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31 知己と高位森人(sideラヴァ)
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いつものように真っ昼間からふらっと俺の店に入ってきた、知己である吸血鬼の真祖ナハト・オスクリタ。
彼は数少ないデイウォーカーで吸血鬼唯一の不死でもある。
変わり者の吸血鬼で、血よりも酒が好きだという彼と無類の酒好きの俺が意気投合するのに時間はかからなかった。
それにしても、いくら陽光がへっちゃらだと言っても好き好んで出歩きたくはないと思うんだが、実は夜の営業時間中にウチに来ることはそんなに多くない。
おそらく他人がいる空間が煩わしいんだろう。
それなら昼間も出歩かなきゃいいのにと思うが、それはまた違うんだろうな。
そんなナハトが小っさい子供を片腕に抱えて店に来たもんだから、俺は正直焦ったね。
どっから攫ってきたんだと。
実際は一応成人済みの高位森人でナハトの運命の番だったわけだが。
「───しっかし、あのナハトがねぇ・・・・・・」
いつも無表情で、擦り寄ったり言い寄ってくる輩を冷たい眼差しと言葉でバッサバッサと斬り捨てるアイツが、見てるコッチが恥ずかしくて照れるような眼差しでユラという名のハイエルフの子を見つめていて───。
「・・・・・・あのユラって子も、何か訳ありっぽかったよなぁ」
ドコが? と言われても雰囲気が、としか言えないが。どうもハイエルフらしくない感じなんだよな。
ハイエルフって神秘的で魔法に長けた美人ってイメージがあるんだよ。
実際、腕力はあまりなくてヒョロッとしてるし。冒険者ギルドのエアリアルが精霊族であんな見た目だし。
「・・・・・・そういやユラ、魔力不足っぽかったな。ハイエルフってめちゃくちゃ魔力多いっていうのに不足気味って・・・・・・」
───どう考えてもアレ、魔力回復を大義名分にナハトはヤる気満々だったよな。でもユラはその辺、魔力回復の方法も含めて常識が疎いのか全く分かってなさそうだったが。
「───ま、成人済みって話だからヤっても問題はないだろ。運命の番いって言ってたし。そもそもよく我慢できるよなぁ」
運命の番いに関して見聞きしたことを踏まえると、大概は暴走気味に蜜月に入って大変だったって言うし。
「・・・・・・ユラ、小っさいもんなぁ。あの体格差でヤったらちょっとヤバいんじゃねえの?」
ナニがって・・・・・・色々と。ユラを抱き潰したり壊さなきゃいいけどな。
ナハト達が帰ったあと、夜の営業のためのつまみや料理の下準備やら酒の補充やらをしながらそんなことを考えていた。
───そして夕方の営業時間になり、今日もそこそこ繁盛している中で、ギルドの業務を終えたらしいエアリアルとダオラが珍しく二人揃って店に来た。
「こんばんは」
「御無沙汰ー」
「おう、いらっしゃい」
「───はー・・・・・・。疲れた」
「久しぶりに濃ゆい一日だったわぁ」
「・・・・・・おう、珍しくお疲れ?」
挨拶もそこそこにカウンターに座ると溜め息を吐く二人。
「そりゃあね、もう」
「ナハトさんがねー」
二人の言葉にああ、と頷く。
「あれ、何か知ってるのか?」
「ああナハトがさ、昼頃に勝手に店に入って来たんだよ。しかも小っさい番い連れてなぁ。彼に飯食わせろって」
エアリアルに聞かれて、俺はそのときの様子を思い出して笑った。
「あのナハトがさ、あんな甘い顔をするなんて天変地異の前触れかと思ったね」
「あー、だよねぇ」
「別人だったな」
エアリアル達も同意見だった。
じゃあコレも同じかな?
「今頃はもう───」
「食われてるね」
「ヤられてるね」
「賭けにもなんねぇな!」
三人とも同じことを言うから賭けも意味ないと笑う。
「腹上死してなきゃいいんだけどね」
ダオラが苦笑して言った。
「さすがにソレはないでしょ?」
「イヤでも、童貞処女だしなあ。加減できなくなりそうじゃん?」
「あ、二人とも童貞処女だった」
意外でもないか。エルフ族は性欲薄いっていうし、ナハトは運命の番い意外には欲情しないだろうし。
しかし童貞処女か・・・・・・。
ユラはともかくナハトが暴走したらヤバそうなんだが。
「ユラ君、大丈夫かなぁ?」
「大丈夫だと思いたい」
「・・・・・・念のため、明日の朝、ナハトんちまで行ってみるか」
「おお、頼めるか?」
「頼む!」
「仕方ねえなあ」
そんなことを言いながら酒とつまみを出し、エアリアルは軽めのパスタ、ダオラはガッツリ焼肉を食べて帰っていった。
「───あ、ユラの事情とか聞きそびれた。ま、いっか、あとで」
後日、エアリアル達からユラの出自(推測)を聞いて憤ることになるんだが。
───オジちゃんも味方だからな。何かあれば遠慮なく頼れよ。
特にナハトに関してはガツンと叱ってやるからな!
