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顔合わせと諸事情
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「さて、ギルマスは放っておいてサイファ様の話を聞きましょうか。お二方もお座り下さい」
本当にシシーロさんを放置して進行役をつとめるチハヤさん。
それを聞いたシシーロさんは慌ててソファの方にやって来た。
「いやいや、俺を混ぜてくれないと! で? 本題は何なんだ?」
護衛騎士三人以外の全員が座ったところでサイファが俺の帽子を取ったので、ああ、この人達には本当のことを話すんだな、と思った。
「俺の番いであるラトナだが、実は獣人じゃなくてカーバンクルなんだ」
サイファが王子の顔になって前置きもなく直球でズバッとそう言ったら、俺達以外の四人はきょとんとした。
うん。そうなるよな。意味が分からないよな?
ちなみにさっきまではサイファは冒険者とギルマスという関係上、敬語を使っていたらしい。今は王子殿下としての立場で話している。
「・・・・・・ええと、ラトナ様が? 何ですって?」
「カーバンクルだと言った」
「・・・・・・すみません。私の認識だとカーバンクルって稀少な幻獣だと思うのですが? 当然獣姿で、こんな人型ではないと思いますが? そもそも他種族の番いになるような存在ではないですよね?」
チハヤさんが困惑しながらサイファに確認する。他の幻獣を知らないからなんとも言えないが、たぶんその認識で合ってると思うよ。
「普通はその認識で間違いない。ラトナはちょっと特殊なんだ。今はこんな姿だがちゃんとカーバンクルの獣姿になるし、現に額にはほら───」
そう言って俺の前髪を掻きあげておでこを晒す。当然ソコには瞳と同じ色の宝玉が嵌まっている。
「・・・・・・本物?」
そう呟いて思わず手を伸ばすチハヤさんを視線で制すサイファ。俺も触られたくないからおでこを手で覆った。
ハッとしたチハヤさんが慌てて手を引っ込めて謝罪してくれた。
「すみません、失礼でしたね」
「いや、まぁ気持ちは分かるし、大丈夫。でも触られるのはちょっと・・・・・・」
俺的にもサイファ的にもイヤなんで、ごめんなさい。
それにしても、うん。これって頭蓋骨から生えてるのか、グリグリ触ってもビクともしないんだよね。摩訶不思議。
これを盗ろうとしたら、抉り出すしかないんじゃないかと思うと乱獲して殺しまくったんだろうことは想像に難くない。
こわいよー!
ただ、幻獣しか知らないことだけど、実はコレは幻獣である本人が相手に心からあげたいと思えばいとも簡単にポロリと外れるらしい。
つまりは確かな信頼関係を築けばおのずと手に入るモノなんだ。しかもそうやって外れたあとはまた少しずつ宝玉が形成されて元に戻るんだってさ。
コレは俺の幻獣としての本能の中にあった豆知識。もちろん誰にも言わないけどね。
サイファには話してもいいかなとは思ってる。その機会があれば。
そんなわけで超レアで更に獣人型にもなれて、しかもサイファという竜人の王子の番いなんていう盛り盛りの設定にちょっと俺自身も呆れるけども。
実際、こうして目の前に存在するんだから、皆、諦めて事実を呑み込んで欲しいなー。
「もしアレならカーバンクルの姿に戻るけど・・・・・・ちょっとねぇ・・・・・・」
ソレが一番手っ取り早いと思うんだけど、そうすると今着てる服、全部脱げちゃうんだよね。ソレってせっかく着付けて貰って綺麗に髪も結って貰ったのが全部ぱあになっちゃうわけで、出来たら最終手段でお願いしたい。
「いや、そこまでしなくていい。別に信じなくてもいいが、ラトナの顔は覚えておいて欲しい。なんにせよ俺の番いに変わりはないのだから」
「えーと、すみません。万が一俺が逸れたり迷子になったらよろしくお願いしますってことなんで。あと、迷子になったら冒険者ギルドに来るので、サイファ達と合流できるまで待たせて下さい」
俺がペコリと頭を下げたら、困惑しながらも皆、頷いてくれた。
「貴方方だから真実を明かしたのであって、他言無用で普通の獣人という対応をお願いしたい」
そう言うサイファに、ギルマス達はソレならばと頷く。
「幻獣の姿を確認したわけではないが、ソレは真実なんだろう。我らも誓約魔法があるから他言無用という点では心配ない」
「幻獣という点は除いて、サイファ様の番い様としてお顔を周知させておきます」
「そうしてくれると助かる。よろしく頼む」
アレックスとリックスも快く言ってくれたのでひと安心。
こうして何とか顔合わせを済ませた俺達は、このあとの予定をザッとギルマス達に伝えるのだった。
本当にシシーロさんを放置して進行役をつとめるチハヤさん。
それを聞いたシシーロさんは慌ててソファの方にやって来た。
「いやいや、俺を混ぜてくれないと! で? 本題は何なんだ?」
護衛騎士三人以外の全員が座ったところでサイファが俺の帽子を取ったので、ああ、この人達には本当のことを話すんだな、と思った。
「俺の番いであるラトナだが、実は獣人じゃなくてカーバンクルなんだ」
サイファが王子の顔になって前置きもなく直球でズバッとそう言ったら、俺達以外の四人はきょとんとした。
うん。そうなるよな。意味が分からないよな?
