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59 フォレストウルフ討伐
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「おや、ナハトさん。この間ぶりですね。今日はどうしたんです?」
二人立っている人のウチの若い門衛がナハトにそう声をかけた。
この間ぶり?
「ああ。彼はユラといって、この間依頼で連れ帰った者だ。覚えているだろう?」
「あっはい! あのときの・・・・・・じゃあ身分証──冒険者タグを作ったんですね? じゃあここにかざして下さい」
「えーと、はい。・・・・・・コレでいいの?」
どうやら僕を連れ帰ったときにも対応した人らしい。言われるがまま差し出されたタブレットのような平たい魔導具らしい装置にタグを近付けるとピッと音がして青く光った。
「はい。本人確認出来ました! じゃあこの前の入街料を返金しますね。でも無事でよかったですね。急に連れ帰って来たから心配してました」
「ありがとう。ちなみに俺の番いになったんでよくしてやってくれ」
「ああ、そうなんですね───はい!?」
門衛がナハトに返金手続きをして受け取りサインを貰っていると、ナハトが世間話のようにサラッと言うのでこちらもサラッと聞き流そうとして、ハッとなった。
その様子をもう一人の四〇歳くらいに見える穏やかそうな門衛と僕はぽけっと眺めている。
「・・・・・・えーと、ユラ君、だっけ? 君、ナハトさんの番いなのかい?」
ちょっと戸惑いながら聞いてきたので、僕は普通に応える。
「ああ。はい。そうらしいです。昨日、ちゃんと番いました」
「・・・・・・君、成人し・・・・・・ああ、冒険者登録したなら成人だよね? じゃあ問題ないのか。アレ? その耳もしかしてエルフ?」
未成年かと思われて、否定しようと思ったらその前に色々と気付いたらしく、最後は長い耳に気付いてそう聞かれた。
これも別に隠そうと思ってはいなかったので普通に応える。
僕を害しようという輩が現れても返り討ち出来る確信が持てるから。
そもそも死ななくなってるし。
「ええとハイエルフらしいです」
「言い方がちょっとヘンだけど? うん、ハイエルフね。じゃあ見た目ほど子供じゃないんだね?」
「ハタチです」
真顔でそう言ったら、苦笑された。何故?
「・・・・・・そっか。詳しい事情は分からないけど、その、色々と頑張って」
「初依頼なんで、ウキウキしてます」
その色々とは冒険者稼業の他にたぶん番いの性活とかも含まれてるよね?
この体格差だしね! 心配されるのは分かるよ。
恥ずかしいからそこはちょっとスルーして、目の前の初依頼のことに集中する。
実際、わくわくドキドキしてるからな。
「オジサン、独身だけどもし子供がいたら君くらいの歳なんだろうなってちょっと親目線になっちゃったよ。怪我には注意してね」
「・・・・・・ありがとうございます」
僕もこういう人が父親だったらな、なんてちょっと思って微笑んだ。
「ユラ。終わったから行くぞ」
「あ、うん。じゃあまた」
「行ってらっしゃい」
「・・・・・・行ってきます」
そんな些細な挨拶が慣れなくて擽ったい。
僕は軽く手を振ってナハトと門をあとにした。
それから十分ほど歩いて行くと、平原から林になってきて、やがて木々の生い茂る森に入った。
時間的に遅いからか、辺りに他の冒険者の姿は見えない。
もっと奥に入らないとフォレストウルフはいないようだ。
「ここから先に進むといるな」
「うん。数頭固まってるヤツの奥に多数いるね。群れで行動してるのかな?」
「ああ。数頭は斥候だろうな」
「なるほど」
じゃあひとまずその斥候を倒して残りをおびき出すか。
ナハトは僕のサポートで着いてきてるけど、何もなければ手は出さないことになってる。僕に足りない知識を与えてくれるだけだ。
