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結局その次の土曜日、玲は咲を連れて英会話カフェを訪れた。あれ以来、アレンからのメッセージは放置したままだ。
『本当は恋人がいる。ノーと答えたのは嘘だ』
そう言えば済むことなのに、玲にはそれができずにいた。アレンの傷つく顔を見たくなかったのだ。この状況もまた、彼を傷つけるであろうことは分かっているのに、玲には決断ができなかった。
「あら、そちらは? ニューフェイスね。もしかしてレイ君の彼女かしら?」
咲を見るなり、美月はとんでもないことを言い出した。
「ちょっ……。違いますよ。彼女はバイト仲間です」
玲は慌てて弁明したが、美月はなかなか信じない様子だった。咲は物おじすることなく美月に挨拶したが、美月はやや顔をゆがめた。
――二人、反りが合わなさそうだな。
そんな玲の直感は的中した。レッスンが開始すると、美月は咲を集中攻撃し始めた。咲は下手くそな英語でも堂々と喋ったが、それが美月の癇に障ったようなのだ。気の強い咲も、さすがに語学力では美月に敵うはずもなかった。さらに、いつもなら細やかに生徒たちに気を配るアレンが、何故だか今日は関わろうとしない。玲は仕方なく、咲に何度か助け舟を出してやった。
レッスンが終わり、美月たちが引き揚げていくと、咲は玲に耳打ちしてきた。
「このカフェって、いつもこのアレンって先生が担当なの?」
「そうだよ」
あれでは楽しめなかっただろうな、と思いながら玲は答えた。
「じゃあホームページに出ていた先生は?」
「カーターのこと? スクール担当だよ。場所はあっち」
「ふうん、ありがと。ちょっと話を聞いて来ようかな」
そう言うなり、咲はあっという間にスクールの方へ行ってしまった。そこへ、見計らったようにアレンがやって来た。
「アレン、ええと……。ごめん、今日は何も料理を持って来れていないんだ」
咲に見咎められるのを警戒したのである。話さなければいけないのは別の内容だと分かっているが、取りあえず玲はそう言った。
「いいよ。その方がかえっていい」
驚いてアレンを見上げると、彼は玲が前回渡したキンピラの容器を押し付けてきた。
「こういうやり取りは、最後にしようと思っていたから。タッパーを返せてよかった」
そこへ、咲が戻って来た。玲が言葉を発する間も無く、アレンは立ち去って行った。
『本当は恋人がいる。ノーと答えたのは嘘だ』
そう言えば済むことなのに、玲にはそれができずにいた。アレンの傷つく顔を見たくなかったのだ。この状況もまた、彼を傷つけるであろうことは分かっているのに、玲には決断ができなかった。
「あら、そちらは? ニューフェイスね。もしかしてレイ君の彼女かしら?」
咲を見るなり、美月はとんでもないことを言い出した。
「ちょっ……。違いますよ。彼女はバイト仲間です」
玲は慌てて弁明したが、美月はなかなか信じない様子だった。咲は物おじすることなく美月に挨拶したが、美月はやや顔をゆがめた。
――二人、反りが合わなさそうだな。
そんな玲の直感は的中した。レッスンが開始すると、美月は咲を集中攻撃し始めた。咲は下手くそな英語でも堂々と喋ったが、それが美月の癇に障ったようなのだ。気の強い咲も、さすがに語学力では美月に敵うはずもなかった。さらに、いつもなら細やかに生徒たちに気を配るアレンが、何故だか今日は関わろうとしない。玲は仕方なく、咲に何度か助け舟を出してやった。
レッスンが終わり、美月たちが引き揚げていくと、咲は玲に耳打ちしてきた。
「このカフェって、いつもこのアレンって先生が担当なの?」
「そうだよ」
あれでは楽しめなかっただろうな、と思いながら玲は答えた。
「じゃあホームページに出ていた先生は?」
「カーターのこと? スクール担当だよ。場所はあっち」
「ふうん、ありがと。ちょっと話を聞いて来ようかな」
そう言うなり、咲はあっという間にスクールの方へ行ってしまった。そこへ、見計らったようにアレンがやって来た。
「アレン、ええと……。ごめん、今日は何も料理を持って来れていないんだ」
咲に見咎められるのを警戒したのである。話さなければいけないのは別の内容だと分かっているが、取りあえず玲はそう言った。
「いいよ。その方がかえっていい」
驚いてアレンを見上げると、彼は玲が前回渡したキンピラの容器を押し付けてきた。
「こういうやり取りは、最後にしようと思っていたから。タッパーを返せてよかった」
そこへ、咲が戻って来た。玲が言葉を発する間も無く、アレンは立ち去って行った。
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