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箱庭の外の世界 1
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アレからあーだこーだとサイファとナージュと護衛騎士達で話し合いをした結果、急きょ城下街にお忍び散策の許可が下りました!
結局当事者を完璧に蚊帳の外に置いて進められる計画に首をツッコめるわけもなく。
ナージュが淹れてくれたお茶を飲みながらボケッと大人しくサイファの膝の上に座っていたら、サイファが俺の頭をポンと撫ぜてきて不意に告げた。
「ラトナ、一度俺の部屋に戻って着替え直してから王都に出かけるぞ」
「え、マジで!? 言い出しっぺは俺なんだけどさ、その・・・・・・色々と大丈夫なのか?」
この色々にはもちろんサイファが王子だとか護衛だとか、カーバンクルを城の外に出していいのかとかたくさんあるんだけど。
「さては俺がSランク冒険者ということを忘れているな? 一応この国の最強だぞ」
「・・・・・・あ、うん。自分で言っちゃうんだ、ソレ?」
まあ、自信過剰なわけではないんだろうけど。ちょっと胡乱げな目で見たからか、ナージュ達が補足してくれた。
「実力者なのは事実ですから」
「実際、サイファ殿下がピッタリとくっ付いていれば危険はありませんよ」
「大抵の者は殿下の威圧や殺気で逃げるか倒れます」
「ソレはソレで面倒、いや大変だから無闇やたらにやっちゃダメだよ!」
慌ててそう言ったら皆、無言でにっこりした。
・・・・・・うん、自粛する気ないね。まぁ、俺が幻獣であることを鑑みてもある程度は仕方ないか。
俺だって危険な思いはしたくないし。
「じゃあお願いします。護衛騎士さん達は今日は俺達と一緒?」
「はい。市井に溶け込む服装で影から見守りますので、よろしくお願いします」
「うん、ありがとう。うわぁ、楽しみー!」
いつの間にかお茶を片したナージュに促されて、サイファの抱っこで部屋に逆戻りした俺達は、街にいても浮かないような服に着替えるのだった。
そうして出来上がったのは、裕福な商人のお坊ちゃま風な、ちょっと質のいい白のシンプルなシャツに蒼い糸で裾に刺繍が入っている服と黒いハーフパンツを着た俺。
長い髪は今は邪魔になっちゃうからキッチリ三つ編みにしてからナージュが器用に後頭部でお団子にまとめて髪留めで留めてくれている。
額の宝玉は見られるとマズいので、耳が出るように作られたキャスケットを目深に被って隠すことにした。
サイファはハイネックのピタッとした黒いインナーに濃いグレーのベスト。そのベストには紅の刺繍が入っていた。黒いパンツにこれまた黒いショートブーツ。
装備こそ付けていないが、初めて会った時みたいな冒険者風な出で立ちに似てる。
格好いい!
そのサイファはナージュから小さな手のひらサイズの小箱を受け取ると俺の前でパカッと開いた。
中には一対のピアスが並んでいる。
「・・・・・・コレは?」
「コレはな、ラトナ。番い同士で身に着ける婚姻の証のような宝飾品だ。対になるモノならば何でもいいのだがピアスだったらなくさないかと思って作らせておいたんだ」
「凄く綺麗だね。・・・・・・あれ? もしかしてコレ・・・・・・」
よく見なくても、飾りの宝石が俺の瞳の色である紅玉とサイファの瞳の色の蒼玉が並んで填め込まれている。つまり───。
「ああ。お互いの身体の色を纏うことで伴侶、番いだと周りに知らしめるためでもある」
「・・・・・・嬉しいけど、恥ずかしいな」
「今更だろう? すでに衣装がそういう意図でコーディネートしてあるし」
言われて気付く。確かにサイファと俺の服にはそれぞれの色が差し色になっていた。
「ふわぁ、本当だ。ところで俺の耳にピアス穴はないんだけど・・・・・・」
「ああ、すぐに穴は開けられるし痛みもほぼない。・・・・・・俺がつけてもいいか?」
「───ぅ、痛くないなら・・・・・・お願いしよっかな?」
そう言って耳を向けつつもちょっと怖くてギュッと目を瞑って無意識に大きなケモ耳を伏せてしまい、サイファが悶えていたらしい。
「はい、おしまい。付いたよ」
気付くと終わっていたらしく、付けた右耳の下の方をチュッとされて顔が熱くなった。