静かに気配を消して近付くとハンドガンを構える。
飛距離や威力は昨日確認済みだから気兼ねなく遠距離から狙える。
毛皮が欲しいんだから、出来れば眉間を一発で───。
小さな破裂音でパンパンと数発撃つと、斥候のフォレストウルフ三頭が倒れた。眉間を撃ち抜いたようだ。
素早く近付くとポーチに収納する。
そこから更に奥に進んでいくと、異変を感じたフォレストウルフの群れがこちらに向かって来たのが分かる。
「───百頭くらい入るな。思ったよりも大きな群れだ。ユラなら大丈夫だろうが、通常のCランク冒険者には荷が勝ちすぎているな」
「単独ではキツいってこと?」
「ああ。パーティーを組んでやるレベルだな」
なるほど、確かに一人では捌ききれない数だな。でも僕ならハンドガン二丁あるし、弾切れもないから大丈夫だろう。
「じゃあもう一丁使って、パパッと終わらせようかな」
「・・・・・・そう軽く言えるのはユラだからだぞ」
ナハトに呆れたように言われたが無視してハンドガンを構えると狙いを付けて弾を撃ち出す。
パパパと連射してしてもリロードが要らないって素晴らしい。
いくら訓練して素早くリロード出来るとはいえ、ほんの少しのタイムラグで勝敗が決する世界で生きてきた僕には最高の状況だ。
「・・・・・・ユラってダオラみたいなタイプだよなぁ」
戦闘狂───そんなナハトの呟きは聞こえないフリで、僕は後からどんどん湧いてくるフォレストウルフをニヤリと笑いながら殲滅して行くのだった。
・・・・・・ナハトいわく『めちゃくちゃ楽しそうだった』らしい。
自覚はなかったけど、ダオラと同類だったのかと、地下鍛錬場での組み手の様子を思い出してちょっとモヤッとした。
僕は戦闘狂でも脳筋でもない・・・・・・と思ってるけどね?
それはともかく、初依頼はフォレストウルフ討伐数一二七頭で幕を閉じたのだった。
二人立っている人のウチの若い門衛がナハトにそう声をかけた。
この間ぶり?
「ああ。彼はユラといって、この間依頼で連れ帰った者だ。覚えているだろう?」
「あっはい! あのときの・・・・・・じゃあ身分証──冒険者タグを作ったんですね? じゃあここにかざして下さい」
「えーと、はい。・・・・・・コレでいいの?」
どうやら僕を連れ帰ったときにも対応した人らしい。言われるがまま差し出されたタブレットのような平たい魔導具らしい装置にタグを近付けるとピッと音がして青く光った。
「はい。本人確認出来ました! じゃあこの前の入街料を返金しますね。でも無事でよかったですね。急に連れ帰って来たから心配してました」
「ありがとう。ちなみに俺の番いになったんでよくしてやってくれ」
「ああ、そうなんですね───はい!?」
門衛がナハトに返金手続きをして受け取りサインを貰っていると、ナハトが世間話のようにサラッと言うのでこちらもサラッと聞き流そうとして、ハッとなった。
その様子をもう一人の四〇歳くらいに見える穏やかそうな門衛と僕はぽけっと眺めている。
「・・・・・・えーと、ユラ君、だっけ? 君、ナハトさんの番いなのかい?」
ちょっと戸惑いながら聞いてきたので、僕は普通に応える。
「ああ。はい。そうらしいです。昨日、ちゃんと番いました」
「・・・・・・君、成人し・・・・・・ああ、冒険者登録したなら成人だよね? じゃあ問題ないのか。アレ? その耳もしかしてエルフ?」
未成年かと思われて、否定しようと思ったらその前に色々と気付いたらしく、最後は長い耳に気付いてそう聞かれた。
これも別に隠そうと思ってはいなかったので普通に応える。
僕を害しようという輩が現れても返り討ち出来る確信が持てるから。
そもそも死ななくなってるし。
「ええとハイエルフらしいです」
「言い方がちょっとヘンだけど? うん、ハイエルフね。じゃあ見た目ほど子供じゃないんだね?」
「ハタチです」
真顔でそう言ったら、苦笑された。何故?
