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第二章 自立

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 麻生が、あっけにとられた顔をする。
「もちろん、構わないけど……。真凜、急に積極的だね?」
「うん! だって、僕のせいで叶真が幸せを犠牲にしていたなら、申し訳ないもの」
 降って湧いた案だが、真凜は急に道が開けてきたような気がした。
「ただ、僕の家からだと『ドン・ラヴニール』には遠くなるけど、通うのは平気? それに、オンライン講師の仕事はどうするの?」
「全然、平気。それにレッスンは、パソコンさえあればできるから」
 何より、麻生と一緒に暮らせると思うだけで、真凜は頬が緩んできたのだった。
 映画と食事を終えた後、真凜は麻生のアパートに一緒に帰った。彼が住んでいるのは、『藤堂百貨店』があるS駅から数駅ほど離れた所にある、ワンルームの部屋だった。最低限の家具しかない、簡素な住まいだ。麻生の洗練された身なりや物腰とはやや不釣り合いな気がして、真凜は意外に思った。
「狭いよね? ごめんね」
 麻生は、恥ずかしそうに言った。
「本当は、広い部屋を用意してから、一緒に住もうって誘うつもりだったんだけど……」
「そんなの、気にしないって」
 真凜は麻生にきゅっと抱きついた。
「むしろ狭い方が、類人と密着できて嬉しい」
「誘ってるの?」
 麻生はクスクス笑った。
「昨日は無理させちゃったから、今日は健全に、映画と食事だけで帰すつもりだったんだけどな。また我慢できなくなりそうだ」
 真凜は顔を伏せると、いいよ、と小さく呟いた。正直、身体は少し辛い。でも、麻生が求めてくれるなら応えたかった。何より、真凜自身が彼に触れたくて仕方なかったのだ。昨日のイレギュラーなヒートは、すでに収まったというのに。
(これが、恋……?)
 麻生は真凜の顎を捕らえると、唇を重ねてきた。しばらく真凜の唇を貪った後、彼は真凜を抱き上げ、ベッドまで運んだ。きっちりと整えられたシーツの上に横たえられる。麻生の匂いを感じて、真凜は陶然となった。
 麻生は一度ベッドから離れると、タンスから何やら取り出した。真凜と目が合うと、彼は説明するように言った。
「避妊はした方がいい。いくら医者にそう言われたとしても、妊娠の可能性はゼロじゃないだろう。やっと仕事にも慣れてきたところなのに、今子供ができたりしたら、真凜にはすごく負担がかかる。だから、念のため、ね」
「……」
 麻生は、慣れた手つきでパッケージを開封している。真凜は起き上がると、ベッドの上に正座した。思い切って、尋ねてみる。
「……あのさ。そういうの、普段から使ってるの?」
 麻生は、顔色を変えた。
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