85 / 90
後日譚
アレックス・リリーフは驚愕する
しおりを挟む俺はエルフの里に行かなかった事をこれほど後悔したことは無かった。
辺境伯領での長い日々でかなり打ち解けたフェイが、ウィステリア様の里帰りでよもやあんなコトになろうとは・・・。
俺がその事を知ったのは、辺境伯の依頼が終わった後、イースのギルドから依頼されていた魔獣の討伐が完了した後だった。
アルカス達がエルフの里に行っている間に、臨時のパーティーを組んで魔獣被害を受けていた村付近の森に数日かけて移動し、また数日かけて討伐。
ついでに蔓延っていた盗賊共を根こそぎ退治してやっと安全を確保して。
ホッとひと息ついてからまた数日かけてギルドに戻って、ギルマスの部屋で依頼完了の手続きを終えて。
アイツらどうしてるかなあとぼんやり考えていたときに、ギルマスから何の気なしに告げられた。
「そういえば、フェイ、嫁さんになったよ」
「ふーん、へえ---・・・・・・え?!」
何だって?
フェイが?
---嫁えええ?!
「お相手はエルフだって」
「はあああああ---?!」
「基本的には旦那であるエルフの里に住んでるから、詳しくはクラビスかアルカス辺りに聞いてな」
「・・・・・・まじ?」
「うん、まじ。残念だったねえ、リリー、フェイの事気に入ってただろ?」
さらっと言われた言葉にドキッとした。
「---ギルマス・・・・・・あんた」
「心配しなくても誰にも言ってないよ。まあクラビスは気付いてたろうけどね。とりあえず一度フォレスター家に行ってアルカス達に話を聞いておいで」
「・・・・・・はい」
何となくしょぼんとした背中を見送って、ギルマスはクラビスに伝達魔導具で連絡を取った。
「あー、クラビス、リリーが帰ってきた。で、フェイの事を教えたんで、後はヨロシク」
《---あー、分かった》
それだけで察したクラビスに二つ返事で返されて安心したギルマスは、深い溜息を吐いた。
「二度目の失恋は唐突にきたねぇ」
意外と純情なんだよね。
誰かいい人いないかなあ・・・・・・。
リリーがあの後すぐにクラビスに連絡を取ると、待っていたようにフォレスター家に来るように言われた。
「・・・・・・クラビス、ギルマスから聞いたんだが、その・・・」
《ああ、その件な。これからこっちに来られるか? フェイの旦那を紹介するよ》
「あ、ああ、今から行く」
《この前、お前抜きでパーティーやったんで、リリーを呼んで俺達と併せて友人パーティーしようとアルカスが言ってたんでちょうど良い》
「・・・お前、ワザとか?」
若干イラッとしながら返事を返すとニヤリと笑われた。
《こういうのは傷が浅いうちが良いんだよ。すっぱり消して次に進め》
「---はあ・・・。分かった。俺の性分に合わねえよな、グズグズするのって。ヨロシク頼むよ、クラビス」
《お前の失恋は百合の花で経験済みだからな》
「---うるせえ!」
ムカついて伝達魔導具を一方的に切ってやった。
畜生、俺だって一応傷付くんだからな!
そうしてやって来たフォレスター家で再会したフェイは、いつもの飄々とした感じの中に色気が滲んでていて、それが旦那であるエルフのせいだと一発で分かった。
イヤよイヤよも好きのうちってくらい見せつけられる。
エルフの旦那はエルフにしてはガタイの良い男で、クラビス並みに執着を感じた。
出逢いからの即日婚姻って、どうなのよ?
