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66.ディートリッヒ(分析係)
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名前はディートリッヒ、王国の唯一無二エリザベート様の分析係である。以降お見知りおきを。
エリー様には、面倒なことは大体データちゃんにお任せと言われている。データとは根拠となる数値のことだそうだ。ディートリッヒだからデータちゃん、ピッタリでしょ~とエリー様はおっしゃっていた。意味は分からないが問題はない。エリー様は叡智の結晶、凡人のわたしになど全ては分かりえぬ。
こんな面白味のない、頭でっかちで貴族女性として価値のないわたしを、よくエリー様は拾ってくださったものだ。城で官吏として働きたかったものの、身分が低く、女で、縁故がない、と三重苦であったわたしは、鬱々とした日々を送っていた。そんなとき、エリー様が声をかけてくださったのだ。
「ディートリッヒ様、わたくし今、数値に強い方を探しておりますの。事業がどんどん大きくなって、細かいところまで手が回らなくなっているのですわ。ディートリッヒ様は学園で最優秀の成績を収められたのですって? もしできれば、助けていただけないかしら? えぇ、もちろん城の官吏並みの額は提示できましてよ」
そう言って、城で死ぬまで働いても得ることができぬであろう給金を打診くださった。もちろんお金も魅力的であったが、王国の麒麟児と称されるエリザベート様にわたしの存在を認識いただけた、その一点に叫び出したいほどの歓喜を覚えたのだ。
それからは無我夢中であった。まさにエリー様がおっしゃる、走りながら考える日々であった。みるみるうちに増える新規事業、そして個々の規模が拡大につぐ拡大、生み出す利益も、関わる人間も、与える影響力も、信じられないほど増え続けている。
一体、エリー様の頭にはどれほどの宝が詰まっているのか、もはや底が知れぬ。
コンコン
「ディートリッヒさん、カトリンです。リリアンヌ様の件でご相談があります。今少しいいですか?」
「ああ、またあの頭の軽い聖女が問題を起こしたのか?」
「データさん、またそんなバッサリと。リリたんを助けてあげてね、とエリー様から言付かっております」
「ふっ、それならやらざるを得ないな。それで、何が問題なんだ?」
「すごーーーく長時間、愚痴をこぼされましたが……。聖女の立場をエリー様に譲りたい、孤児院のお金が欲しい、孤児院教室の人材が欲しい、といったところですね」
「孤児院の資金と人材はこちらで検討する。聖女の立場をエリー様にだと? あのアホは何をたわけたことを。今でさえエリー様は国の重責を多数担われているのだ、この上さらに聖女だと? 燃やしてやろうかあのフワフワ頭め」
「データさん、落ち着いて。エリー様からのタチツテトとカキクケコでリリアンヌ様はやる気を取り戻しています」
「ああ、あの、大層なことを言っているようで、中身はないアレか。エリー様は面白いことを思いつかれるものだ」
「中身はなくても、リリアンヌ様には効果てきめんでしたよ。それでは孤児院の件はお任せしますね」
孤児院の資金繰りと教室の人材か……。あやつらと話さねばならんな。どのみち四天王の中でも最弱というのを決めねばならん。エリー様曰く、使いどころが難しいけれど、一回やってみたい技らしい。なんのことやら分からんが、エリー様が望むなら全力で対応するまでのこと。なに、四天王の中でも最弱はわたしで決まりだ。ふっ。
エリー様には、面倒なことは大体データちゃんにお任せと言われている。データとは根拠となる数値のことだそうだ。ディートリッヒだからデータちゃん、ピッタリでしょ~とエリー様はおっしゃっていた。意味は分からないが問題はない。エリー様は叡智の結晶、凡人のわたしになど全ては分かりえぬ。
こんな面白味のない、頭でっかちで貴族女性として価値のないわたしを、よくエリー様は拾ってくださったものだ。城で官吏として働きたかったものの、身分が低く、女で、縁故がない、と三重苦であったわたしは、鬱々とした日々を送っていた。そんなとき、エリー様が声をかけてくださったのだ。
「ディートリッヒ様、わたくし今、数値に強い方を探しておりますの。事業がどんどん大きくなって、細かいところまで手が回らなくなっているのですわ。ディートリッヒ様は学園で最優秀の成績を収められたのですって? もしできれば、助けていただけないかしら? えぇ、もちろん城の官吏並みの額は提示できましてよ」
そう言って、城で死ぬまで働いても得ることができぬであろう給金を打診くださった。もちろんお金も魅力的であったが、王国の麒麟児と称されるエリザベート様にわたしの存在を認識いただけた、その一点に叫び出したいほどの歓喜を覚えたのだ。
それからは無我夢中であった。まさにエリー様がおっしゃる、走りながら考える日々であった。みるみるうちに増える新規事業、そして個々の規模が拡大につぐ拡大、生み出す利益も、関わる人間も、与える影響力も、信じられないほど増え続けている。
一体、エリー様の頭にはどれほどの宝が詰まっているのか、もはや底が知れぬ。
コンコン
「ディートリッヒさん、カトリンです。リリアンヌ様の件でご相談があります。今少しいいですか?」
「ああ、またあの頭の軽い聖女が問題を起こしたのか?」
「データさん、またそんなバッサリと。リリたんを助けてあげてね、とエリー様から言付かっております」
「ふっ、それならやらざるを得ないな。それで、何が問題なんだ?」
「すごーーーく長時間、愚痴をこぼされましたが……。聖女の立場をエリー様に譲りたい、孤児院のお金が欲しい、孤児院教室の人材が欲しい、といったところですね」
「孤児院の資金と人材はこちらで検討する。聖女の立場をエリー様にだと? あのアホは何をたわけたことを。今でさえエリー様は国の重責を多数担われているのだ、この上さらに聖女だと? 燃やしてやろうかあのフワフワ頭め」
「データさん、落ち着いて。エリー様からのタチツテトとカキクケコでリリアンヌ様はやる気を取り戻しています」
「ああ、あの、大層なことを言っているようで、中身はないアレか。エリー様は面白いことを思いつかれるものだ」
「中身はなくても、リリアンヌ様には効果てきめんでしたよ。それでは孤児院の件はお任せしますね」
孤児院の資金繰りと教室の人材か……。あやつらと話さねばならんな。どのみち四天王の中でも最弱というのを決めねばならん。エリー様曰く、使いどころが難しいけれど、一回やってみたい技らしい。なんのことやら分からんが、エリー様が望むなら全力で対応するまでのこと。なに、四天王の中でも最弱はわたしで決まりだ。ふっ。
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