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第三章 辺境編
果ての森と辺境伯領 その4
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昼御飯を食べ終わった後、騎士団の訓練を見せて貰う事になった。
連携プレーが必要になったらどう動けばいいかの確認だ。
アーサーは先に行ってるそうだ。
「そう言えば父さん達が訓練してるとこみたことないなあ。今度見せて貰おうかな?」
「やってることは一緒だと思うけどね」
クラビスが苦笑した。
「基礎訓練? 筋トレとか剣を振ったり?」
「大抵はね。やっぱり体を作らないと動けないから。でもイグニス様達のは参考にならないと思うよ」
「あー、あの人達は訓練場を破壊する勢いで模擬戦をやるからなあ」
フェイがぼやく。見たことがあるんだ?
「そこも結界張ってるんじゃないの?」
「お前も人のこと言えないぞ。初級魔法でギルドの結界に罅入れたヤツはどこのどいつだ?」
俺ですね、スミマセン。
「蛙の子は蛙だったかあ・・・」
「蛙?」
「俺んとこの国の言葉で、子供は親に似るって事を言うんだよ。逆に、平凡な親から凄い子供が生まれたことを、鳶が鷹を生むって言う。鷹は鳶より強いんだよ」
「ふーん。面白いね」
そんな会話をしながら訓練場に着いた。
アーサーがこちらを見た。
訓練中の騎士や騎士見習いがピタリと手を止めてこちらをジッと見つめる。
「すでに知らせてあるが、改めて自己紹介を」
アーサーが声を張ると代表者っぽい人が一歩前に出て挨拶をした。
「我らペンタグラム辺境伯私設騎士団、第一部隊です!」
「同じく私設騎士団、第二部隊です!」
「「よろしくお願いいたします」」
うえっ、デッカイ声でびくっとした。
それをすかさずクラビスが背中をポンポンしてくれる。ありがとう。
「今回ギルドから調査依頼で来たSランクのクラビスです」
「Aランクのフェイです」
「アレックスです。Aランクです。今回は主にアルカスの護衛です」
「EXランクのウィステリアだ。よろしくの」
ええ、皆、ランク言うの?
俺、恥ずかしいじゃん。何でいるの?って。
うええ・・・皆に見られた。
「・・・Fランクのアルカスです。先に言っときますが20歳で、クラビスの嫁です」
ちょっと声が小さくなってしまった。スススッとクラビスの背に隠れる。
だって、ほとんど皆、驚愕の目で俺を凝視してるんだもん。
驚いてない人はたぶんさっき門の所にいた人だろう。
「お前達、驚くのも分かるがアルカス殿は長らく行方不明だったフォレスター家の三男だ。20歳の成人した男として扱ってくれ。それと、これから連携を兼ねた訓練をするので、各自装備を整え、30分後にここに集合するように」
ざわっとした空気が一瞬で消えて、皆が一斉に騎士の礼をするとザッと走り去った。
あまりの早業と統制にポカンとして見送った。
「俺達も装備を整えてウォーミングアップをしようか。アルカス、結界張ってくれる?」
「いいけど、元から張ってあるんでしょ?」
クラビスの言葉に疑問を投げかけたら、代わりにウィステリアが応えた。
「アルカス、ギルドの訓練場の結界を初級魔法で壊した事、先程話しておったろうが。もう忘れたのか?」
ニヤリと笑うウィステリア。
「うわあああ! ごめんなさい!! 覚えてます!」
「・・・ギルドの? 初級魔法で・・・?」
怪訝な顔でアーサーが呟くが、ソレに返事をせずに結界を張る。
そりゃあもう、思いつく限りのカッタイやつ。
イメージ大事!
