【完結】悪役令嬢のカウンセラー

52．レイチェル様

　ようこそいらっしゃいませ、レイチェル様。わたくしがエリザベートですわ。

　はい、豚肉の生姜焼き定食とウーロンハイですね。承知いたしました。

　あら、クララ姐さんからご伝言ですか？　キャッ、何かしら？　ワクワクいたしますわ。


　俺の名はクララ
　聖女でラッパー
　増えたぜ仲間　
　てっぺん取った
　最高の助言者
　捧げる感謝

　 
   ううう、泣いてまうやろー
　クララ様、よかったですわ。レイチェル様、ありがとうございます。

　さぁ、気を取り直さないと。レイチェル様、どうぞお話しになってくださいな。ほうほう、なるほど、ははーん。レッドドラゴンを討とうとしたら、なんでも望みが叶う宝玉を渡されて命乞いをされたのですね。ははぁ、宝玉をもらってレッドドラゴンを逃したものの、怪しすぎて使うのが怖いと。


　え？　今お持ちになっている？　まぁ、こちらが……。確かに何やら禍々しいオーラを放っているような……。


　鑑定！　ふむふむ、なるほど。レッドドラゴンの宝玉、一度だけ望みがかなう、宝玉を割って望みを言え、と出てきましたわ。

　　
　どうします？　何か叶えたい望みはおありになって？　なるほど、ずっと考えているけど決められないと。確かに難問ですわねぇ。わたくしは、何度でも望みが叶えられるようにして、と望めばいいと思っておりましたの、若い頃は。えぇ、でも大人になって気が変わりましたわ。

　えぇ、有名なお話しがございますでしょう。三つの願いを叶えると言われて、旦那さんがソーセージが食べたいって言ったら出てきて、奥さんが怒ってソーセージ鼻につけてしまえって言ったらついちゃって、最後はソーセージ取ってと願った。

　そう、願い事をするときは注意深くあれという教訓ですわよね。もうひとつ教訓が含まれていると思うのですわ。あの後、夫婦仲がこじれたと思うんですよねぇ。えぇ、お前のせいで願いを三つ無駄にしたって、お互いが根にもつのではないかしら。身に余る力は身を滅ぼすという戒めだと思いますの。


　えぇ、もしわたくしが、何度でも望みが叶えられるようにして、と望めばわたくしは破滅するのだと思いますわ。例えば、何気なく、あぁーあいつむかつく死ねばいいのに、と言ったら、そうなってしまうのですわ。そうすると、わたくしの周りには誰もいなくなってしまいますわ。

　
　さて、とはいえ使わないのも業腹ですわよねぇ。そうですわねぇ、リスク分担と善行を積む一挙両得の願いがございますわ。



　皆に幸あれ