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④砕けたもの
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どれくらい歩いたのだろう。
洋太と暮らす家を出てから、蒼は呆然としたまま足を動かすだけだった。
何処に向かうでもなく、また宛もなく。
まるで浮浪者のようにさ迷い歩く蒼は端から見ても異質に映った。
飲まず食わずでいた為、軽い低血糖と脱水を起こしかけているのか歩き続ける蒼の体はどんどん怠く重くなっていくけれど、それでも蒼は足を止めなかった。
やがて体の力が抜け足も動かなくなった頃、蒼は力なく地面に倒れ込んだ。
目を閉じると洋太と女の行為が瞼の裏に浮かぶ。
ああ、あれはセックスをしていたんだ。夫婦の寝室で、蒼も眠るベッドで、見知らぬ女と洋太はセックスしていたんだ。
何処か他人事のように感じながら、あの行為がセックスだと理解した瞬間、蒼の目から一筋涙が流れた。
どうしてどうしてどうして。色んな疑問が次々と浮かぶけれど、答えは出ない。
けれどハッキリと理解した事がある。
洋太は蒼を愛してはいない、と。
洋太が蒼に想いを伝えた時、結婚当初は少しは愛があっただろうか。それさえも分からなくなった。
蒼を蔑ろにし始め外泊も多くなり、八つ当たりのような言葉を浴びせ冷たい態度を取った時からはもう、洋太の蒼への愛は無かったに違いないが。
そして冷たかった態度が軟化した後、ベッドで“愛してる”と囁かれた言葉が何の気持ちもない、ただ文字を言葉にしただけなものだったのだとはっきり理解した瞬間だった。
「…ふ、…ふふ、」
蒼はおかしくて堪らなかった。
自分自身がおかしくて堪らなくなった。
見たくないものは見ない。
聞きたくない事は聞かない。
信じたくないものは信じない。
そうして逃げ続けた結果が、全部自分に返ってきている。
事実はすぐ目の前にあったのに、違う違うと否定して、真実に気付きたくもなくて、疑っているのに信じている振りをしてきた蒼は救いようのない馬鹿だ。
洋太を愛していた。その気持ちは本物だった。
幼い頃から洋太という男を蒼は真実、愛していた。
自分の何もかもを捧げてもいい。
尽くして尽くして、不幸になってもいいと思えるくらい。
けれど、その不幸になってもいいと思う気持ちは、自分の隣に洋太がいることが前提だった。
自分には洋太しかいない。これから先ずっと。そう、少し前までの蒼は確信すらしていた。
蒼の人生の大半は人から疎まれるか嫌われるか、望んでもいない欲の対象として見られるか、だった。
勿論蒼に対し無関心な人間の方が多かっただろう。
けれどそれは神崎 蒼という人間を知らない者ばかりで神崎 蒼を知る大半の人間は根も葉もない噂を信じおかしな視線を蒼へ向ける。
それは嫌悪、それは不快感、それは欲の対象、それは…特別を得る為の、優越を得たいが為の、利己的で打算的なもの。
蒼は男が告げた言葉の意味も理解した。
「…洋ちゃんにとって私は…都合のいい女だったんだね…。」
言葉にするとすとんと納得出来た。
ぱきりと耳元で何かが折れる音がした瞬間、蒼の世界はひび割れ、足元から崩れていく。
「蒼は自身を人より劣るとそう思っているが、周りは違う。
お前はな、己が意図せずとも男の欲を誘い女の嫉妬心を煽るのよ。
それは何も年の近い女たちだけではない。女は幾つ年を重ねても女だからな。
本来は何があっても味方であったはずの実の母さえもお前に嫉妬した。」
崩れゆく蒼の世界に久しく耳にしていなかった声がした。
「あの男は凡庸な男だった。変わったのはお前と出会ってからだろう。
凡庸だった男の傍に、嫌でも周囲の視線を集めるお前がいた。
孤立し、誰からも遠巻きにされているお前。