「俺のは開いてるから、ラトナが付けてくれる?」
「う、うん。ソレなら付けるだけだし、大丈夫」
サイファが左耳を差し出しながらしゃがんでくれたので、俺はそっと耳朶に触れてピアスを付けた。
付け終わると、一瞬ふわっと暖かくなった気がして首を傾げるとサイファが教えてくれた。
「魔法でね、勝手に外れないし俺以外には外せないようにしてあるんだ。一生涯の大切なものだからね」
「へえ、魔法って凄いね」
俺が感心してる周りでボソボソと何か言ってる護衛騎士達。
何だろ? 今は聞き耳立ててないから聞こえないや。
「・・・・・・確かにサイファ殿下の執着が凄いな」
「普通は本人達なら外せるようになってるよな? アレってラトナ様も外せないってことだろ?」
「殿下、ヤンデレ───」
「そこ、私語に気を付けるように」
「はいっ」
ナージュがピシッと声をかけて慌てて口を噤む護衛騎士達をチラッと見たサイファは、俺に視線を戻すと縁取りに白に近い銀糸で刺繍した蒼色のローブを俺に着せて自分も黒いローブを羽織った。
サイファのローブにも縁取りに紅い刺繍が刺してある。ソレがまたサイファによく似合ってる。
コレが映えるってヤツだな!
「街中では時と場合によってフードを被って貰うことになるが・・・・・・大丈夫か?」
心配そうなサイファににっこり笑って言う俺。
「うん、全然オッケー! 連れてって貰えるだけでラッキーだから気にしないで」
ソレにほっとしたサイファは俺を抱っこすると告げた。
「よし。じゃあ裏口から目立たないように普通の見た目の馬車でこっそり行こうか」
「オー!」
さあ、街探検の始まりだー!
ちなみにナージュは留守番だそうです。
俺、何かお土産買ってくるからね!
自分が無一文なことを忘れていることに気付くのはもう少しあと───。
※誤字脱字、気付いたら直します。スミマセン。
結局当事者を完璧に蚊帳の外に置いて進められる計画に首をツッコめるわけもなく。
ナージュが淹れてくれたお茶を飲みながらボケッと大人しくサイファの膝の上に座っていたら、サイファが俺の頭をポンと撫ぜてきて不意に告げた。
「ラトナ、一度俺の部屋に戻って着替え直してから王都に出かけるぞ」
「え、マジで!? 言い出しっぺは俺なんだけどさ、その・・・・・・色々と大丈夫なのか?」
この色々にはもちろんサイファが王子だとか護衛だとか、カーバンクルを城の外に出していいのかとかたくさんあるんだけど。
「さては俺がSランク冒険者ということを忘れているな? 一応この国の最強だぞ」
「・・・・・・あ、うん。自分で言っちゃうんだ、ソレ?」
まあ、自信過剰なわけではないんだろうけど。ちょっと胡乱げな目で見たからか、ナージュ達が補足してくれた。
「実力者なのは事実ですから」
「実際、サイファ殿下がピッタリとくっ付いていれば危険はありませんよ」
「大抵の者は殿下の威圧や殺気で逃げるか倒れます」
「ソレはソレで面倒、いや大変だから無闇やたらにやっちゃダメだよ!」
慌ててそう言ったら皆、無言でにっこりした。
・・・・・・うん、自粛する気ないね。まぁ、俺が幻獣であることを鑑みてもある程度は仕方ないか。
俺だって危険な思いはしたくないし。
「じゃあお願いします。護衛騎士さん達は今日は俺達と一緒?」
「はい。市井に溶け込む服装で影から見守りますので、よろしくお願いします」
「うん、ありがとう。うわぁ、楽しみー!」
いつの間にかお茶を片したナージュに促されて、サイファの抱っこで部屋に逆戻りした俺達は、街にいても浮かないような服に着替えるのだった。
そうして出来上がったのは、裕福な商人のお坊ちゃま風な、ちょっと質のいい白のシンプルなシャツに蒼い糸で裾に刺繍が入っている服と黒いハーフパンツを着た俺。
長い髪は今は邪魔になっちゃうからキッチリ三つ編みにしてからナージュが器用に後頭部でお団子にまとめて髪留めで留めてくれている。
額の宝玉は見られるとマズいので、耳が出るように作られたキャスケットを目深に被って隠すことにした。
サイファはハイネックのピタッとした黒いインナーに濃いグレーのベスト。そのベストには紅の刺繍が入っていた。黒いパンツにこれまた黒いショートブーツ。
装備こそ付けていないが、初めて会った時みたいな冒険者風な出で立ちに似てる。
格好いい!