近所のお節介オジさん爆誕である。
↓補足ではないですが、お知らせです。読まずとも大丈夫です。
※書き溜めた分がなくなったのでこのあとは不定期になると思います。
彼は数少ないデイウォーカーで吸血鬼唯一の不死でもある。
変わり者の吸血鬼で、血よりも酒が好きだという彼と無類の酒好きの俺が意気投合するのに時間はかからなかった。
それにしても、いくら陽光がへっちゃらだと言っても好き好んで出歩きたくはないと思うんだが、実は夜の営業時間中にウチに来ることはそんなに多くない。
おそらく他人がいる空間が煩わしいんだろう。
それなら昼間も出歩かなきゃいいのにと思うが、それはまた違うんだろうな。
そんなナハトが小っさい子供を片腕に抱えて店に来たもんだから、俺は正直焦ったね。
どっから攫ってきたんだと。
実際は一応成人済みの高位森人でナハトの運命の番だったわけだが。
「───しっかし、あのナハトがねぇ・・・・・・」
いつも無表情で、擦り寄ったり言い寄ってくる輩を冷たい眼差しと言葉でバッサバッサと斬り捨てるアイツが、見てるコッチが恥ずかしくて照れるような眼差しでユラという名のハイエルフの子を見つめていて───。
「・・・・・・あのユラって子も、何か訳ありっぽかったよなぁ」
ドコが? と言われても雰囲気が、としか言えないが。どうもハイエルフらしくない感じなんだよな。
ハイエルフって神秘的で魔法に長けた美人ってイメージがあるんだよ。
実際、腕力はあまりなくてヒョロッとしてるし。冒険者ギルドのエアリアルが精霊族であんな見た目だし。
「・・・・・・そういやユラ、魔力不足っぽかったな。ハイエルフってめちゃくちゃ魔力多いっていうのに不足気味って・・・・・・」
───どう考えてもアレ、魔力回復を大義名分にナハトはヤる気満々だったよな。でもユラはその辺、魔力回復の方法も含めて常識が疎いのか全く分かってなさそうだったが。
「───ま、成人済みって話だからヤっても問題はないだろ。運命の番いって言ってたし。そもそもよく我慢できるよなぁ」
運命の番いに関して見聞きしたことを踏まえると、大概は暴走気味に蜜月に入って大変だったって言うし。
「・・・・・・ユラ、小っさいもんなぁ。あの体格差でヤったらちょっとヤバいんじゃねえの?」
ナニがって・・・・・・色々と。ユラを抱き潰したり壊さなきゃいいけどな。
ナハト達が帰ったあと、夜の営業のためのつまみや料理の下準備やら酒の補充やらをしながらそんなことを考えていた。
───そして夕方の営業時間になり、今日もそこそこ繁盛している中で、ギルドの業務を終えたらしいエアリアルとダオラが珍しく二人揃って店に来た。
「こんばんは」
「御無沙汰ー」
「おう、いらっしゃい」
「───はー・・・・・・。疲れた」
「久しぶりに濃ゆい一日だったわぁ」
「・・・・・・おう、珍しくお疲れ?」
挨拶もそこそこにカウンターに座ると溜め息を吐く二人。
「そりゃあね、もう」
「ナハトさんがねー」
二人の言葉にああ、と頷く。
「あれ、何か知ってるのか?」
「ああナハトがさ、昼頃に勝手に店に入って来たんだよ。しかも小っさい番い連れてなぁ。彼に飯食わせろって」
エアリアルに聞かれて、俺はそのときの様子を思い出して笑った。
「あのナハトがさ、あんな甘い顔をするなんて天変地異の前触れかと思ったね」
「あー、だよねぇ」
「別人だったな」
エアリアル達も同意見だった。
じゃあコレも同じかな?
「今頃はもう───」
「食われてるね」
「ヤられてるね」
「賭けにもなんねぇな!」
三人とも同じことを言うから賭けも意味ないと笑う。
「腹上死してなきゃいいんだけどね」
ダオラが苦笑して言った。
「さすがにソレはないでしょ?」
「イヤでも、童貞処女だしなあ。加減できなくなりそうじゃん?」
「あ、二人とも童貞処女だった」
意外でもないか。エルフ族は性欲薄いっていうし、ナハトは運命の番い意外には欲情しないだろうし。
しかし童貞処女か・・・・・・。
ユラはともかくナハトが暴走したらヤバそうなんだが。
「ユラ君、大丈夫かなぁ?」
「大丈夫だと思いたい」
「・・・・・・念のため、明日の朝、ナハトんちまで行ってみるか」
「おお、頼めるか?」
「頼む!」
「仕方ねえなあ」
そんなことを言いながら酒とつまみを出し、エアリアルは軽めのパスタ、ダオラはガッツリ焼肉を食べて帰っていった。
「───あ、ユラの事情とか聞きそびれた。ま、いっか、あとで」
後日、エアリアル達からユラの出自(推測)を聞いて憤ることになるんだが。
───オジちゃんも味方だからな。何かあれば遠慮なく頼れよ。
特にナハトに関してはガツンと叱ってやるからな!
近所のお節介オジさん爆誕である。
↓補足ではないですが、お知らせです。読まずとも大丈夫です。
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