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26 バー『月虹』
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二人のやり取りを見ているうちに、僕のお腹がくうくうと鳴り出した。
おかしいな? ついさっき、お茶もお菓子もたっぷり腹に収まったのに。やっぱり燃費が悪くなってるみたいだ。
「───っと、すまない。君がお腹を空かせてるんだな? ナハトだったらシカトするんだが───ちょっと待ってろ。すぐに作るからな」
僕の腹の虫の音に気付いたワイルドイケオジがニカッと笑って奥にあるキッチンへと向かっていった。
「ぁ、ごめんなさい。お休み中なのに催促したみたいで・・・・・・」
「子供が───っと大人だっけな、まぁ気にすんな」
ちょうどカウンター席からも少し見えるキッチンでテキパキと肉を焼き始めた彼を見ながら、いつまでもワイルドイケオジじゃあなぁ、と彼のことを聞いてみた。
「あの人、ナハトの親しい人? 僕、まだ名前聞いてないんだけど───」
「おお、悪い。うっかりしてたぜ。俺はラヴァって言うんだ。見ての通り鬼人族でこのバー『月虹』の店主だ。よろしくな、ユラ」
「───ラヴァさん。よろしくお願いします」
抱き上げられたままペコリとお辞儀をした。ほうほう、鬼人族っていう種族なんだ。確かに鬼っぽい。
「あー、敬語じゃなくていいぞ。俺もユラって呼んでるし」
「敬語はなくていいが気安く名前を呼ぶな」
「いや無茶言うなよ・・・・・・お前、そんなに狭量だったか? 独占欲と嫉妬が凄いな」
「そんなことは、ない・・・・・・はず」
「言い切れてないじゃん。自覚ありか」
ナハトに話しかけたんだけど、しっかり聞こえてたみたいで本人からそう告げられた。
ラヴァって赤色のことを言うような・・・・・・? 確かに見事な赤髪だもんな。
敬語も、しなくていいならその方が楽だから助かる。
それにしてもやっぱり仲がいいみたいでポンポンと会話が流れるなぁ。
ラヴァは肉を焼きながら野菜を刻んでサラダを作ったり、小鍋にお湯を沸かしてコンソメスープみたいなものをテキパキと作っている。手際がいい。
食欲をそそる匂いにお腹が更にぐうーっと鳴る。
「もうじき出来るから待ってな」
「・・・・・・めちゃくちゃ美味しそう」
「だろう? 店でよく売れるステーキだ。ほらナハト、そこに座らせろ」
そう言ってナハトに僕をカウンター席に座らせると、ラヴァが目の前にサラダとスープ、メインのステーキを並べてくれた。
ステーキはサイコロ状にカットしてくれている。
何、この気遣いが出来るイケオジ!
僕の中でワイルドイケオジからスパダリイケオジに評価が変わった瞬間だった。
「いただきます」
つい癖で手を合わせてしまったが、二人ともツッコまずに見守ってくれているようだ。
異世界で初めてまともな料理を食べる。
「───ぅんまぁ!」
ステーキは柔らかくて肉汁たっぷり、シンプルな塩コショウが肉の旨味を引き出してる。
スープも思った通りのコンソメスープだけど、味わい深い。
サラダもドレッシングがマッチしててパリパリ美味しい。
「・・・・・・しかしめちゃくちゃ美味しそう食うな。しかもどこに入るんだっていうくらい食うって、欠食児童か。お前、何食わしてんだ?」
そう言ってナハトを見たラヴァに僕は教えてあげた。
「今朝見たら、冷蔵庫にも保管庫にもなーんにもなくて、買ってきてくれたパンとミーノ乳飲んだだけなんだ。あ、さっきお茶とお菓子は食べたけど」
「あー・・・・・・、どうせ酒くらいしかなかったんだろ。ナハトお前、本当に食わないよな。仕方ないけど」
ラヴァが納得しながら呆れていた。
朝食、パンしか食べてないせいもあるのかな、お腹が減るのって。でも僕は基本的に少食なんだけど。
仕事上仕方なく燃費のいい身体を作ったようなものだから。異世界に来て普通の人並みに変わったのか?
「・・・・・・ユラ、もしかしたら魔力不足で身体が無意識に補おうとして食欲が出てるのかもしれないぞ」
「んえ?」
もっくもっくと食べていると不意にナハトにそう言われたけど、ごめん、食べ物が口の中に入ってて話せない。
魔力不足だと食欲が増すの? それって常識?
「───ああ、そういや魔導師が魔法をガンガン使ったあとはめちゃくちゃ腹が減るって言ってたのを聞いたことあるな」
ラヴァが気付いたように顎に手を当ててそう言った。
ナハトも頷きながら思い出したように呟く。
「魔導師達は減った魔力を補うために魔力を多く含む食べ物を好んで食べてたな」
「大食いのわりに痩せてるヤツがほとんどなのも、食べても魔力に変換されるかららしい」
ラヴァも納得顔だ。それを踏まえて考えたのだろう。
「ユラ、何か大きな魔法でも使ったのか?」
ラヴァにそう聞かれて直前の決闘のことを思い出したけど、アレはほとんど魔力使ってなかったし───。
僕は口の中の食べ物を飲み込んでから応えた。
「んー、あっ・・・・・・アレかな? 聖域にいきなり移動してたヤツ? のせいかも?」
自分じゃ分からないけど、もしかしたら大がかりな魔法かもしれないし。
そう思って口にしたら、ラヴァがハッとした。
「聖域? ───そういやユラ、アンタその耳・・・・・・まさかエルフ!?」
「え? いや、ハイエルフらしいけど。何、今気付いたんだ?」
「えっ!? いや、ナハトが番いとして連れて来たことに驚いてて、スマン。しかしハイエルフか・・・・・・ここ数百年、見ない種族だぜ」
「へえ、数百年・・・・・・えっ!?」
驚いてナハトを見ると頷かれた。
───道理で注目の的だったわけだ。
おかしいな? ついさっき、お茶もお菓子もたっぷり腹に収まったのに。やっぱり燃費が悪くなってるみたいだ。
「───っと、すまない。君がお腹を空かせてるんだな? ナハトだったらシカトするんだが───ちょっと待ってろ。すぐに作るからな」
僕の腹の虫の音に気付いたワイルドイケオジがニカッと笑って奥にあるキッチンへと向かっていった。
「ぁ、ごめんなさい。お休み中なのに催促したみたいで・・・・・・」
「子供が───っと大人だっけな、まぁ気にすんな」
ちょうどカウンター席からも少し見えるキッチンでテキパキと肉を焼き始めた彼を見ながら、いつまでもワイルドイケオジじゃあなぁ、と彼のことを聞いてみた。
「あの人、ナハトの親しい人? 僕、まだ名前聞いてないんだけど───」
「おお、悪い。うっかりしてたぜ。俺はラヴァって言うんだ。見ての通り鬼人族でこのバー『月虹』の店主だ。よろしくな、ユラ」
「───ラヴァさん。よろしくお願いします」
抱き上げられたままペコリとお辞儀をした。ほうほう、鬼人族っていう種族なんだ。確かに鬼っぽい。
「あー、敬語じゃなくていいぞ。俺もユラって呼んでるし」
「敬語はなくていいが気安く名前を呼ぶな」
「いや無茶言うなよ・・・・・・お前、そんなに狭量だったか? 独占欲と嫉妬が凄いな」
「そんなことは、ない・・・・・・はず」
「言い切れてないじゃん。自覚ありか」
ナハトに話しかけたんだけど、しっかり聞こえてたみたいで本人からそう告げられた。
ラヴァって赤色のことを言うような・・・・・・? 確かに見事な赤髪だもんな。
敬語も、しなくていいならその方が楽だから助かる。
それにしてもやっぱり仲がいいみたいでポンポンと会話が流れるなぁ。
ラヴァは肉を焼きながら野菜を刻んでサラダを作ったり、小鍋にお湯を沸かしてコンソメスープみたいなものをテキパキと作っている。手際がいい。
食欲をそそる匂いにお腹が更にぐうーっと鳴る。
「もうじき出来るから待ってな」
「・・・・・・めちゃくちゃ美味しそう」
「だろう? 店でよく売れるステーキだ。ほらナハト、そこに座らせろ」
そう言ってナハトに僕をカウンター席に座らせると、ラヴァが目の前にサラダとスープ、メインのステーキを並べてくれた。
ステーキはサイコロ状にカットしてくれている。
何、この気遣いが出来るイケオジ!