女たちからは嫉妬され、男たちから欲を抱かれるお前。
お前は自身のことを知らなすぎたのよ。」
男の言葉通り、蒼は自分を人より劣っていると思っている。
男たちから変な目で見られていたのも理解していたが、いつだって蒼は仲間外れにされ孤立していたから、周囲からの好意よりも嫌悪の方を大きく感じていたのだ。向けられてきた好意だって純粋なそれではなかった。
「あの男は男の視線を集めるお前を好いておるだけよ。お前も、もう理解しておろう?」
「女をお前だけしか知らなんだあの男は、自分への好意に大層弱かった。
お前がいるのに、強く抵抗せず拒絶もせず呆気ないほど短い間でお前以外の女に堕ち、お前への罪悪もなくまぐわっておったぞ。」
「そして相手の女も。あの男が妻たるお前より自分を選んだ事に優越を感じて醜く笑っておったわ。あの男と似た者同士、実に似合いの男女ではないか。」
男の言葉の一つ一つを事実と認めると、一つ、また一つ蒼の中にあった何かが壊れていく。
それは洋太との過去。
それは洋太との未来。
それは洋太への愛。
これまで蒼を支えていた愛が壊れたら、残るものは何だろうか。
これからの人生、孤独という地獄が待っているのだろう。
先の事は分からないけれど、それだけは理解出来た。
死ぬまで孤独。それは、とてつもなく恐ろしい。
「孤独は嫌か。恐ろしいか。」
男が問う。
「常に孤立してきたお前は孤独の恐ろしさを知っておるから…尚恐ろしいはずよな。」
仲違いしたまま死んだ母親。
親子だった瞬間が壊れた日の、憎しみがこもった表情と視線。
洋太の冷たい態度。そして見知らぬ女に愛を囁きながらセックスをしていたあの忌まわしい光景。
逃げ、目を反らしていた事実と真実に向き合った瞬間、自分の中の大切なものが確かに折れる音がした。
そして蒼の世界は壊れた。
「お前を赦そう、蒼。」
虚空を見つめていた蒼の瞳に、男の姿が映る。
男は蒼をそっと抱き抱え、涙で濡れる蒼の目尻に口付けた。
目を閉じ、唇の感触が消え蒼が再び瞼を開けた瞬間には別の場所へと移動していた。
それは夜毎男に抱かれたあの部屋だったが部屋は昼間のように明るかった。
悪夢を見ていた頃、部屋はいつも蝋燭の頼りない明かりで薄暗く何処か寂しく感じる空間だったが、明るいだけで随分違うように感じた。
開いた障子の向こう側には様々な花が咲き乱れ、まるで極楽のように美しい。
「恐れる必要などないぞ、蒼。
お前は独りではない。俺が傍にいてやろう。
お前をこの世で一等愛しておるのは俺よ、蒼。」
蒼は衝動的に男を見上げた。
「いつでもお前の名を呼んでやろう。
お前を決して独りにはさせん。
愛して愛して、愛し尽くしてやろう。永久に。
俺が傍にいてお前を愛し続け、お前を守ってやろうな。」
だから孤独に怯えることも、孤独を恐れることもない。
男の表情、視線は蒼への愛に満ちていた。
この男は自分を裏切ったりしない。
この男の言葉は信じていい。
この男は絶対に約束を違えない。
男の言葉、存在まるごとに安堵した蒼は自分とは違う逞しく広い肩に腕を回し、初めて、自ら男の胸に擦り寄った。
「蒼、我が妻よ。
お前を待つ間の何と退屈で寂しいことだったか。
待ち続けた後の腹立たしさも、憎しみも…今、全て赦した。
これよりは俺の妻として。お前は誰よりも幸せになる。幾久しく。」
蒼を見る男はそれはそれは嬉しそうに。こんなに喜んでいる男の表情を蒼は初めて見た。
「よく耐えた。さぞ辛かったろう、蒼。
友にも家族に恵まれず、あの男からの仕打ちに酷く傷付いただろう。
これからは俺がおるからな。
お前の夫たるこの俺が、お前を愛し抜いてやる。」
一度空っぽになった蒼の心に、また灯火が宿った。
現実で辛い日々を過ごしてきた蒼。
きっと、自分の幸せは最初から此処にあったのだと、蒼は何故かそう思った。
