は反則や相手に薬を盛るなど、卑怯な手口を繰り返していたらしく、それはプロの間では有名なようだった。
「この碁会所って、まさかマロンじゃないですよね?」
 聞きたいことは山ほどあったが、取りあえず中也はそう尋ねた。
「まさか。カノコさんはしっかりしているから、こんな真似を見逃すはずがないよ。まあ、この碁会所の席主も、薄々は気づいていたようだが。でも、あの和倉泡鳴の息子ということで、注意しようにも勇気が出なかったらしい」
「へえ」
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