---俺には無理だ。
そんでもって実はフェイがハーフエルフだったって聞いたときは納得した。
逆にコレがフェイをすっぱり諦める要因になった。
いくら強くても只人の俺とじゃ寿命が違う。
知らずに婚姻して、後から分かったらフェイが哀しむだけだ。
そういう点では相手がエルフで良かったよ。
エルバートと言ったか。
フェイを幸せにしてくれな。
最後は和気あいあいとして和やかに別れた。
「依頼で必要なときはフェイを借りるぜ、エルバート」
「イヤだが仕方ない。が、絶対に手は出すなよ!」
「人妻に手ぇ出すほど困っちゃいねえよ!」
「俺がリリーに手ぇ出すわけねぇだろ! アンタだけだよ!」
「ヒューヒュー! ごちそうさま!」
「コラ、アルカス駄目だよ、余所見しないでこっち向いてて」
「---畜生! 俺も早くリア充になりてぇ」
ぎゃんぎゃん騒いでお開きとなった。
変わらない日常だが、それが今は心地良かった。
64
お気に入りに追加
769
あなたにおすすめの小説
ダブルスの相棒がまるで漫画の褐色キャラ
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
ソフトテニス部でダブルスを組む薬師寺くんは、漫画やアニメに出てきそうな褐色イケメン。
顧問は「パートナーは夫婦。まず仲良くなれ」と言うけど、夫婦みたいな事をすればいいの?
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
キスから始まる主従契約
毒島らいおん
BL
異世界に召喚された挙げ句に、間違いだったと言われて見捨てられた葵。そんな葵を助けてくれたのは、美貌の公爵ローレルだった。
ローレルの優しげな雰囲気に葵は惹かれる。しかも向こうからキスをしてきて葵は有頂天になるが、それは魔法で主従契約を結ぶためだった。
しかも週に1回キスをしないと死んでしまう、とんでもないもので――。
◯
それでもなんとか彼に好かれようとがんばる葵と、実は腹黒いうえに秘密を抱えているローレルが、過去やら危機やらを乗り越えて、最後には最高の伴侶なるお話。
(全48話・毎日12時に更新)
神は眷属からの溺愛に気付かない
グランラババー
BL
【ラントの眷属たち×神となる主人公ラント】
「聖女様が降臨されたぞ!!」
から始まる異世界生活。
夢にまでみたファンタジー生活を送れると思いきや、一緒に召喚された母であり聖女である母から不要な存在として捨てられる。
ラントは、せめて聖女の思い通りになることを妨ぐため、必死に生きることに。
彼はもう人と交流するのはこりごりだと思い、聖女に捨てられた山の中で生き残ることにする。
そして、必死に生き残って3年。
人に合わないと生活を送れているものの、流石に度が過ぎる生活は寂しい。
今更ながら、人肌が恋しくなってきた。
よし!眷属を作ろう!!
この物語は、のちに神になるラントが偶然森で出会った青年やラントが助けた子たちも共に世界を巻き込んで、なんやかんやあってラントが愛される物語である。
神になったラントがラントの仲間たちに愛され生活を送ります。ラントの立ち位置は、作者がこの小説を書いている時にハマっている漫画や小説に左右されます。
ファンタジー要素にBLを織り込んでいきます。
のんびりとした物語です。
現在二章更新中。
現在三章作成中。(登場人物も増えて、やっとファンタジー小説感がでてきます。)
魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺
ウミガメ
BL
魔女の呪いで余命が"1年"になってしまった俺。
その代わりに『触れた男を例外なく全員"好き"にさせてしまう』チート能力を得た。
呪いを解くためには男からの"真実の愛"を手に入れなければならない……!?
果たして失った生命を取り戻すことはできるのか……!
男たちとのラブでムフフな冒険が今始まる(?)
~~~~
主人公総攻めのBLです。
一部に性的な表現を含むことがあります。要素を含む場合「★」をつけておりますが、苦手な方はご注意ください。
※この小説は他サイトとの重複掲載をしております。ご了承ください。
市川先生の大人の補習授業
夢咲まゆ
BL
笹野夏樹は運動全般が大嫌い。ついでに、体育教師の市川慶喜のことも嫌いだった。
ある日、体育の成績がふるわないからと、市川に放課後の補習に出るよう言われてしまう。
「苦手なことから逃げるな」と挑発された夏樹は、嫌いな教師のマンツーマンレッスンを受ける羽目になるのだが……。
◎美麗表紙イラスト:ずーちゃ(@zuchaBC)
※「*」がついている回は性描写が含まれております。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる