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8 聖域の異変と拾ったもの 3(sideナハト)
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明け方近く、アムリタの北門に到着した俺は、門衛に声をかけた。
「すまない、ギルドマスターの依頼から戻ったんだが・・・・・・」
「・・・・・・あっ! ナハトさん、お早いお帰りで。・・・・・・あれ、その子は?」
詰め所にいた門衛が小さい扉を開けて声をかけてきた。大門は時間外なため閉じられているので、緊急時はこの小さい扉を使う。
もちろん身分証の冒険者タグでの確認も行われるが。
「彼は依頼先で見つけた子でね。身分証がないから俺のタグで中に入れてくれないか? もちろん入街料の五〇〇〇Gは払う」
「もちろんいいですよ。ただ規則ですので魔導具の水晶で犯罪歴の有無は確認させて下さい」
「ああ、頼む」
そう言って俺は眠っている彼を縦抱きに抱え直すと、左手を水晶にかざしてやる。
青く光って犯罪歴がないことが分かると入街料を払って中に入った。
「もしその子の身分証を作るなら、あとで見せに来て下さい。入街料は返還しますから」
「分かった」
そう言って門から離れる。
「・・・・・・時間も時間だし、ギルドには朝イチで行けばいいか。とりあえず俺の家に連れ帰ろう」
俺は郊外にそこそこ大きな家を持っている。宿暮らしも楽でいいが、気兼ねなく過ごせる場所が欲しかったからだ。
食事は嗜好品扱いで栄養にはほとんどならないから料理もしない。食べてもせいぜいが魔力の回復くらいか。
それも俺くらいのレベルだと意味がないくらい微々たるモノで、あってないようなモノだ。
食べたければ外食で済むし、静かに寝る場所があればいい。
そう思って住んでいたんだが・・・・・・。
「さすがに何もなさ過ぎるか・・・・・・」
ユラを二階に連れて行き、家に一つだけあるキングサイズのベッドに一旦下ろすと一階に戻って魔導具の冷蔵庫と保存庫を覗く。
・・・・・・うん、何もないな。あるのはワインやブランデーなどの酒。
「必要ないからと揃えなさすぎた。これじゃユラに食事を与えられないな」
俺はいいが、ユラは食事が必要だろう。あと着替えも。だがまだ店も市場も開かない時間だしな。
「・・・・・・うーん、朝イチでパン屋に行けば何とか・・・・・・」
そもそもスキルで強制的に眠らせているから、たぶん朝七時くらいまでは眠っているだろう。それまでには揃えられるか。
とりあえずユラを寝かせよう。着替えがないから『洗浄』魔法で服もユラも綺麗にしてから服を脱がして掛布をかける。
その際、全身に古傷があるのに気付く。浅いが最近のものらしき傷も見受けられた。
そして首にかかっているタグ。
冒険者タグと似通っていたが、これはただの身分証だろう。片面にウィステリアの花と文字が、もう片面にはユラと刻印されている。
刻まれた文字はこの大陸では見ないものだが、遙か昔に触れたことがあり、読むことが出来た。
───それは東の大陸に数百年ほど前まであったという、今は失われた高位森人の国・ウィステリアの紋章と彼の国の文字。
それを刻印されたタグを持つユラは───。
「ウィステリア王家の血筋、ということか?」
当時の王族、というにはユラは幼すぎる。さすがに違うだろう。
「生き残るために腕を磨いたのか、それとも止むに止まれぬ事情があって仕方なく、なのか」
剥き身のナイフのような鋭利な眼差しと身のこなし。
あれはちょっとやそっとの期間で身につくモノじゃない。相当の鍛錬と死線をくぐり抜けてきた者だ。
「・・・・・・世が世なら、大勢の使用人に傅かれて可愛がられる立場だろうに・・・・・・」
ミディアムヘアで隠れている耳を、髪を掻きあげて晒す。
