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第四章 さだめ
(1) メンバーをさがせ
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第四章 さだめ
アカペラバンドを始めるうえで、自分たちにはいくつかの問題があった。
その中には、もちろんポピュラーアカペラを今までに経験してきた人がいないというのもあるし、それについては各自きちんと勉強や練習を始める必要があると思う。
でもそんなことは、いざ始めてしまえば正直些細な問題でしかない。(多分)
そんなことより、今のわたしたちにとって最大の課題を一つ挙げるとするなら、それは「ヒューマンビートボックスができる人を探すこと」だった。
『ヒューマンビートボックス』とは、この間のハミングバードの演奏で、声を使って打楽器のようなビートを鳴らしていた人の担当パートのことだ。
もちろん、仮にそのようなパートがいなかったとしても、アカペラバンドとしては普通に成立する。
しかし、彼女たちの演奏に魅了されていたわたしたちにとって、ヒューマンビートボックスは是が非でも入れたいパートだった。
早百合がこの間、新しく挑戦する洋楽のアレンジ集と一緒に、その教本一式を買って来てくれた。
とりあえず、まずはそれを参考に、試しに一人ずつ披露してみる。
しかし、思った以上に打楽器の音を出すのは難しく、野薔薇以外は全くと言っていいほどできなかった。
当の野薔薇も割とましという程度だったし、なにより彼女がそのパートになると、ベースという低音域のパートがいなくなってしまう。
やっぱり、それができる人を頑張って見つけ出すしかないみたいだ。
とはいえ探し出すのも、これはこれで大変なことだ。
この島に住んでいて、かつそのような特技を持つ人は、知り合いの中では全く見当がつかない。
なにせ、ただでさえ人口が少ない島だ。
その中で、かなりマイナーな条件にぴったり合う人を探すのは、砂浜に落としてしまったコンタクトレンズを見つけ出すみたいなもの。
つまり、頑張れば絶対にできないわけではないけど、かなり骨が折れる、ということだ。
そんなわけで、何も進展がないまま、気づけば六月になっていた。
半月程前から島が梅雨入りして、今日も朝からしとしとと小雨が降っている。
そんな折、わたしの家に珍しいお客さんが来た。
チャイムの音で急いで玄関のドアを開けると、サイドアップが自慢の彼女に明るく挨拶する。
「よく来たね。紅葉ちゃん!」
紅葉ちゃんとは、二年生になっても同じクラスになった。
というのも、クラスが一学年にそれぞれ二つずつしかない関係で、再びクラスメイトになる可能性はかなり高いのだ。
そしてさらに嬉しかったのは、美樹と野薔薇とも同じクラスになれたことだった。
最初の日に、わたしは早速紅葉ちゃんを二人に紹介した。
初めのうちは美樹を除いてみんな何となくよそよそしかったけど、しばらく経てばなんだかんだ打ち解けて一緒にお昼を食べる仲にまでなった。
また、紅葉ちゃんは週末になるとたまに練習にも顔を出して、活動風景を写真に撮ったり、その後なぜか一緒に掃除まで手伝ってくれたりしている。
その中で早百合とも次第に顔見知りになった。
その紅葉ちゃんが今日家に来てくれたのには理由がある。
先日、バンドのホームページを一緒に作ろう、と提案してくれたのだ。
一緒に、とはいってもわたしは機械系が全然ダメで、ほとんどの作業は紅葉ちゃんが黙々とやってくれた。
彼女はかなり慣れた手つきでパソコンを操作して、あっという間にブログ形式のホームページが一つでき上がった。
ページを下の方までスクロールすると、今までの活動内容が写真付きで手に取るようにわかる。
トップ画面には、今後の活動計画も載せられるというので、早く次の予定を決めなきゃ、と改めて心に決めた。
その後、台所から持ってきたジュースを飲みながら、しばし二人で談笑する。
新メンバー募集のことについても話すと、後でそれも載っけようか、と言ってくれた。
さらにしばらくくつろいでいると、紅葉ちゃんが突然何か閃いた顔をして急に立ち上がり、パソコンの方まで向かっていった。
「どうしたの?」
「いやね。ヒューマンビートボックスといえば、最近観た動画でそういうのが得意な女子高生がいたなぁって思いだして。
確か、この人だったような気がするんだけど」
