箱庭

エウラ

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快適な箱庭 2

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「ところでさっき何か別のこと言おうとしてた?」

話が逸れた(俺が逸らした)ようなので改めて聞いてみた。
確か『コレからのこと』って言ってたような?

「ああ、うん。その・・・・・・俺達、魂の番いになったって言ったよな」
「うん。そうだね」

さっき説明されたね。寿命も一緒になったって。
だから頷いたんだけど、サイファは言い辛そうにしながら呟いた。

「それでその・・・・・・番った証というか、───して、咬むんだが・・・・・・」
「ん? ・・・・・・なんて?」

呟きが小さくてよく聞こえなかったんだけど?

「だから、その───俺と閨を共にして、俺がラトナのうなじを咬むんだ。それが正式に番った証になる」
「ほうほう、閨で咬むんだ? ・・・・・・閨? 閨って、えーと・・・・・・えっちするってこと? つまり、初夜?」

閨っていわゆる夫婦の夜の営み、子作りってことだよな?
それくらいのことは分かるぞ、さすがに。それに結婚した日の夜に初夜、つまりえっちすることも。

でも待って?

「───俺、男だけど?」
「知ってる」

速攻で頷かれた。うん、そうだよな、分かってるよな?
え、それって当たり前のこと?

「まあ、同性婚もある世界なのかなとは思ったよ、番いとかあるし? でも、ごめん。俺、無知だから聞くけど、同性で子供ってどうなるの?」

ちなみに元の世界ではどう頑張っても男は孕まない。だから俺はそういう感覚でいたけど。

でもサイファはさも当然のようにのたまった。

「ちゃんと正式に番えば孕める。受けがそういう体質に変化してるから」
「・・・・・・それってもしかして、寿命合わせで寝てるときに俺の身体がそういう体質に変わったってこと?」
「ああ」

・・・・・・おおう・・・・・・。俺、いつの間にか子供を孕めるとかっていうのになってた。
ポカンと口を開けて固まった俺を見て気まずそうなサイファ。

「・・・・・・あー・・・・・・すまない。何もかも後出しの説明になってしまったな。ラトナの意見や気持ちも確認せずに・・・・・・」

そう言ってシュンとしたサイファにハッと我に返る。
いやいや、驚いただけだから。

「確かに後出し情報ばっかりだけど、なってしまったものは戻せないだろうし、俺は別に気にしないよ?」

だからそんなに落ち込まないで。
俺が今気になることはそういうのじゃなくて、むしろ───。

「それよりも男同士のえっちの仕方とか、もしも孕んだときはどうなるのとか? ソッチが気になるんだけど。あと、うなじを咬むとかね」

そういう知識は前世、ちまたで聞きかじったくらいでほとんど知らないからね。合ってるのかも分からないし、そもそもえっちもしたことないし。
そう思って聞いたんだけど。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

二人ともチベットスナギツネみたいな顔で無言にならないでくれるかな?

「で? その正式に番うっていうヤツ、えっちっていつするの? 一回で終わるの? そういうの教えて欲しいな。サイファはそれを言いたかったんじゃないの?」

更に言い募ると溜め息を吐く二人。

「・・・・・・そうだが」
「そんなに明け透けにあっけらかんと・・・・・・。ラトナ様らしいというか・・・・・・」

今度は額に手をやって、サイファは上を向いて、ナージュは反対に俯いてそう呟いた。

「だってはっきり言わないとちゃんとしたこと伝わらないじゃん。誤解して困るの自分だし」

何にも知らないから、一から手取り足取り教えて下さい。

「───確かにそうだよな。うん、分かった。とりあえず正式に番う期間を『蜜月』と呼んで、期間は夫夫(夫婦)によって様々だ」

開き直ったのか、ガバッと顔を俺に向けてそう言うサイファ。
ナージュも復活したようで頷く。

「ふんふん。前世でいうところのハネムーンってヤツかぁ。じゃあどのくらいなのかは決まってないんだ?」

前世では新婚旅行で一週間とか二週間とか休暇を取るらしい。
こっちもそれくらいかな?

「ああ、まあ短くてひと月、長いと数ヶ月から半年らしいな」
「中には一年くらいの人もいたらしいですよ」
「・・・・・・」

規模が違った。
ナニソレ異世界常識凄くないか?