「ふむ。かなりの強度だの。竜の息吹でも耐えられそうじゃの」
サラッと告げられたウィステリアの言葉にアーサーがギョッとした。
「ドラゴンブレスのこと? まあ、インフェルノとかアブソリュートゼロなんかにも耐えられるようにイメージしたからね」
「・・・・・・は」
「そんな殲滅級の魔法は普通の人は使わないし使えないよ。宮廷魔導師が大勢で発動するものだ。・・・まさかアルカス、そんなの使う気なのか?」
アーサーが絶句し、クラビスが半分冗談のように聞いてきた。
「え? 皆を護るためなら自重しないって言ったよね。当然そんな場面になったら遠慮なく使うよ。もちろんこんな結界を張ってその中だけでね」
俺が真顔で言ったので、本気なのが分かったのだろう。その場にいる全員が真剣な顔で俺を見返した。
「さっきアーサーに渡したネックレスもこれと同じ結界防御魔法を付与してあるから安心して。皆を守るよ。その為の力だ」
それに。
「たまにこういう事しながら、スローライフをしたいんだよ。そもそも最初の目標はそれだったんだよね。クラビスとのんびり田舎で暮らしたいの。だから問題ごとはちゃちゃっと解決したい!」
最後のが本音だった。
案の定、それが分かった皆は苦笑した。
「やっぱりお前はそう言うヤツだよな」
「さすがはアルカス」
「そうだろうと思っておったが・・・ちょっとヒヤッとしたの」
「ここ数日でお前の性格が知れたわ」
「・・・アルカス、感謝する」
皆は言いたいことを言ってそれぞれ準備に入った。
俺も防具を身につけて、フードコートは邪魔なので収納バッグにしまって軽くストレッチをする。
うん。久々だけどレベルアップしたせいか思ったよりも体が動く。
軽く体術の型をなぞっていると、自然と集中して仮想の敵を相手にしていた。
それを皆に見られていることも気付かずにひたすら体を動かしていた。
一通り技を出して、ふっと集中が切れた時に凄い視線が集まっているのに気付いてびくっとした。
「え? 何?!」
「いや、初めてまともに動いてるアルカスを見たから、こんなに動けるんだって思って」
フェイがびっくりした顔で言った。
リリーもウィステリアもアーサーも、いつの間にか戻っていた騎士団の皆も頷いている。
「あー・・・前にクラビスには言ったっけ? 変態野郎とか撃退するのに体術習ったって。俺、向こうじゃ結構な頻度で喧嘩してたからそれなりに強いよ?」
父さん達ほどじゃないけど。
って言ったら、あの人達と比較するなって遠い目で言われた。
魔法だったら俺のが上だって。
て言うか、魔法の凄さが際立っていて、体格のこともあってひ弱だと思われてた。
実際、還ってきてからはしょっちゅう倒れてたもんね・・・。
くそう。
もっと鍛えよう!
連携プレーが必要になったらどう動けばいいかの確認だ。
アーサーは先に行ってるそうだ。
「そう言えば父さん達が訓練してるとこみたことないなあ。今度見せて貰おうかな?」
「やってることは一緒だと思うけどね」
クラビスが苦笑した。
「基礎訓練? 筋トレとか剣を振ったり?」
「大抵はね。やっぱり体を作らないと動けないから。でもイグニス様達のは参考にならないと思うよ」
「あー、あの人達は訓練場を破壊する勢いで模擬戦をやるからなあ」
フェイがぼやく。見たことがあるんだ?
「そこも結界張ってるんじゃないの?」
「お前も人のこと言えないぞ。初級魔法でギルドの結界に罅入れたヤツはどこのどいつだ?」
俺ですね、スミマセン。
「蛙の子は蛙だったかあ・・・」
「蛙?」
「俺んとこの国の言葉で、子供は親に似るって事を言うんだよ。逆に、平凡な親から凄い子供が生まれたことを、鳶が鷹を生むって言う。鷹は鳶より強いんだよ」
「ふーん。面白いね」
そんな会話をしながら訓練場に着いた。
アーサーがこちらを見た。
訓練中の騎士や騎士見習いがピタリと手を止めてこちらをジッと見つめる。
「すでに知らせてあるが、改めて自己紹介を」
アーサーが声を張ると代表者っぽい人が一歩前に出て挨拶をした。
「我らペンタグラム辺境伯私設騎士団、第一部隊です!」
「同じく私設騎士団、第二部隊です!」
「「よろしくお願いいたします」」
うえっ、デッカイ声でびくっとした。
それをすかさずクラビスが背中をポンポンしてくれる。ありがとう。
「今回ギルドから調査依頼で来たSランクのクラビスです」
「Aランクのフェイです」
「アレックスです。Aランクです。今回は主にアルカスの護衛です」
「EXランクのウィステリアだ。よろしくの」
ええ、皆、ランク言うの?
