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35.モニカ様

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 ようこそいらっしゃいませ、モニカ様。わたくしエリザベートと申しますわ。


 はい、おでん盛り合わせと熱燗ですね。承知いたしました。しばらくお待ち下さいませ。


 あら、そうなんですの、まぁ。ええっと還暦といいますと、あぁ六十歳ですね。はい、えぇお子様がお二人、もうお孫さんも? そうなんですの……。ご家族と離れて寂しいですわね……。


 あぁ、なるほど、娘さんが大学時代に読んでいらしたマンガの中に……。まぁ、ほほほほ。今さら息子より年下の男の子たちに言い寄られても困るのですね。ほほほ。えぇ? 親御さんに申し訳ない気持ちになってしまう? まあ、ふふふ。


 そうなのですね、もう恋愛とか考えただけでげんなりすると。ほほほほ。時間がたっぷりございますからねぇ、せっかくですから何か初めてみられては?


 え? 仕事と家事と子育てで必死に生きてこられて? 貧乏暇なしでパートを掛け持ちされて……。まぁ、確かに老後年金だけで暮らしていくのは厳しいですわよねぇ。ええっ、死ぬまで働く覚悟だった? んまぁ、本当に、政府は何をしているのやら。そうですわ、我らの血税を、ねー。


 ほほ、話がそれましたわ。なるほど、趣味らしい趣味もなく、くたびれて帰ってきて晩ごはん作って、旦那様とテレビ見ながら晩酌するのが唯一の気晴らし……。そんな生活だったけど……戻りたいんですね………。あぁ、モニカ様……。


 ええ、そうですわ、ゆっくり探せばいいと思いますわ。そう、お孫さんがモニカ様のごはんをお腹いっぱい食べてくれるのが幸せだったのですね。あぁ、なるほど、それはいい考えだと思いますわ。


 そうですわねぇ。学園の食堂で働くのは難しいのではないかしら? 授業をサボることになってしまいますわ……。んー、孤児院がよろしいのでは? えぇ、まずは週末だけとかで。

 
 ええっと、うーん、孤児院長だけにはご身分を打ち明けておく方がよろしいかと。孤児院ですからねぇ、食費絞ってると思うのですわ。モニカ様は子供たちにお腹いっぱい食べさせたいのでしょう? えぇ、伯爵家から食材を持ち込むなどしないと続かないと思いますのよ。




 えぇ、がんばりすぎないでくださいね。
 えぇ、和食が恋しくなったら、いつでもいらしてくださいな。

 


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