男の腕の中はとても温かくて、心地よい。
男の傍にはきっと、約束された幸せがある。
「安心して幸せになれよ、蒼。
お前を傷付けるものは、もう何もない。
お前は幸せだけを感じておればいい。
幸せと、夫たる俺への愛だけを。」
壊れた蒼の世界が男によって新しく創られていく。
「抱くぞ、蒼。返事は聞かぬ。
お前の夫が誰か…二度と忘れぬようとことんまで理解させてやろう。
お前が忘れていたとしても、お前が嫌がっても、お前が恐れても、俺はお前を手離さん。逃げるのなら何処までも追い、何度でもこの腕に抱く。
昔も今もこの先も。お前は変わらず俺の妻よ。」
男の熱く、蕩けるような視線の中に大きな愛が宿っているのに蒼は気付いた。
蒼に向ける笑みは慈愛で満たされ、蒼の体を包む腕は力強くとも労るように優しい。
ずっとずっと昔に、こんな風に男と過ごした事がある気がする。
蒼にそんな記憶はないから、きっと気のせいだろうけれど。
でもずっと昔に、二人、互いに見つめ笑い合うこんな光景が当たり前だった気がして…蒼は嬉しくて堪らない気持ちになった。
“また帰って来れた”と。そんな呟きが自分の中で聞こえた気がした。
嬉しくて何処か切ない、だけどとても幸せな気持ちだった。
「覚悟せよ、嫁御。」
二人の唇が自然と重なると、まるで祝福するように鳥が囀ずった。
男と蒼の契りは夜が来て朝が来て、また夜が来て朝が来るのを何度も繰り返した。
男は容赦なく蒼を抱き続けたけれど、悪夢とは全く違った。
悪夢の中で蒼を抱く男はいつも余裕を崩さなかった。
時には憎しみや苛立ちをぶつけるように蒼を抱き、時には憐れむような視線を向け、快楽と苦痛の表情を浮かべる蒼を見て愉快そうに笑う。その笑みには現実から逃げる蒼を小馬鹿にしたような蔑みが混じっていた事もあった。
しかし今の男にはいつも感じていた余裕がなかった。
男の、内に秘めていた愛が剥き出しになったような。
余裕もなく蒼の名を呼び、蒼の唇を塞ぎ舌を絡ませながらも尚、蒼の名を呼び続ける。
男の大きな体が蒼の華奢な体を覆い隠す様は、男の囲いから決して離すまいと語っているようだった。
蒼の無防備な膣へ男の精が放たれるたび、小さく唸なりながら男の眉間にぐっと皺が寄り、同じく絶頂を迎える蒼の額に張り付いた髪を掬いながら、真っ直ぐに向ける視線で愛を雄弁に語っていた。
肩にも首にも、項にも、胸にも腹にも。
蒼の全身には鬱血痕と歯形が大量に残り、男が蒼へ向ける執着が如何程か伺えてしまう。
蒼、蒼、俺の妻よ。
蒼、蒼、俺の宝よ。
蒼、蒼、蒼。
囀ずるように、咆哮するように、己番を何度も呼ぶ姿は正気には見えなかった。
男の愛を受け、そして知り、蒼はとてつもない多幸感で胸が満たされていた。
男の唇が蒼の唇に重なる。
二人の唇の間に紡がれた銀の糸さえ愛しくて、蒼は何度も口付けをねだった。
男からの愛を受けるたび、新しい蒼へ変わっていく。
母親の事、これまで出会った誰かのことと、これまでにあった様々な出来事。
洋太との思い出も情も、洋太へ感じていた色んな感情も一つ、また一つ消えていく。
ぱちん、と頭の中で何かが一つ弾けると、蒼の中の何かが消えていった。
男の唾液が蒼の喉をこくりと通ると記憶の中にあった洋太の声が消えた。
(洋ちゃんはどんな声だったった?)
男の陰茎が蒼の膣壁を優しく擦ると洋太の顔が消えた。
(洋ちゃんはどんな顔だった?)
男の亀頭が蒼の子宮口を押し上げると初恋が消えた。
(洋ちゃんをいつ好きになったんだっけ?)
ぴたりと子宮口に押し付けた亀頭、その鈴口からとぷんとぷんと、男の濃厚な子種が蒼の子宮へ入った時には洋太との出会いが消えた。
(あの人とは、そもそもいつ出会ったんだろう)
そして。
「蒼、愛している」
共に絶頂を迎えながら耳元で愛していると男が囁いた瞬間、
(あの人って誰のことだっけ?)