ハイエルフの特徴である長い耳が露わになった。
見た目ではエルフかハイエルフかは見分けが付きにくいが、ハイエルフは精霊族のように魔力が桁違いに多いのでそこで見分けることが出来る。
それにユラは俺の鑑定でハイエルフと表示されていたので間違いない。
実は湖で名を聞いたときにこっそり鑑定魔法を使ったのだが、ユラという名前とハイエルフという種族名しか分からなかった。
本来、俺の鑑定魔法は隠蔽されていても看破して詳細に解析出来るレベルのものなのだが、何故かユラには通用しなかったのだ。
「その金の髪も、翠と青の混じる瞳も、ハイエルフの特徴を受け継いでいる。そしてこの長い耳が決定的だ」
ハイエルフだからこそ、聖域の湖に現れたのだろう。もしくは何かに巻き込まれて逃げ込んだのかもしれない。
「何にせよ、ここではもう、何も心配することもない」
───俺が護るから。
「俺の半身。悠久の時を生きる俺のたった一人の、伴侶」
あのとき確信した。
背中を駆け抜けたあの痺れるような快感。
唯一無二の存在を感じさせてくれたもの。おそらく、血も極上の味がするだろう。
「悪いがもう逃がしてやれない。君がどう拒もうと、俺は絶対に離さない」
だから、監禁なんてしたくないから、どうか俺を好きになって。
───手始めに身体から堕とすかな。
もちろん成人するまで待つけど。それまでに好きになってくれたら嬉しいけど。
「口付けとお触りくらいは、いいよな」
そう言ってうっそりと笑うと、ぐっすりと眠るユラの首筋をスンッと嗅いでから、小さくて柔らかそうな唇に己の唇を寄せた───。
※ショタはノータッチ。でもユラは成人済みですのでOK。
でもこの時点でナハトはこの世界では未成年だと思ってる。
ちょっと変T・・・・・・いえ、病みそうな・・・・・・。
異世界だから、まあユルいという目でお願いします。(一応合法だから。この異世界でも未成年はアウトですよ)
お金は円→Gにしただけなので普通に変換して下さい。
次はユラ視点に戻ります。
「すまない、ギルドマスターの依頼から戻ったんだが・・・・・・」
「・・・・・・あっ! ナハトさん、お早いお帰りで。・・・・・・あれ、その子は?」
詰め所にいた門衛が小さい扉を開けて声をかけてきた。大門は時間外なため閉じられているので、緊急時はこの小さい扉を使う。
もちろん身分証の冒険者タグでの確認も行われるが。
「彼は依頼先で見つけた子でね。身分証がないから俺のタグで中に入れてくれないか? もちろん入街料の五〇〇〇Gは払う」
「もちろんいいですよ。ただ規則ですので魔導具の水晶で犯罪歴の有無は確認させて下さい」
「ああ、頼む」
そう言って俺は眠っている彼を縦抱きに抱え直すと、左手を水晶にかざしてやる。
青く光って犯罪歴がないことが分かると入街料を払って中に入った。
「もしその子の身分証を作るなら、あとで見せに来て下さい。入街料は返還しますから」
「分かった」
そう言って門から離れる。
「・・・・・・時間も時間だし、ギルドには朝イチで行けばいいか。とりあえず俺の家に連れ帰ろう」
俺は郊外にそこそこ大きな家を持っている。宿暮らしも楽でいいが、気兼ねなく過ごせる場所が欲しかったからだ。
食事は嗜好品扱いで栄養にはほとんどならないから料理もしない。食べてもせいぜいが魔力の回復くらいか。
それも俺くらいのレベルだと意味がないくらい微々たるモノで、あってないようなモノだ。
食べたければ外食で済むし、静かに寝る場所があればいい。
そう思って住んでいたんだが・・・・・・。
「さすがに何もなさ過ぎるか・・・・・・」
ユラを二階に連れて行き、家に一つだけあるキングサイズのベッドに一旦下ろすと一階に戻って魔導具の冷蔵庫と保存庫を覗く。
・・・・・・うん、何もないな。あるのはワインやブランデーなどの酒。