「・・・・・・あの、その蜜月って、コッチはさっき言ってたようにえっちする期間なんだよね?」
「そうだね」
「・・・・・・そんなに出来るもんなの?」

俺の脳裏に都市伝説的な『腹上死』という言葉が浮かんで消えた。思わず身震いしちゃったよ。

サイファ達は寒かったのかと心配したけど、違うから。もちろん想像して怖かったからとは言わないけど。

「ああ、もちろん食事や睡眠もちゃんと取るぞ。ようは二人きりで部屋というか家に篭もる期間ということだ」
「あ、なんだ。そっか、そうだよね」

よかった! てっきりずっとえっちしなきゃいけないんだと思ったけど、そうだよな。
さすがに一日のウチで一回とか二回とかで、あとは会話したりしてお互いの距離を縮めたりとかだよな!

───なんてフラグとも気付かずに呑気に思ってたこのときの自分を殴ってやりたい。
前世の常識で考えちゃいけないヤツだったと気付くのは蜜月が終わったあと。
このときは全く、これっぽっちも思わなかったんだ。

「今日は目覚めたばかりで疲れたろう? 明日も一日ゆっくりして、明後日からこの俺の部屋で蜜月に入るつもりで動いてる」
「・・・・・・ここで? は、恥ずかしいな」

使用人達とかいっぱいいるよね?
筒抜けとかイヤすぎる!
そう思っていたらサイファは察してくれたようだ。

「大丈夫。魔法で音やら何やらを遮断するし、世話をしてくれるのは主にナージュだけだから」
「・・・・・・ならいいけど」

うん、最低限の人だけなら、まあ、いいのかな。

「じゃあ、その予定で進めよう。蜜月が明ける頃には離宮の改装工事も済んでいるはずだから」
「へえ。楽しみ」

こうして俺達の蜜月の予定が正式に組まれた。

獣人化した俺とサイファは何故か興奮度が増した王様達と夕御飯を食べてお風呂に入ってさっぱりしたあと、一緒にベッドに横になった。

俺は寝るときはいつも本来のカーバンクル姿に戻って寝てるから、どうしようかと思ってサイファに聞いた。

「夜はいつもカーバンクルの姿なんだけど、寝るときはどっちがいい?」
「明後日からはたぶん大体獣人の姿で過ごして貰うようだから、今夜と明日の夜はカーバンクル姿で頼む」
「分かった」

こうして自前のもふもふで自分を癒やし、サイファも癒やしながら眠りについた。

───翌日は改装中の離宮を見せて貰った。
改装中で危ないから外観だけって、今日も朝からカーバンクル姿でサイファに抱っこされてる。

離宮は大きかったけど、想像してたものよりも小さめだった。
いや、それでも前世の感覚で言ったら豪邸って言っていいくらい大きいけど。
サイファの実家が城で離宮もそれのミニチュアサイズかと思ってたからよかった。
広い庭もあって、ここが本当にお城の敷地内なのかと驚く。
お城の敷地ってめっちゃ広くない? 他にも建物がたくさんあるんだよ?

サイファの離宮は二階建てだけど横に広くて、一階には客室もあるんだって。二階が俺達夫夫のプライベート空間で、離宮を管理する使用人達は隣にある別棟に住み込みらしい。

うん、俺にはこのサイズの邸を管理するなんて無理だから助かります。

「まあ、掃除は魔法でパッと綺麗になるからそこまで大変じゃないと思うよ」
「ああ、浄化魔法で? アレ凄いよね? 一瞬で頑固な汚れも消えちゃうんだもん」

前世でもあれば一人暮らしでも楽だよね。

「魔法も万能ではないが生活に役立つものは一般的に皆使えるから、不便はないな。戦闘などは騎士や冒険者などに任せておけばいい」
「そういえばサイファは王子なんだよね? でも最初に会ったときは冒険者っぽい服装だったような・・・・・・?」

王子っぽい服装ではなくて旅人みたいな、戦う人の格好だったような?

「・・・・・・ああ、言ってなかったか? 番い探しのために冒険者になって旅をして、今はSランクという最高ランクの冒険者なんだ」
「───はぁ? え、王子様なのに冒険者!? しかも最高ランクって、それってめちゃくちゃ強いんじゃ」
「ああ。だからラトナのことは俺がちゃんと護るよ。安心してね」
「おお! すっごい安心安全! 末永くよろしくね」

俺はニカッと笑って言った。
コレならなんの心配もなくのんびりまったり過ごせそうだ。

───こうして安心しきって、獣姿のもふもふでサイファと眠り、俺達は翌日から蜜月に突入したのだった。









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