上 下
25 / 100

25.ティルダ様

しおりを挟む
 ようこそいらっしゃいませ、ティルダ様。わたくしエリザベートと申しますわ。


 はい、みたらし団子と桜餅と抹茶ですわね。かしこまりました、少々お待ちくださいませ。


 ええ、はい、まあ、そうなんですわね。それは大変でしたわねぇ。


 なるほど、お孫さんが読んでいらっしゃった本であろうと。内容はお分かりにならないのですわね。とにかく派手な髪の若者がたくさん表紙に載っていたと。

 
 えぇ、無理もありませんわ。何がなんだか分からないうちに、日々が過ぎてしまったのですわね。そうですわ、面食らいますわよね、髪の毛が、えぇ、全員ド派手でいらっしゃるでしょう……。えぇ、目の色もカラフルですわよね。ほほほ、金色の目の人はどんな風に世界が見えるのかしら、ですか? ほほほほほほ、ティルダ様の今の目の色、紫色でしてよ。


 ふふふふ、そうですわね、不思議なことがあるものですわ。これからどうされますの? あぁ、流れに身を任せて、そうですね、それもいいかもしれませんわね。


 あら、孫より若い男の子たちに囲まれて困惑? なるほど、急に目が良くなってなんでもよく見えるから、若い子の肌に見とれてしまう? 男の子たちが色々話しかけてくるけど、早口でついていけない? 曖昧に笑っていたら、じわじわと人数が増えていく?


 そうなのですね、ティルダ様はそのままで大丈夫ですわ。無理なさる必要はありませんわ。……まぁ、お迎えが来たと思ったら、こんな若い体になって? 動くときについつい、どっこいしょって言ってしまって、貴族界でどっこいしょが流行ってしまった? うふふふふふ。ティルダ様ったら。


 あらあら、最近やけに喧嘩腰の若者が? 頭に二本ツノが? さぁ、ツノが流行ってるとは聞いたことがありませんけれど……若者は斬新なファッションを好みますからねぇ……あぁ、その方マオウちゃんとおっしゃるの? 半裸みたいな格好していて、かわいそうだからチョッキを編んであげた? ほほほほ。


 まあ、ピンク色の髪の女の子? 元気いっぱいでかわいらしいのね? えぇ、まあ。新しいボーイフレンドだと次々紹介してくれる? どれも同じに見えて困る? ほほほほ。晴れの沿道と嬉しそうだった? 晴れの沿道? ハレノエンドウ? あのーもしや、ハーレムエンドでは? あ、えぇ、ふふふ、そうだと思いましたわ。


 ええっ、ピンクの子はティルダ様に悪人のくせに、悪人は追放などとおっしゃるの? えぇ、もちろんですわ、ティルダ様は善良な市民ですわ、わたくしが太鼓判を押しますわ。あのー、ひょっとして悪役令嬢と言っていたのでは? ああ、そんな気がする? え? 悪役令嬢とは何かですか? ……たいしたことではありませんわ。お気になさる必要はございませんことよ。


 そうですか、せっかく若返ったから色んなことに挑戦なさるのですね? 素敵ですわ。あら、狩りですか? えぇ、猟友会に入る必要もありませんし、猟銃免許もいらないと思いますわ。あのー、そもそも銃がないのでは? ……えぇ、そうなんです、中世ヨーロッパ風ファンタジーですから……。ええっと、ですから、剣や弓や魔法で仕留めるのだと思いますわ。そうですわねぇ、オオカミやドラゴンなどがいると思いますわよ。


 えぇ、馬はもちろん、オオカミやドラゴンも不可能ではありませんわ。ふふふ、そうですわ、バスがなくてもどこでも行けますわ。



 えぇ、お会いできて嬉しかったですわ。
 そうですね、次回が楽しみですわ。
 では、さようなら。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

婚約破棄をしてくれた王太子殿下、ありがとうございました

hikari
恋愛
オイフィア王国の王太子グラニオン4世に婚約破棄された公爵令嬢アーデルヘイトは王国の聖女の任務も解かれる。 家に戻るも、父であり、オルウェン公爵家当主のカリオンに勘当され家から追い出される。行き場の無い中、豪商に助けられ、聖女として平民の生活を送る。 ざまぁ要素あり。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】100日後に処刑されるイグワーナ(悪役令嬢)は抜け毛スキルで無双する

みねバイヤーン
恋愛
せっかく悪役令嬢に転生したのに、もう断罪イベント終わって、牢屋にぶち込まれてるんですけどー。これは100日後に処刑されるイグワーナが、抜け毛操りスキルを使って無双し、自分を陥れた第一王子と聖女の妹をざまぁする、そんな物語。

踏み台令嬢はへこたれない

三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」  公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。  春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。  そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?  これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。 「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」  ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。  なろうでも投稿しています。

【短編】悪役令嬢の侍女 〜ヒロインに転生したけど悪役令嬢の侍女になりました〜

みねバイヤーン
恋愛
リリーは乙女ゲームのヒロインである。侍女として、悪役令嬢のクロエお嬢さまに仕えている。クロエお嬢さまには孤児院から救っていただいた大恩がある。生涯仕える覚悟である。だからってねー、広大な公爵家の敷地で指輪を探すなんて、そんなこと許しませんからね。ワガママお嬢さまをうまく誘導するのも侍女の務め。お嬢さまと猛獣使いリリーの戦いが繰り広げられる、そんな平和な日常を描いた物語。

処理中です...