蒼に中で洋太の存在そのものが綺麗さっぱりと消えた。
「蒼よ。お前の夫は誰だ?」
「ん、はぁ…だん、な、様ぁ…」
洋太の存在そのものが消えた瞬間、蒼は男の妻として新しく生まれ変わった。
彼方の世界は蒼にとって悪夢で、男の傍が蒼の現実に変わった瞬間でもあった。
「そうだ。俺がお前の夫だ。二度と忘れてはならんぞ?」
「ん、んっ…はぃっ、ごめ、ら、しゃ…ぐす、ごめ、な、しゃ…」
「よい。
だが…もう二度とお前の愛を俺以外の男へ向けてはならん。お前の愛は全て、俺に捧げるのだぞ。
分かったな?蒼。」
「はい、だんなさま…!」
旦那様、と蒼が男を呼ぶと男は甘やかすように蒼の名を呼び口付ける。
それはもう、この世の春を全て詰め込んだような蕩けた表情で。
蒼を愛でる最中、美しい金の瞳の中に鋭い光が宿ったように見えたものの、それは一瞬の出来事で蒼は全く気付かなかった。
「あやつもあの女も、あの時の男も。
さてどうしてやろうなぁ。」
くつくつと喉を鳴らしながら笑う男。
腕の中に囲われ男の逞しい胸に身を寄せていた蒼はきょとりとして男へ顔を向ける。
お前が気にすることではないぞと甘い笑みが返ってくれば、蒼はそれ以上特に気にした様子もなく再び男の体に身を寄せた。
気付いたところで、蒼に出来る事などなに一つないが。
夫となった男に愛され、蒼は己を知る。
己という女が男にとってどんな価値があるのか。
愛されて愛されて、ひたすらに愛されて。
男が蒼に向ける視線、言葉や熱、男の全てで蒼は己の価値を知っていく。
コンプレックスだった体は最大の武器となって夫となった男を喜ばせていた。
はしたなく喘ぐ蒼も、涙や鼻水、涎を垂らしたみっともない蒼も、どんな蒼も男は愛しいと全てで伝えてくる。
身も心も深く夫に愛され、蒼は生まれ変わる。
吐息一つ溢すだけでとんでもない色気が纏っており、それだけで男を惑わすことも出来るだろう。
未熟だった蒼の体は、男の手によって女に成長した。
契りを交わした男だけの、蒼に。
夫だけの美しい妻に。
「ふむ。…現実を見せてやるのが一番いいだろうな。
悪夢という名の現実が一番の罰となろう。なあ、蒼。お前がどれほど美しい女か、あの男に存分に知らしめてやろうではないか。
そしてお前を手にしていた幸福が二度と戻って来ない事を理解させてやるのよ。」
男は蒼の目尻に口付けながら美しい顔を歪め、笑った。
蒼は男が口にする“あの男”が誰なのか分からないし、知りたいとも思わないけれど、夫が何やら楽しそうなのはいいことだと思ってにこりと笑った。
生まれ変わった蒼の中に洋太はいない。
存在すらしていない。
今の蒼に洋太という存在も他の誰も必要もなく、仮に存在を知ったとしてもどうでもいい。
だって蒼にとって大切なのは今、自分を抱き締めている夫だけなのだから。
歪んだ顔で笑っていた男は蒼に視線を向けると一瞬でその表情を変える。
慈愛という言葉がぴったり当てはまる表情で、愛い愛いと蒼に頬擦りし顔中に唇を落とす。
蒼は顔を赤らめながらうっとりと男を見つめ、同じように男の顔に口付けをした。
「愛しておるぞ、俺の蒼。
いついつまでも…お前は俺の妻よ。」
「…愛してます、私の旦那様。」
どちらからともなく、男と蒼の唇が重なり、夫婦は再び愛し合う。
「は、蒼っ、愛いなあ…愛い愛い。
お前のその蕩けた表情は腰にくるわ。
甘い声も、縋る手も、絡めてくる足も魔羅を締め付けて離さん貪欲な女陰もっ…はぁっ…何もかも堪らんなあ…!」
「あんっ、あんんっ、だんな、しゃまっだんな、しゃまぁ…!すきっ、すき、だいすきぃっ!もっと、もっと、あんっもっとっ、とんとん、とんとんって、してぇ…♡」
「おお、よしよし…♡可愛い妻の頼みだ。お前の夫がたぁんと悦くしてやろうな♡」
果てても、何度果てようとも片時も離れず互いを貪り合う。
美しい夫は待ち続けた妻が自分の腕の中に戻ってきた歓びを噛み締めつつも、愛しい妻をほんのひと時でも手にした愚かな男へ憎しみを募らせていく。
愚かな男の幸せな日常は…あと僅かな時間しか残されていなかった。
洋太と暮らす家を出てから、蒼は呆然としたまま足を動かすだけだった。
何処に向かうでもなく、また宛もなく。
まるで浮浪者のようにさ迷い歩く蒼は端から見ても異質に映った。
飲まず食わずでいた為、軽い低血糖と脱水を起こしかけているのか歩き続ける蒼の体はどんどん怠く重くなっていくけれど、それでも蒼は足を止めなかった。
やがて体の力が抜け足も動かなくなった頃、蒼は力なく地面に倒れ込んだ。
目を閉じると洋太と女の行為が瞼の裏に浮かぶ。
ああ、あれはセックスをしていたんだ。夫婦の寝室で、蒼も眠るベッドで、見知らぬ女と洋太はセックスしていたんだ。
何処か他人事のように感じながら、あの行為がセックスだと理解した瞬間、蒼の目から一筋涙が流れた。
どうしてどうしてどうして。色んな疑問が次々と浮かぶけれど、答えは出ない。
けれどハッキリと理解した事がある。
洋太は蒼を愛してはいない、と。
洋太が蒼に想いを伝えた時、結婚当初は少しは愛があっただろうか。それさえも分からなくなった。
蒼を蔑ろにし始め外泊も多くなり、八つ当たりのような言葉を浴びせ冷たい態度を取った時からはもう、洋太の蒼への愛は無かったに違いないが。
そして冷たかった態度が軟化した後、ベッドで“愛してる”と囁かれた言葉が何の気持ちもない、ただ文字を言葉にしただけなものだったのだとはっきり理解した瞬間だった。
「…ふ、…ふふ、」
蒼はおかしくて堪らなかった。
自分自身がおかしくて堪らなくなった。
見たくないものは見ない。
聞きたくない事は聞かない。
信じたくないものは信じない。
そうして逃げ続けた結果が、全部自分に返ってきている。
事実はすぐ目の前にあったのに、違う違うと否定して、真実に気付きたくもなくて、疑っているのに信じている振りをしてきた蒼は救いようのない馬鹿だ。
洋太を愛していた。その気持ちは本物だった。
幼い頃から洋太という男を蒼は真実、愛していた。
自分の何もかもを捧げてもいい。
尽くして尽くして、不幸になってもいいと思えるくらい。
けれど、その不幸になってもいいと思う気持ちは、自分の隣に洋太がいることが前提だった。
自分には洋太しかいない。これから先ずっと。そう、少し前までの蒼は確信すらしていた。
蒼の人生の大半は人から疎まれるか嫌われるか、望んでもいない欲の対象として見られるか、だった。
勿論蒼に対し無関心な人間の方が多かっただろう。
けれどそれは神崎 蒼という人間を知らない者ばかりで神崎 蒼を知る大半の人間は根も葉もない噂を信じおかしな視線を蒼へ向ける。
それは嫌悪、それは不快感、それは欲の対象、それは…特別を得る為の、優越を得たいが為の、利己的で打算的なもの。
蒼は男が告げた言葉の意味も理解した。
「…洋ちゃんにとって私は…都合のいい女だったんだね…。」
言葉にするとすとんと納得出来た。
ぱきりと耳元で何かが折れる音がした瞬間、蒼の世界はひび割れ、足元から崩れていく。
「蒼は自身を人より劣るとそう思っているが、周りは違う。
お前はな、己が意図せずとも男の欲を誘い女の嫉妬心を煽るのよ。
それは何も年の近い女たちだけではない。女は幾つ年を重ねても女だからな。
本来は何があっても味方であったはずの実の母さえもお前に嫉妬した。」
崩れゆく蒼の世界に久しく耳にしていなかった声がした。
「あの男は凡庸な男だった。変わったのはお前と出会ってからだろう。
凡庸だった男の傍に、嫌でも周囲の視線を集めるお前がいた。
孤立し、誰からも遠巻きにされているお前。
女たちからは嫉妬され、男たちから欲を抱かれるお前。
お前は自身のことを知らなすぎたのよ。」
男の言葉通り、蒼は自分を人より劣っていると思っている。
男たちから変な目で見られていたのも理解していたが、いつだって蒼は仲間外れにされ孤立していたから、周囲からの好意よりも嫌悪の方を大きく感じていたのだ。向けられてきた好意だって純粋なそれではなかった。
「あの男は男の視線を集めるお前を好いておるだけよ。お前も、もう理解しておろう?」
「女をお前だけしか知らなんだあの男は、自分への好意に大層弱かった。
お前がいるのに、強く抵抗せず拒絶もせず呆気ないほど短い間でお前以外の女に堕ち、お前への罪悪もなくまぐわっておったぞ。」
「そして相手の女も。あの男が妻たるお前より自分を選んだ事に優越を感じて醜く笑っておったわ。あの男と似た者同士、実に似合いの男女ではないか。」
男の言葉の一つ一つを事実と認めると、一つ、また一つ蒼の中にあった何かが壊れていく。
それは洋太との過去。
それは洋太との未来。
それは洋太への愛。
これまで蒼を支えていた愛が壊れたら、残るものは何だろうか。
これからの人生、孤独という地獄が待っているのだろう。
先の事は分からないけれど、それだけは理解出来た。
死ぬまで孤独。それは、とてつもなく恐ろしい。
「孤独は嫌か。恐ろしいか。」
男が問う。
「常に孤立してきたお前は孤独の恐ろしさを知っておるから…尚恐ろしいはずよな。」
仲違いしたまま死んだ母親。
親子だった瞬間が壊れた日の、憎しみがこもった表情と視線。
洋太の冷たい態度。そして見知らぬ女に愛を囁きながらセックスをしていたあの忌まわしい光景。
逃げ、目を反らしていた事実と真実に向き合った瞬間、自分の中の大切なものが確かに折れる音がした。
そして蒼の世界は壊れた。
「お前を赦そう、蒼。」
虚空を見つめていた蒼の瞳に、男の姿が映る。
男は蒼をそっと抱き抱え、涙で濡れる蒼の目尻に口付けた。
目を閉じ、唇の感触が消え蒼が再び瞼を開けた瞬間には別の場所へと移動していた。
それは夜毎男に抱かれたあの部屋だったが部屋は昼間のように明るかった。
悪夢を見ていた頃、部屋はいつも蝋燭の頼りない明かりで薄暗く何処か寂しく感じる空間だったが、明るいだけで随分違うように感じた。
開いた障子の向こう側には様々な花が咲き乱れ、まるで極楽のように美しい。
「恐れる必要などないぞ、蒼。
お前は独りではない。俺が傍にいてやろう。
お前をこの世で一等愛しておるのは俺よ、蒼。」
蒼は衝動的に男を見上げた。
「いつでもお前の名を呼んでやろう。
お前を決して独りにはさせん。
愛して愛して、愛し尽くしてやろう。永久に。
俺が傍にいてお前を愛し続け、お前を守ってやろうな。」
だから孤独に怯えることも、孤独を恐れることもない。
男の表情、視線は蒼への愛に満ちていた。
この男は自分を裏切ったりしない。
この男の言葉は信じていい。
この男は絶対に約束を違えない。
男の言葉、存在まるごとに安堵した蒼は自分とは違う逞しく広い肩に腕を回し、初めて、自ら男の胸に擦り寄った。
「蒼、我が妻よ。
お前を待つ間の何と退屈で寂しいことだったか。
待ち続けた後の腹立たしさも、憎しみも…今、全て赦した。
これよりは俺の妻として。お前は誰よりも幸せになる。幾久しく。」
蒼を見る男はそれはそれは嬉しそうに。こんなに喜んでいる男の表情を蒼は初めて見た。
「よく耐えた。さぞ辛かったろう、蒼。
友にも家族に恵まれず、あの男からの仕打ちに酷く傷付いただろう。
これからは俺がおるからな。
お前の夫たるこの俺が、お前を愛し抜いてやる。」
一度空っぽになった蒼の心に、また灯火が宿った。
現実で辛い日々を過ごしてきた蒼。
きっと、自分の幸せは最初から此処にあったのだと、蒼は何故かそう思った。
男の腕の中はとても温かくて、心地よい。
男の傍にはきっと、約束された幸せがある。
「安心して幸せになれよ、蒼。
お前を傷付けるものは、もう何もない。
お前は幸せだけを感じておればいい。
幸せと、夫たる俺への愛だけを。」
壊れた蒼の世界が男によって新しく創られていく。
「抱くぞ、蒼。返事は聞かぬ。
お前の夫が誰か…二度と忘れぬようとことんまで理解させてやろう。
お前が忘れていたとしても、お前が嫌がっても、お前が恐れても、俺はお前を手離さん。逃げるのなら何処までも追い、何度でもこの腕に抱く。
昔も今もこの先も。お前は変わらず俺の妻よ。」
男の熱く、蕩けるような視線の中に大きな愛が宿っているのに蒼は気付いた。
蒼に向ける笑みは慈愛で満たされ、蒼の体を包む腕は力強くとも労るように優しい。
ずっとずっと昔に、こんな風に男と過ごした事がある気がする。
蒼にそんな記憶はないから、きっと気のせいだろうけれど。
でもずっと昔に、二人、互いに見つめ笑い合うこんな光景が当たり前だった気がして…蒼は嬉しくて堪らない気持ちになった。
“また帰って来れた”と。そんな呟きが自分の中で聞こえた気がした。
嬉しくて何処か切ない、だけどとても幸せな気持ちだった。
「覚悟せよ、嫁御。」
二人の唇が自然と重なると、まるで祝福するように鳥が囀ずった。
男と蒼の契りは夜が来て朝が来て、また夜が来て朝が来るのを何度も繰り返した。
男は容赦なく蒼を抱き続けたけれど、悪夢とは全く違った。
悪夢の中で蒼を抱く男はいつも余裕を崩さなかった。
時には憎しみや苛立ちをぶつけるように蒼を抱き、時には憐れむような視線を向け、快楽と苦痛の表情を浮かべる蒼を見て愉快そうに笑う。その笑みには現実から逃げる蒼を小馬鹿にしたような蔑みが混じっていた事もあった。
しかし今の男にはいつも感じていた余裕がなかった。
男の、内に秘めていた愛が剥き出しになったような。
余裕もなく蒼の名を呼び、蒼の唇を塞ぎ舌を絡ませながらも尚、蒼の名を呼び続ける。
男の大きな体が蒼の華奢な体を覆い隠す様は、男の囲いから決して離すまいと語っているようだった。
蒼の無防備な膣へ男の精が放たれるたび、小さく唸なりながら男の眉間にぐっと皺が寄り、同じく絶頂を迎える蒼の額に張り付いた髪を掬いながら、真っ直ぐに向ける視線で愛を雄弁に語っていた。
肩にも首にも、項にも、胸にも腹にも。
蒼の全身には鬱血痕と歯形が大量に残り、男が蒼へ向ける執着が如何程か伺えてしまう。
蒼、蒼、俺の妻よ。
蒼、蒼、俺の宝よ。
蒼、蒼、蒼。
囀ずるように、咆哮するように、己番を何度も呼ぶ姿は正気には見えなかった。
男の愛を受け、そして知り、蒼はとてつもない多幸感で胸が満たされていた。
男の唇が蒼の唇に重なる。
二人の唇の間に紡がれた銀の糸さえ愛しくて、蒼は何度も口付けをねだった。
男からの愛を受けるたび、新しい蒼へ変わっていく。
母親の事、これまで出会った誰かのことと、これまでにあった様々な出来事。
洋太との思い出も情も、洋太へ感じていた色んな感情も一つ、また一つ消えていく。
ぱちん、と頭の中で何かが一つ弾けると、蒼の中の何かが消えていった。
男の唾液が蒼の喉をこくりと通ると記憶の中にあった洋太の声が消えた。
(洋ちゃんはどんな声だったった?)
男の陰茎が蒼の膣壁を優しく擦ると洋太の顔が消えた。
(洋ちゃんはどんな顔だった?)
男の亀頭が蒼の子宮口を押し上げると初恋が消えた。
(洋ちゃんをいつ好きになったんだっけ?)
ぴたりと子宮口に押し付けた亀頭、その鈴口からとぷんとぷんと、男の濃厚な子種が蒼の子宮へ入った時には洋太との出会いが消えた。
(あの人とは、そもそもいつ出会ったんだろう)
そして。
「蒼、愛している」
共に絶頂を迎えながら耳元で愛していると男が囁いた瞬間、
(あの人って誰のことだっけ?)
蒼に中で洋太の存在そのものが綺麗さっぱりと消えた。
「蒼よ。お前の夫は誰だ?」
「ん、はぁ…だん、な、様ぁ…」
洋太の存在そのものが消えた瞬間、蒼は男の妻として新しく生まれ変わった。
彼方の世界は蒼にとって悪夢で、男の傍が蒼の現実に変わった瞬間でもあった。
「そうだ。俺がお前の夫だ。二度と忘れてはならんぞ?」
「ん、んっ…はぃっ、ごめ、ら、しゃ…ぐす、ごめ、な、しゃ…」
「よい。
だが…もう二度とお前の愛を俺以外の男へ向けてはならん。お前の愛は全て、俺に捧げるのだぞ。
分かったな?蒼。」
「はい、だんなさま…!」
旦那様、と蒼が男を呼ぶと男は甘やかすように蒼の名を呼び口付ける。
それはもう、この世の春を全て詰め込んだような蕩けた表情で。
蒼を愛でる最中、美しい金の瞳の中に鋭い光が宿ったように見えたものの、それは一瞬の出来事で蒼は全く気付かなかった。
「あやつもあの女も、あの時の男も。
さてどうしてやろうなぁ。」
くつくつと喉を鳴らしながら笑う男。
腕の中に囲われ男の逞しい胸に身を寄せていた蒼はきょとりとして男へ顔を向ける。
お前が気にすることではないぞと甘い笑みが返ってくれば、蒼はそれ以上特に気にした様子もなく再び男の体に身を寄せた。
気付いたところで、蒼に出来る事などなに一つないが。
夫となった男に愛され、蒼は己を知る。
己という女が男にとってどんな価値があるのか。
愛されて愛されて、ひたすらに愛されて。
男が蒼に向ける視線、言葉や熱、男の全てで蒼は己の価値を知っていく。
コンプレックスだった体は最大の武器となって夫となった男を喜ばせていた。
はしたなく喘ぐ蒼も、涙や鼻水、涎を垂らしたみっともない蒼も、どんな蒼も男は愛しいと全てで伝えてくる。
身も心も深く夫に愛され、蒼は生まれ変わる。
吐息一つ溢すだけでとんでもない色気が纏っており、それだけで男を惑わすことも出来るだろう。
未熟だった蒼の体は、男の手によって女に成長した。
契りを交わした男だけの、蒼に。
夫だけの美しい妻に。
「ふむ。…現実を見せてやるのが一番いいだろうな。
悪夢という名の現実が一番の罰となろう。なあ、蒼。お前がどれほど美しい女か、あの男に存分に知らしめてやろうではないか。
そしてお前を手にしていた幸福が二度と戻って来ない事を理解させてやるのよ。」
男は蒼の目尻に口付けながら美しい顔を歪め、笑った。
蒼は男が口にする“あの男”が誰なのか分からないし、知りたいとも思わないけれど、夫が何やら楽しそうなのはいいことだと思ってにこりと笑った。
生まれ変わった蒼の中に洋太はいない。
存在すらしていない。
今の蒼に洋太という存在も他の誰も必要もなく、仮に存在を知ったとしてもどうでもいい。
だって蒼にとって大切なのは今、自分を抱き締めている夫だけなのだから。
歪んだ顔で笑っていた男は蒼に視線を向けると一瞬でその表情を変える。
慈愛という言葉がぴったり当てはまる表情で、愛い愛いと蒼に頬擦りし顔中に唇を落とす。
蒼は顔を赤らめながらうっとりと男を見つめ、同じように男の顔に口付けをした。
「愛しておるぞ、俺の蒼。
いついつまでも…お前は俺の妻よ。」
「…愛してます、私の旦那様。」
どちらからともなく、男と蒼の唇が重なり、夫婦は再び愛し合う。
「は、蒼っ、愛いなあ…愛い愛い。
お前のその蕩けた表情は腰にくるわ。
甘い声も、縋る手も、絡めてくる足も魔羅を締め付けて離さん貪欲な女陰もっ…はぁっ…何もかも堪らんなあ…!」
「あんっ、あんんっ、だんな、しゃまっだんな、しゃまぁ…!すきっ、すき、だいすきぃっ!もっと、もっと、あんっもっとっ、とんとん、とんとんって、してぇ…♡」
「おお、よしよし…♡可愛い妻の頼みだ。お前の夫がたぁんと悦くしてやろうな♡」
果てても、何度果てようとも片時も離れず互いを貪り合う。
美しい夫は待ち続けた妻が自分の腕の中に戻ってきた歓びを噛み締めつつも、愛しい妻をほんのひと時でも手にした愚かな男へ憎しみを募らせていく。
愚かな男の幸せな日常は…あと僅かな時間しか残されていなかった。
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