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蜜月
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その日玲は、自宅で夕食の準備をしながら、アレンの来訪を待っていた。ポケットに入れていたスマホから、ピロンと通知音がする。確認すると、予想通りアレンからだった。
『今、スクールを出たところ。早く会いたい。愛してるよ』
相変わらずのこまめさに、玲は苦笑する。付き合い始めてからというもの、この手のメッセ―ジが一日に何件も送られてくるのだ。
『おはよう、今日も愛してる』
『毎日、レイのことを考えてるよ』
などなど。とはいえ玲も、バイト中はなかなか返信できない。しかしアレンは、玲の返事のある無しなど気にも留めていないようで、次々に新しいメッセ―ジを送ってくる。そんなわけで、バイトが終わる頃には、スマホは彼からのメッセ―ジで一杯になっているのであった。そのことに玲が恐縮すると、アレンは屈託なく笑った。
『気にしないで。僕が送りたくて送っているだけだから。これでもまだ、レイへの愛を語り尽くせないくらいだ』
アメリカの男性は皆こうなのだろうか、と玲はやや戸惑った。もっとも、悪い気はしないのだが……。
一方倉木は、あれ以来ごく普通に玲に接してくれる。まるで、最初から何も無かったかのようだった。ただ、彼の部屋の鍵だけはまだ返せずにいた。繁忙期のせいか、倉木は天海と一緒にいることが多く、なかなか二人きりになるチャンスが無いのである。その天海はといえば、どういう風の吹き回しか、最近はすこぶる機嫌が良い。玲への嫌がらせも、めっきり少なくなっていた。
咲には倉木と別れたことを打ち明けたが、こちらも反応はクールなものだった。彼女は今、美月への対抗意識で、英語を猛勉強中なのだ。英語で頭の中が一杯なおかげで、玲たちのことを詮索する余裕も無いらしい。それは玲にとって幸いだった。
――何もかも、順調だな……。
そんな思いに浸りながら料理を盛りつけていると、チャイムが鳴った。ドアを開けるなり、アレンは玲に抱きついてきた。
「レイ、会いたかった!」
さすがに気恥ずかしくなり、玲は軽く彼を抱き返しただけで中に招き入れた。
「夕食できてるよ。食べる?」
「うん。今日は何?」
「カツ煮だよ」
途端に、アレンは目を輝かせた。予想通りの反応に、玲は可笑しくなった。このメニューは、彼の大好物なのだ。
『今、スクールを出たところ。早く会いたい。愛してるよ』
相変わらずのこまめさに、玲は苦笑する。付き合い始めてからというもの、この手のメッセ―ジが一日に何件も送られてくるのだ。
『おはよう、今日も愛してる』
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などなど。とはいえ玲も、バイト中はなかなか返信できない。しかしアレンは、玲の返事のある無しなど気にも留めていないようで、次々に新しいメッセ―ジを送ってくる。そんなわけで、バイトが終わる頃には、スマホは彼からのメッセ―ジで一杯になっているのであった。そのことに玲が恐縮すると、アレンは屈託なく笑った。
『気にしないで。僕が送りたくて送っているだけだから。これでもまだ、レイへの愛を語り尽くせないくらいだ』
アメリカの男性は皆こうなのだろうか、と玲はやや戸惑った。もっとも、悪い気はしないのだが……。
一方倉木は、あれ以来ごく普通に玲に接してくれる。まるで、最初から何も無かったかのようだった。ただ、彼の部屋の鍵だけはまだ返せずにいた。繁忙期のせいか、倉木は天海と一緒にいることが多く、なかなか二人きりになるチャンスが無いのである。その天海はといえば、どういう風の吹き回しか、最近はすこぶる機嫌が良い。玲への嫌がらせも、めっきり少なくなっていた。
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