「必要ないからと揃えなさすぎた。これじゃユラに食事を与えられないな」
俺はいいが、ユラは食事が必要だろう。あと着替えも。だがまだ店も市場も開かない時間だしな。
「・・・・・・うーん、朝イチでパン屋に行けば何とか・・・・・・」
そもそもスキルで強制的に眠らせているから、たぶん朝七時くらいまでは眠っているだろう。それまでには揃えられるか。
とりあえずユラを寝かせよう。着替えがないから『洗浄』魔法で服もユラも綺麗にしてから服を脱がして掛布をかける。
その際、全身に古傷があるのに気付く。浅いが最近のものらしき傷も見受けられた。
そして首にかかっているタグ。
冒険者タグと似通っていたが、これはただの身分証だろう。片面にウィステリアの花と文字が、もう片面にはユラと刻印されている。
刻まれた文字はこの大陸では見ないものだが、遙か昔に触れたことがあり、読むことが出来た。
───それは東の大陸に数百年ほど前まであったという、今は失われた高位森人の国・ウィステリアの紋章と彼の国の文字。
それを刻印されたタグを持つユラは───。
「ウィステリア王家の血筋、ということか?」
当時の王族、というにはユラは幼すぎる。さすがに違うだろう。
「生き残るために腕を磨いたのか、それとも止むに止まれぬ事情があって仕方なく、なのか」
剥き身のナイフのような鋭利な眼差しと身のこなし。
あれはちょっとやそっとの期間で身につくモノじゃない。相当の鍛錬と死線をくぐり抜けてきた者だ。
「・・・・・・世が世なら、大勢の使用人に傅かれて可愛がられる立場だろうに・・・・・・」
ミディアムヘアで隠れている耳を、髪を掻きあげて晒す。
ハイエルフの特徴である長い耳が露わになった。
見た目ではエルフかハイエルフかは見分けが付きにくいが、ハイエルフは精霊族のように魔力が桁違いに多いのでそこで見分けることが出来る。
それにユラは俺の鑑定でハイエルフと表示されていたので間違いない。
実は湖で名を聞いたときにこっそり鑑定魔法を使ったのだが、ユラという名前とハイエルフという種族名しか分からなかった。
本来、俺の鑑定魔法は隠蔽されていても看破して詳細に解析出来るレベルのものなのだが、何故かユラには通用しなかったのだ。
「その金の髪も、翠と青の混じる瞳も、ハイエルフの特徴を受け継いでいる。そしてこの長い耳が決定的だ」
ハイエルフだからこそ、聖域の湖に現れたのだろう。もしくは何かに巻き込まれて逃げ込んだのかもしれない。
「何にせよ、ここではもう、何も心配することもない」
───俺が護るから。
「俺の半身。悠久の時を生きる俺のたった一人の、伴侶」
あのとき確信した。
背中を駆け抜けたあの痺れるような快感。
唯一無二の存在を感じさせてくれたもの。おそらく、血も極上の味がするだろう。
「悪いがもう逃がしてやれない。君がどう拒もうと、俺は絶対に離さない」
だから、監禁なんてしたくないから、どうか俺を好きになって。
───手始めに身体から堕とすかな。
もちろん成人するまで待つけど。それまでに好きになってくれたら嬉しいけど。
「口付けとお触りくらいは、いいよな」
そう言ってうっそりと笑うと、ぐっすりと眠るユラの首筋をスンッと嗅いでから、小さくて柔らかそうな唇に己の唇を寄せた───。
※ショタはノータッチ。でもユラは成人済みですのでOK。
でもこの時点でナハトはこの世界では未成年だと思ってる。
ちょっと変T・・・・・・いえ、病みそうな・・・・・・。
異世界だから、まあユルいという目でお願いします。(一応合法だから。この異世界でも未成年はアウトですよ)
お金は円→Gにしただけなので普通に変換して下さい。
次はユラ視点に戻ります。
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