そのサイファはナージュから小さな手のひらサイズの小箱を受け取ると俺の前でパカッと開いた。
中には一対のピアスが並んでいる。
「・・・・・・コレは?」
「コレはな、ラトナ。番い同士で身に着ける婚姻の証のような宝飾品だ。対になるモノならば何でもいいのだがピアスだったらなくさないかと思って作らせておいたんだ」
「凄く綺麗だね。・・・・・・あれ? もしかしてコレ・・・・・・」
よく見なくても、飾りの宝石が俺の瞳の色である紅玉とサイファの瞳の色の蒼玉が並んで填め込まれている。つまり───。
「ああ。お互いの身体の色を纏うことで伴侶、番いだと周りに知らしめるためでもある」
「・・・・・・嬉しいけど、恥ずかしいな」
「今更だろう? すでに衣装がそういう意図でコーディネートしてあるし」
言われて気付く。確かにサイファと俺の服にはそれぞれの色が差し色になっていた。
「ふわぁ、本当だ。ところで俺の耳にピアス穴はないんだけど・・・・・・」
「ああ、すぐに穴は開けられるし痛みもほぼない。・・・・・・俺がつけてもいいか?」
「───ぅ、痛くないなら・・・・・・お願いしよっかな?」
そう言って耳を向けつつもちょっと怖くてギュッと目を瞑って無意識に大きなケモ耳を伏せてしまい、サイファが悶えていたらしい。
「はい、おしまい。付いたよ」
気付くと終わっていたらしく、付けた右耳の下の方をチュッとされて顔が熱くなった。
「俺のは開いてるから、ラトナが付けてくれる?」
「う、うん。ソレなら付けるだけだし、大丈夫」
サイファが左耳を差し出しながらしゃがんでくれたので、俺はそっと耳朶に触れてピアスを付けた。
付け終わると、一瞬ふわっと暖かくなった気がして首を傾げるとサイファが教えてくれた。
「魔法でね、勝手に外れないし俺以外には外せないようにしてあるんだ。一生涯の大切なものだからね」
「へえ、魔法って凄いね」
俺が感心してる周りでボソボソと何か言ってる護衛騎士達。
何だろ? 今は聞き耳立ててないから聞こえないや。
「・・・・・・確かにサイファ殿下の執着が凄いな」
「普通は本人達なら外せるようになってるよな? アレってラトナ様も外せないってことだろ?」
「殿下、ヤンデレ───」
「そこ、私語に気を付けるように」
「はいっ」
ナージュがピシッと声をかけて慌てて口を噤む護衛騎士達をチラッと見たサイファは、俺に視線を戻すと縁取りに白に近い銀糸で刺繍した蒼色のローブを俺に着せて自分も黒いローブを羽織った。
サイファのローブにも縁取りに紅い刺繍が刺してある。ソレがまたサイファによく似合ってる。
コレが映えるってヤツだな!
「街中では時と場合によってフードを被って貰うことになるが・・・・・・大丈夫か?」
心配そうなサイファににっこり笑って言う俺。
「うん、全然オッケー! 連れてって貰えるだけでラッキーだから気にしないで」
ソレにほっとしたサイファは俺を抱っこすると告げた。
「よし。じゃあ裏口から目立たないように普通の見た目の馬車でこっそり行こうか」
「オー!」
さあ、街探検の始まりだー!
ちなみにナージュは留守番だそうです。
俺、何かお土産買ってくるからね!
自分が無一文なことを忘れていることに気付くのはもう少しあと───。
※誤字脱字、気付いたら直します。スミマセン。
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