ちなみにさっきまではサイファは冒険者とギルマスという関係上、敬語を使っていたらしい。今は王子殿下としての立場で話している。
「・・・・・・ええと、ラトナ様が? 何ですって?」
「カーバンクルだと言った」
「・・・・・・すみません。私の認識だとカーバンクルって稀少な幻獣だと思うのですが? 当然獣姿で、こんな人型ではないと思いますが? そもそも他種族の番いになるような存在ではないですよね?」
チハヤさんが困惑しながらサイファに確認する。他の幻獣を知らないからなんとも言えないが、たぶんその認識で合ってると思うよ。
「普通はその認識で間違いない。ラトナはちょっと特殊なんだ。今はこんな姿だがちゃんとカーバンクルの獣姿になるし、現に額にはほら───」
そう言って俺の前髪を掻きあげておでこを晒す。当然ソコには瞳と同じ色の宝玉が嵌まっている。
「・・・・・・本物?」
そう呟いて思わず手を伸ばすチハヤさんを視線で制すサイファ。俺も触られたくないからおでこを手で覆った。
ハッとしたチハヤさんが慌てて手を引っ込めて謝罪してくれた。
「すみません、失礼でしたね」
「いや、まぁ気持ちは分かるし、大丈夫。でも触られるのはちょっと・・・・・・」
俺的にもサイファ的にもイヤなんで、ごめんなさい。
それにしても、うん。これって頭蓋骨から生えてるのか、グリグリ触ってもビクともしないんだよね。摩訶不思議。
これを盗ろうとしたら、抉り出すしかないんじゃないかと思うと乱獲して殺しまくったんだろうことは想像に難くない。
こわいよー!
ただ、幻獣しか知らないことだけど、実はコレは幻獣である本人が相手に心からあげたいと思えばいとも簡単にポロリと外れるらしい。
つまりは確かな信頼関係を築けばおのずと手に入るモノなんだ。しかもそうやって外れたあとはまた少しずつ宝玉が形成されて元に戻るんだってさ。
コレは俺の幻獣としての本能の中にあった豆知識。もちろん誰にも言わないけどね。
サイファには話してもいいかなとは思ってる。その機会があれば。
そんなわけで超レアで更に獣人型にもなれて、しかもサイファという竜人の王子の番いなんていう盛り盛りの設定にちょっと俺自身も呆れるけども。
実際、こうして目の前に存在するんだから、皆、諦めて事実を呑み込んで欲しいなー。
「もしアレならカーバンクルの姿に戻るけど・・・・・・ちょっとねぇ・・・・・・」
ソレが一番手っ取り早いと思うんだけど、そうすると今着てる服、全部脱げちゃうんだよね。ソレってせっかく着付けて貰って綺麗に髪も結って貰ったのが全部ぱあになっちゃうわけで、出来たら最終手段でお願いしたい。
「いや、そこまでしなくていい。別に信じなくてもいいが、ラトナの顔は覚えておいて欲しい。なんにせよ俺の番いに変わりはないのだから」
「えーと、すみません。万が一俺が逸れたり迷子になったらよろしくお願いしますってことなんで。あと、迷子になったら冒険者ギルドに来るので、サイファ達と合流できるまで待たせて下さい」
俺がペコリと頭を下げたら、困惑しながらも皆、頷いてくれた。
「貴方方だから真実を明かしたのであって、他言無用で普通の獣人という対応をお願いしたい」
そう言うサイファに、ギルマス達はソレならばと頷く。
「幻獣の姿を確認したわけではないが、ソレは真実なんだろう。我らも誓約魔法があるから他言無用という点では心配ない」
「幻獣という点は除いて、サイファ様の番い様としてお顔を周知させておきます」
「そうしてくれると助かる。よろしく頼む」
アレックスとリックスも快く言ってくれたのでひと安心。
こうして何とか顔合わせを済ませた俺達は、このあとの予定をザッとギルマス達に伝えるのだった。
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