「・・・・・・そっか。詳しい事情は分からないけど、その、色々と頑張って」
「初依頼なんで、ウキウキしてます」
その色々とは冒険者稼業の他にたぶん番いの性活とかも含まれてるよね?
この体格差だしね! 心配されるのは分かるよ。
恥ずかしいからそこはちょっとスルーして、目の前の初依頼のことに集中する。
実際、わくわくドキドキしてるからな。
「オジサン、独身だけどもし子供がいたら君くらいの歳なんだろうなってちょっと親目線になっちゃったよ。怪我には注意してね」
「・・・・・・ありがとうございます」
僕もこういう人が父親だったらな、なんてちょっと思って微笑んだ。
「ユラ。終わったから行くぞ」
「あ、うん。じゃあまた」
「行ってらっしゃい」
「・・・・・・行ってきます」
そんな些細な挨拶が慣れなくて擽ったい。
僕は軽く手を振ってナハトと門をあとにした。
それから十分ほど歩いて行くと、平原から林になってきて、やがて木々の生い茂る森に入った。
時間的に遅いからか、辺りに他の冒険者の姿は見えない。
もっと奥に入らないとフォレストウルフはいないようだ。
「ここから先に進むといるな」
「うん。数頭固まってるヤツの奥に多数いるね。群れで行動してるのかな?」
「ああ。数頭は斥候だろうな」
「なるほど」
じゃあひとまずその斥候を倒して残りをおびき出すか。
ナハトは僕のサポートで着いてきてるけど、何もなければ手は出さないことになってる。僕に足りない知識を与えてくれるだけだ。
静かに気配を消して近付くとハンドガンを構える。
飛距離や威力は昨日確認済みだから気兼ねなく遠距離から狙える。
毛皮が欲しいんだから、出来れば眉間を一発で───。
小さな破裂音でパンパンと数発撃つと、斥候のフォレストウルフ三頭が倒れた。眉間を撃ち抜いたようだ。
素早く近付くとポーチに収納する。
そこから更に奥に進んでいくと、異変を感じたフォレストウルフの群れがこちらに向かって来たのが分かる。
「───百頭くらい入るな。思ったよりも大きな群れだ。ユラなら大丈夫だろうが、通常のCランク冒険者には荷が勝ちすぎているな」
「単独ではキツいってこと?」
「ああ。パーティーを組んでやるレベルだな」
なるほど、確かに一人では捌ききれない数だな。でも僕ならハンドガン二丁あるし、弾切れもないから大丈夫だろう。
「じゃあもう一丁使って、パパッと終わらせようかな」
「・・・・・・そう軽く言えるのはユラだからだぞ」
ナハトに呆れたように言われたが無視してハンドガンを構えると狙いを付けて弾を撃ち出す。
パパパと連射してしてもリロードが要らないって素晴らしい。
いくら訓練して素早くリロード出来るとはいえ、ほんの少しのタイムラグで勝敗が決する世界で生きてきた僕には最高の状況だ。
「・・・・・・ユラってダオラみたいなタイプだよなぁ」
戦闘狂───そんなナハトの呟きは聞こえないフリで、僕は後からどんどん湧いてくるフォレストウルフをニヤリと笑いながら殲滅して行くのだった。
・・・・・・ナハトいわく『めちゃくちゃ楽しそうだった』らしい。
自覚はなかったけど、ダオラと同類だったのかと、地下鍛錬場での組み手の様子を思い出してちょっとモヤッとした。
僕は戦闘狂でも脳筋でもない・・・・・・と思ってるけどね?
それはともかく、初依頼はフォレストウルフ討伐数一二七頭で幕を閉じたのだった。
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