僕の中でワイルドイケオジからスパダリイケオジに評価が変わった瞬間だった。
「いただきます」
つい癖で手を合わせてしまったが、二人ともツッコまずに見守ってくれているようだ。
異世界で初めてまともな料理を食べる。
「───ぅんまぁ!」
ステーキは柔らかくて肉汁たっぷり、シンプルな塩コショウが肉の旨味を引き出してる。
スープも思った通りのコンソメスープだけど、味わい深い。
サラダもドレッシングがマッチしててパリパリ美味しい。
「・・・・・・しかしめちゃくちゃ美味しそう食うな。しかもどこに入るんだっていうくらい食うって、欠食児童か。お前、何食わしてんだ?」
そう言ってナハトを見たラヴァに僕は教えてあげた。
「今朝見たら、冷蔵庫にも保管庫にもなーんにもなくて、買ってきてくれたパンとミーノ乳飲んだだけなんだ。あ、さっきお茶とお菓子は食べたけど」
「あー・・・・・・、どうせ酒くらいしかなかったんだろ。ナハトお前、本当に食わないよな。仕方ないけど」
ラヴァが納得しながら呆れていた。
朝食、パンしか食べてないせいもあるのかな、お腹が減るのって。でも僕は基本的に少食なんだけど。
仕事上仕方なく燃費のいい身体を作ったようなものだから。異世界に来て普通の人並みに変わったのか?
「・・・・・・ユラ、もしかしたら魔力不足で身体が無意識に補おうとして食欲が出てるのかもしれないぞ」
「んえ?」
もっくもっくと食べていると不意にナハトにそう言われたけど、ごめん、食べ物が口の中に入ってて話せない。
魔力不足だと食欲が増すの? それって常識?
「───ああ、そういや魔導師が魔法をガンガン使ったあとはめちゃくちゃ腹が減るって言ってたのを聞いたことあるな」
ラヴァが気付いたように顎に手を当ててそう言った。
ナハトも頷きながら思い出したように呟く。
「魔導師達は減った魔力を補うために魔力を多く含む食べ物を好んで食べてたな」
「大食いのわりに痩せてるヤツがほとんどなのも、食べても魔力に変換されるかららしい」
ラヴァも納得顔だ。それを踏まえて考えたのだろう。
「ユラ、何か大きな魔法でも使ったのか?」
ラヴァにそう聞かれて直前の決闘のことを思い出したけど、アレはほとんど魔力使ってなかったし───。
僕は口の中の食べ物を飲み込んでから応えた。
「んー、あっ・・・・・・アレかな? 聖域にいきなり移動してたヤツ? のせいかも?」
自分じゃ分からないけど、もしかしたら大がかりな魔法かもしれないし。
そう思って口にしたら、ラヴァがハッとした。
「聖域? ───そういやユラ、アンタその耳・・・・・・まさかエルフ!?」
「え? いや、ハイエルフらしいけど。何、今気付いたんだ?」
「えっ!? いや、ナハトが番いとして連れて来たことに驚いてて、スマン。しかしハイエルフか・・・・・・ここ数百年、見ない種族だぜ」
「へえ、数百年・・・・・・えっ!?」
驚いてナハトを見ると頷かれた。
───道理で注目の的だったわけだ。
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