やがて画面に映し出されたのは、とあるネット配信者のページだった。
アカペラバンドを始めるうえで、自分たちにはいくつかの問題があった。
その中には、もちろんポピュラーアカペラを今までに経験してきた人がいないというのもあるし、それについては各自きちんと勉強や練習を始める必要があると思う。
でもそんなことは、いざ始めてしまえば正直些細な問題でしかない。(多分)
そんなことより、今のわたしたちにとって最大の課題を一つ挙げるとするなら、それは「ヒューマンビートボックスができる人を探すこと」だった。
『ヒューマンビートボックス』とは、この間のハミングバードの演奏で、声を使って打楽器のようなビートを鳴らしていた人の担当パートのことだ。
もちろん、仮にそのようなパートがいなかったとしても、アカペラバンドとしては普通に成立する。
しかし、彼女たちの演奏に魅了されていたわたしたちにとって、ヒューマンビートボックスは是が非でも入れたいパートだった。
早百合がこの間、新しく挑戦する洋楽のアレンジ集と一緒に、その教本一式を買って来てくれた。
とりあえず、まずはそれを参考に、試しに一人ずつ披露してみる。
しかし、思った以上に打楽器の音を出すのは難しく、野薔薇以外は全くと言っていいほどできなかった。
当の野薔薇も割とましという程度だったし、なにより彼女がそのパートになると、ベースという低音域のパートがいなくなってしまう。
やっぱり、それができる人を頑張って見つけ出すしかないみたいだ。
とはいえ探し出すのも、これはこれで大変なことだ。
この島に住んでいて、かつそのような特技を持つ人は、知り合いの中では全く見当がつかない。
なにせ、ただでさえ人口が少ない島だ。
その中で、かなりマイナーな条件にぴったり合う人を探すのは、砂浜に落としてしまったコンタクトレンズを見つけ出すみたいなもの。
つまり、頑張れば絶対にできないわけではないけど、かなり骨が折れる、ということだ。
そんなわけで、何も進展がないまま、気づけば六月になっていた。
半月程前から島が梅雨入りして、今日も朝からしとしとと小雨が降っている。
そんな折、わたしの家に珍しいお客さんが来た。
チャイムの音で急いで玄関のドアを開けると、サイドアップが自慢の彼女に明るく挨拶する。
「よく来たね。紅葉ちゃん!」
紅葉ちゃんとは、二年生になっても同じクラスになった。
というのも、クラスが一学年にそれぞれ二つずつしかない関係で、再びクラスメイトになる可能性はかなり高いのだ。
そしてさらに嬉しかったのは、美樹と野薔薇とも同じクラスになれたことだった。
最初の日に、わたしは早速紅葉ちゃんを二人に紹介した。
初めのうちは美樹を除いてみんな何となくよそよそしかったけど、しばらく経てばなんだかんだ打ち解けて一緒にお昼を食べる仲にまでなった。
また、紅葉ちゃんは週末になるとたまに練習にも顔を出して、活動風景を写真に撮ったり、その後なぜか一緒に掃除まで手伝ってくれたりしている。
その中で早百合とも次第に顔見知りになった。
その紅葉ちゃんが今日家に来てくれたのには理由がある。
先日、バンドのホームページを一緒に作ろう、と提案してくれたのだ。
一緒に、とはいってもわたしは機械系が全然ダメで、ほとんどの作業は紅葉ちゃんが黙々とやってくれた。
彼女はかなり慣れた手つきでパソコンを操作して、あっという間にブログ形式のホームページが一つでき上がった。
ページを下の方までスクロールすると、今までの活動内容が写真付きで手に取るようにわかる。
トップ画面には、今後の活動計画も載せられるというので、早く次の予定を決めなきゃ、と改めて心に決めた。
その後、台所から持ってきたジュースを飲みながら、しばし二人で談笑する。
新メンバー募集のことについても話すと、後でそれも載っけようか、と言ってくれた。
さらにしばらくくつろいでいると、紅葉ちゃんが突然何か閃いた顔をして急に立ち上がり、パソコンの方まで向かっていった。
「どうしたの?」
「いやね。ヒューマンビートボックスといえば、最近観た動画でそういうのが得意な女子高生がいたなぁって思いだして。
確か、この人だったような気がするんだけど」
やがて画面に映し出されたのは、とあるネット配信者のページだった。
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