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第一章 極度の男性恐怖症な少女は悪役令嬢に転生する

第十八話 日記

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「………ここは」

もう見慣れた自室の風景。
自然と納得する。  

「あぁ………そっか。私、ダメだったんですね………」

外に出れなかった、摘めなかった、家族へのエイリアの花。
それが思ったよりも悲しくて、悔しかった。

「どうして………私はこんなにダメなんですかね………?本当………嫌になりますよ」

我が儘をつきとおして、エリーやメアリーに付き合ってもらったのに、何もできずに迷惑をかけて………役立たず。

「あら?」

ふと、視線を向けると見たことがあるような白いもの。

「………これって」

確か………ユリアの日記でしたっけ………?
そういえば見ようと思って見れてなかったですね。

「………」

これは見ろ、という神様………いえ女神様のお告げなのでしょうか。
人様の日記帳を見るのは気が引けますが、まぁでも私の日記帳………でもあるんですよね………?
なら大丈夫でしょうか………?

「………ごめんなさい!」

と、謝り一気にページを開く。


『おとうさまからおたんじょうびにこのにっきを貰いました。これからのことをたくさんかこうとおもいます』

「あらほほえましいですね。なるほどこれはお父様からの誕生日プレゼントなんですね。素敵です」

なんだか、羨ましいです。
私にはあの人との思い出なんてなにもなかったから………。
って暗くなっちゃダメです!
日記を読み進めるのが先です!

『わたくしにいもうとができるそうです。わたくしはおねえさまになるの。はやくあいたい』

「なるほど。このときにエリーが生まれることを知ったんですね」

『きょうはおかあさまとおちゃをしました。おとうさまがかってくれたおかしがすごくおいしかったです。おちゃもおいしかったです。いつかいもうとにたべさせてあげたい』

『きょうはおにわでおさんぽをしました。ジョーがつくるおにわはとってもすてきなの。エリーにもみせてあげたい。』


「ふふ、いいお姉さまじゃないですか」

日記に書き綴られたとても楽しそうな日々。
お屋敷のこと、お父様たちのこと、使用人達のこと。
たくさん、たくさん書かれていました。
そして、最後にはエリーとの未来を書いていました。
とても、素敵な日記。
ユリアは乙女ゲームのような我が儘な子ではなく、とても優しい子でした。
だからこそ、なぜ悪役令嬢と呼ばれるまでになってしまったのか不思議です………。
エリーが生まれてからなにか変わるのでしょうか。

「………あら?」

『エリーのせいでおかあさまがわたしとあそんでくれない』

『おかあさまはきょうもわたしとあってくれない』

『みんなみんな、エリーばっかり』

子供によくあるあれですかね………?

『いもうとなんていらなかった。わたしのおかあさまを返して』

「これはさすがに………」

またページをめくる。

『おとうさまにおこられた。どうして?わたしはわるくないのに』

『わたしはわるくない』

ここからしばらく日記が止まってる………。
なにかあった………

『ごめんなさい』

『わるいこでごめんなさい』

『ごめんなさいって言おう。ちゃんとあやまろう。今までみたいに………エイリアの日じゃないけど、エイリアの花をおくろう。あした、つみにいこう』

ここで、日記は終わっていた。
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