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第一章 極度の男性恐怖症な少女は悪役令嬢に転生する

第八話 嫌がらせとは

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「メアリー」
「なんですか?お嬢様」
「嫌がらせってどうやるのかしら!!」

「えっと………?」
と、困った顔をするメアリー。
私は夕食を届けに来たメアリーに開口一番にそう答えました。

「あ、ええとですね………かくかくしかじかあめあられでして………」
「なるほど………分かりません」
ですよねぇー………。

「えっと………」

これはどう説明するべきなのでしょう。
急に
「私、入学してくる特待生に嫌がらせをしなきゃいけないのでやり方教えてください!!」
なんて、いったら絶対病院を進められそうでしょうし………というか頭おかしい人認定ですよね。
うーん………困りました。

「お休みの間に、何か夢でも見られたのですか?」
………は!
「そ、そうなんです!実は近い将来、私は入学してくる女の子をいじめなくちゃいけなくて………!」
………これもないですね。
普通に頭おかしい人です。

「ううん、何でもない」

うむむ………困りました。
このままでは悪役という役目が遂行できません!!
ユリアスはイベントではどんな嫌がらせをしてましたっけ………。



☆嫌がらせ1『教科書を破く&隠す』
「あれ………私の教科書がない。どこへいってしまったんだろう………」

授業の開始前、ヒロインは教科書がないことに気付く。
そこへやってくるのが悪役令嬢ユリアス。

「あら、お探しのものでしたら校舎裏の方で見かけましたわよ」
(………校舎裏?どうしてそんなところに………)

そう首をかしげながらも、ありがとうございますとユリアスに伝え、ヒロインは教科書を探しに教室を出る。

「そんな………!!」

向かった校舎裏はゴミ捨て場だった。
そこに無惨に破かれ、黒字に染められ、捨てられたヒロインの教科書があった。
ヒロインが嘆く様子をユリアスはほくそ笑みながら眺めていた。

(回想終了)

………なしですね。
というか教科書が可哀想すぎますよ!
教科書が何をしたと言うんですか………!!
日本の小中は国民の皆様の税金のお陰で教科書を無償で提供していただけてるのですよ!?
もしかしたらここもそうかも知れないじゃないですか!
しかも教科書って地味に高いんですからね!?わかります!?
これはなし!無理です!教科書が可哀想ですならなしで!!
次です次!


☆嫌がらせその2『水をかける』

「あ~らごめんなさい?思わず手が狂ってしまいましたの。許してくださるわよね?」

ユリアスは真っ赤な唇で弧をえがき、言われたヒロインは唇を噛み締めて俯く。

「だってわたくしは悪くありませんもの。あまりに貴女、庶民臭いんですもの~。だから洗って差し上げたのよ?だから感謝されるべきよね!」

(回想終了)


いやいやいやあなた確信犯じゃないですか。
最後の方自白に近いですし。
これはダメです!だってヒロインさんが風邪を引いてしまいますし………というか私魔法使えるんでしょうか………?
あとで聞いてみましょう。次!


☆嫌がらせその3『』

「ちょっとあなた!?いくら殿下がお優しいからって付け上がりすぎではなくて?殿下はそんな庶民が作ったものなんて口にいれるわけないでしょう!?」

生徒会メンバーに推薦されたヒロインが、生徒会に差し入れするために作ったクッキーを持っていこうとする。
が、ユリアスはそれを当然邪魔し、あげくのはてにはクッキーを奪い取る。

「あ………返してください!」
「こんなもの渡すなんて許さなくってよ!殿下はわたくしの婚約者なんですから!」

そして、クッキーの袋を踏みつけた。

「そんな………」

それを見て涙を流すヒロインを見ながら、意地悪く笑うユリアス。

「なぁに?庶民の分際でわたくしに口答えなさる気?随分と生意気になったじゃない。生徒会に選ばれたからってわたくしと対等になれるとでも思いましたの?ざぁんねんでしたわね!いくらお前が特待生でもお前は庶民のままよ!」
「そ、そんなのおかしいです!どうして身分ばかり見るんですか!そんなに貴族が偉いんですか!?」

と、涙を滲ませながら必死で声をあげる。

「偉いに決まってるでしょ!?そんなこともわからないわけ!?」
「どうしてですか!?そんなの絶対間違ってます!だって、そんなの所詮ないようなものじゃないですか!貴族なんて称号がなくなったらあなたは私たちと変わらない!」
「うるさいうるさい!うるさい!うるさい!!うるさい!!!だまれだまれだまれ!!小娘がぁ!調子にのってぇ!!」

そういって、怒りに任せて手をあげたユリアス。

「きゃっ………!!」

しかし、彼女の手がヒロインに届くことはなかった。

「さすがにそれはダメだよ、ユリアス」
「ど………して………」
「………殿下」

その手をとめたのは、紛れもなくユリアスの婚約者、第一王子のアルバート・エリュシオンだった。

「なぜそんな女を庇うんですの!?あれは平民で………!!」
「生徒会長として、目の前で大事な生徒が傷つくのは見ていられないからね。………大丈夫かい?アーシャ」
「は、はい………!」
「な、なんで………。どうしてっ!」
「アーシャ、先生方が呼んでる。行こう」
「あ………」

そう良いながらヒロインの手を引き、ユリアスをその場に残して立ち去っていった。


(回想終了)

………無理。
無理です無理!手をあげるなんて………そんな………。
たとえふりにしろと言われてもできません!
だって………あれは………暴力はダメなんです。
痛いんです。心も身体も………。
それだけは絶対にしては………いけないんです。

「お嬢様………?先ほどからどうなされたんですか?」
「っ!」

あ、危ない………すっかり考え込んでしまいました。

「い、いえ………なんでもないです」
「やはり、疲れていらっしゃるんですよ。今日はもう食べたらゆっくり休んでください」
「………ありがとう、メアリー」
「………いえ」

私は、メアリーにお礼を言い、ちょっと遅くなってしまったけれど夕食を食べ始めたのでした。
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