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6 第一異世界人に遭遇す
しおりを挟む---第一異世界人。
この世界に来てはや半年。
引き篭もりしていたせいもあるが、いかんせん森がデカすぎた。
この世界の常識も知識もない俺は何処に行けば生き物のいる街があるのか知らない。
マップだって自分のいる森のある程度の範囲しか表示されない。
延々と続く深い森に、そうそうに森から離れることを諦めた。
当面、森の動物たちがいてくれるし衣食住は困っていない。
・・・・・・まぁ、話し相手が同じ言語を話してくれないのでもっぱら独り言だが。
そりゃあ寂しいが、そもそもこの世界の名前も知らないし。
アスガルドって神様の名前だけ。
こんな俺が人里に降りていって目立たないはずがないだろう。
アスガルド神がメールで言ってた。
ハイエルフは稀少で数がいないと。
そんなん、いくら俺がハイスペックでも捕まって奴隷とかで売られたりなんかしたらもう・・・。
いや、奴隷とかあるのかも知らんが。
だから出るの億劫になっちゃって。
毎日のんびりもふもふに癒されて過ごしていたわけで。
それが何故か今、目の前に第一異世界人がいるんだ。
いやいや、もう自分が異世界人と言うかこの世界の人だから言い方がおかしいけれども。
---誰?
ああいや、結界を越えてきたのなら悪い奴じゃあ無いんだろうけど・・・?
俺の頬を撫ぜていた掌がスッと離れる。
懐かしい長い黒髪に琥珀色の瞳。
俺の体の厚みよりも倍くらいある筋肉質な体。
頭には犬っぽい黒い耳が・・・・・・耳?
頭に疑問符を幾つも浮かべて固まった俺をどう思ったのか、その男はことさら優しい声音で俺に話しかけてきた。
「俺はアイントラハトという。黒狼の獣人だ。俺の言っている言葉が分かるか?」
「・・・・・・」
・・・うん、分かるかな。
でもごめん、ビックリしすぎて声が出ないんだ。
ちょっと待って。
「・・・大陸共通語なんだが、通じないか? 森人みたいだし精霊語じゃないと駄目か? 俺、あんまり話せないんだよな・・・『俺の名はアイントラハト。君は誰?』」
「『・・・俺は、カムイ。ジェイド・カムイ』・・・あ、えっと、大陸共通語?も分かる。ごめんなさい、ビックリしちゃって」
俺が『精霊語』?で話した後に大陸共通語という言葉で返したら、あからさまにホッとした顔をした。
「---ああ良かった。何にも反応しないから焦った。初めまして、ジェイド?」
「あ、の。・・・カムイって呼んでくれる? もう誰にも呼んで貰えない名前なんだ。君に呼んで欲しい」
今となっては誰にも呼ばれない名前。
自分はそんなつもりなかったが、寂しそうな顔でもしてたのか、アイントラハトは一瞬辛そうな顔をしてからニコッと笑った。
「ああ、わかった。カムイ」
「ありがとう、アイントラハト」
嬉しくて俺もニコッと笑って言った。
「アルトで良いよ。長いからね」
アイントラハト・・・アルトがそう言って格好いい笑顔を見せた。
イケメンだなあ。
俺は体を起こして周りを見た。
さっきまでもふもふで溢れていたのに、誰一人(一匹?)いなくなってた。
「?」
首を傾げていると、察したらしいアルトが教えてくれた。
「ごめんね、俺が来たから皆帰っちゃったみたいなんだ」
「・・・そう。いや無事ならいいんだ。そっか、帰っちゃったのか」
もっとモフりたかったな。
そんな俺をジッと見つめていたらしいアルト。
俺は気付かずにアルトに声をかける。
「ところでアルトはどうしてここに? ていうかどうやってここに?」
体に付いた草や汚れを軽くはたき落とすと浄化魔法で綺麗にする。
傍に立つアルトを見ると、カムイよりも20cmくらい高い。
カムイが見上げないと目線が合わない。
---いいなあ。
背が高くて体もガッチリ。
やや細マッチョで格好いい。
なんて思いながら見つめてしまったら、照れたのか視線を逸らされた。
そうだよなぁ。
男に見つめられてもなぁ・・・なんかごめん?
「ああ、えっと、どうやって来たかだっけ? ココには空から来た」
「---空?」
思わず見上げるが何もない。
太陽がいつの間にか傾いて森の木々の間に隠れてしまっていたが、それだけだ。
首を傾げていると。
「ふふ、ワイバーンに乗ってきた。上空で飛び降りたんだよ」
「え」
な、なんですと---!!?
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