上 下
2 / 22
本編

プロローグ

しおりを挟む
『ここは……?』

目が覚めると、私は幻想的な世界にいました。
どこか心地のよい暖かい光に照らされた、見たことのないほど美しい場所です。
もちろん、来たことのない場所です。

『私は……いったい……?なぜこんなところに……?』

「それについては、私が教えちゃうわね~」

『きゃっ!?ど、どちら様ですか……?』

「はーい!はじめまして~!あなたが月乃ちゃんね!私は女神のイリスです。よろしくね!」

なんだかすごくテンションが高い綺麗な女性が私の前に現れました。

『女神様……?ど、どうしてそのようなお方が私なんかの元に……?それにどうして私の名前を知っているのですか!?』
「そ・れ・は~……私が女神だからです☆」
きゅるんっとポーズ付きで答える女神様。
『はぁ……』
どう反応したらいいのか分かりませんでした。
「えーと、話を戻すとね~?今からあなたを転生させようと思って呼び出しちゃいました☆」
『転生……?』
「そうよぉ~あなただけ、と・く・べ・つ・♥️というわけであなたに転生の権利を差し上げま~す☆」
『転生の権利……?で、ですが私なんかを転生させていただくよりも他の方を転生させたほうがいい……』
「あーもう!私が良いっていってるんだからいいのよ~」
『ですが……私なんかにそんな価値は……』
「いい!?私があなたを転生させようと思ったのは、あなたに幸せになってもらいたいからなの!」
『幸せに……?』

いったいなぜ……?

「だってあなた……とっても可哀想なんだもの!!」

『……え?』
「それも私が見てきたなかで断トツなんだから!外に出れば変質者に襲われ!学校ではいじめと教師からのセクハラの嵐!あげくの果てには実の父親にまで暴力を振るわれ、唯一の味方だった母親は病死!最後は父親に刺されて死んだなんて……可哀想すぎるわよ!」
『…………』

確かに自分の生前はかなり酷いものだったと思います。
味方なんて全くいないといってもいいレベルでした。
誰も私を見ない……助けない。
信じたって……裏切られるだけだから。
だから……信頼なんてしちゃいけないんです。
前世の環境の影響で私は人を信じることができません。
失礼に値すると思いますが……目の前の女神様さえも。
なぜ、あんなにも嫌われてばかりだったのは長年の謎でしたけれど、きっとそれほど私が醜くて、出来損ないだったのでしょう。
視界に入れたくないレベルで。

「だから、あなたは転生するの!そして今度こそ幸せになるのよ!いい!?」
『……でも』
「返事ははい!よ!」
『は、はい!』

ハッ!?つい返事をしてしまった!

「それでいいのよ~♪さぁ~てそれじゃあいってらっしゃ~い」
『え!?ちょ、ちょっと待っ……』

そう止めに入ろうとしたのもお構いなしに、まばゆい光が私を包む。

『そ……んな……』

眠くてたまらない。
転生してもらえる価値なんて……ない……の……に………………。

「……い……たし……たの……せ……ね?」

消えゆく意識のなかで女神様がなにかをささやいていた気がした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます

葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。 しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。 お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。 二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。 「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」 アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。 「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」 「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」 「どんな約束でも守るわ」 「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」 これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。 ※タイトル通りのご都合主義なお話です。 ※他サイトにも投稿しています。

猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない

高遠すばる
恋愛
幼い頃、婚約者を庇って負った怪我のせいで目つきの悪い猛禽令嬢こと侯爵令嬢アリアナ・カレンデュラは、ある日、この世界は前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル・愛ラブユー」の世界で、自分はそのゲームの悪役令嬢だと気が付いた。 王太子であり婚約者でもあるフリードリヒ・ヴァン・アレンドロを心から愛しているアリアナは、それが破滅を呼ぶと分かっていてもヒロインをいじめることをやめられなかった。 最近ではフリードリヒとの仲もギクシャクして、目すら合わせてもらえない。 あとは断罪を待つばかりのアリアナに、フリードリヒが告げた言葉とはーー……! 積み重なった誤解が織りなす、溺愛・激重感情ラブコメディ! ※王太子の愛が重いです。

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ

奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。  スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな

【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

光の王太子殿下は愛したい

葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。 わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。 だが、彼女はあるときを境に変わる。 アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。 どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。 目移りなどしないのに。 果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!? ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。 ☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。

王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない

エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい 最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。 でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)

夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。 ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。  って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!  せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。  新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。  なんだかお兄様の様子がおかしい……? ※小説になろうさまでも掲載しています ※以前連載していたやつの長編版です

ヤンデレ王子とだけは結婚したくない

小倉みち
恋愛
 公爵令嬢ハリエットは、5歳のある日、未来の婚約者だと紹介された少年を見てすべてを思い出し、気づいてしまった。  前世で好きだった乙女ゲームのキャラクター、しかも悪役令嬢ハリエットに転生してしまったことに。  そのゲームの隠し攻略対象である第一王子の婚約者として選ばれた彼女は、社交界の華と呼ばれる自分よりもぽっと出の庶民である主人公がちやほやされるのが気に食わず、徹底的に虐めるという凄まじい性格をした少女であるが。  彼女は、第一王子の歪んだ性格の形成者でもあった。  幼いころから高飛車で苛烈な性格だったハリエットは、大人しい少年であった第一王子に繰り返し虐めを行う。  そのせいで自分の殻に閉じこもってしまった彼は、自分を唯一愛してくれると信じてやまない主人公に対し、恐ろしいほどのヤンデレ属性を発揮する。  彼ルートに入れば、第一王子は自分を狂わせた女、悪役令嬢ハリエットを自らの手で始末するのだったが――。  それは嫌だ。  死にたくない。  ということで、ストーリーに反して彼に優しくし始めるハリエット。  王子とはうまいこと良い関係を結びつつ、将来のために結婚しない方向性で――。  そんなことを考えていた彼女は、第一王子のヤンデレ属性が自分の方を向き始めていることに、全く気づいていなかった。

処理中です...