俺、恥ずかしいじゃん。何でいるの?って。
うええ・・・皆に見られた。
「・・・Fランクのアルカスです。先に言っときますが20歳で、クラビスの嫁です」
ちょっと声が小さくなってしまった。スススッとクラビスの背に隠れる。
だって、ほとんど皆、驚愕の目で俺を凝視してるんだもん。
驚いてない人はたぶんさっき門の所にいた人だろう。
「お前達、驚くのも分かるがアルカス殿は長らく行方不明だったフォレスター家の三男だ。20歳の成人した男として扱ってくれ。それと、これから連携を兼ねた訓練をするので、各自装備を整え、30分後にここに集合するように」
ざわっとした空気が一瞬で消えて、皆が一斉に騎士の礼をするとザッと走り去った。
あまりの早業と統制にポカンとして見送った。
「俺達も装備を整えてウォーミングアップをしようか。アルカス、結界張ってくれる?」
「いいけど、元から張ってあるんでしょ?」
クラビスの言葉に疑問を投げかけたら、代わりにウィステリアが応えた。
「アルカス、ギルドの訓練場の結界を初級魔法で壊した事、先程話しておったろうが。もう忘れたのか?」
ニヤリと笑うウィステリア。
「うわあああ! ごめんなさい!! 覚えてます!」
「・・・ギルドの? 初級魔法で・・・?」
怪訝な顔でアーサーが呟くが、ソレに返事をせずに結界を張る。
そりゃあもう、思いつく限りのカッタイやつ。
イメージ大事!
「ふむ。かなりの強度だの。竜の息吹でも耐えられそうじゃの」
サラッと告げられたウィステリアの言葉にアーサーがギョッとした。
「ドラゴンブレスのこと? まあ、インフェルノとかアブソリュートゼロなんかにも耐えられるようにイメージしたからね」
「・・・・・・は」
「そんな殲滅級の魔法は普通の人は使わないし使えないよ。宮廷魔導師が大勢で発動するものだ。・・・まさかアルカス、そんなの使う気なのか?」
アーサーが絶句し、クラビスが半分冗談のように聞いてきた。
「え? 皆を護るためなら自重しないって言ったよね。当然そんな場面になったら遠慮なく使うよ。もちろんこんな結界を張ってその中だけでね」
俺が真顔で言ったので、本気なのが分かったのだろう。その場にいる全員が真剣な顔で俺を見返した。
「さっきアーサーに渡したネックレスもこれと同じ結界防御魔法を付与してあるから安心して。皆を守るよ。その為の力だ」
それに。
「たまにこういう事しながら、スローライフをしたいんだよ。そもそも最初の目標はそれだったんだよね。クラビスとのんびり田舎で暮らしたいの。だから問題ごとはちゃちゃっと解決したい!」
最後のが本音だった。
案の定、それが分かった皆は苦笑した。
「やっぱりお前はそう言うヤツだよな」
「さすがはアルカス」
「そうだろうと思っておったが・・・ちょっとヒヤッとしたの」
「ここ数日でお前の性格が知れたわ」
「・・・アルカス、感謝する」
皆は言いたいことを言ってそれぞれ準備に入った。
俺も防具を身につけて、フードコートは邪魔なので収納バッグにしまって軽くストレッチをする。
うん。久々だけどレベルアップしたせいか思ったよりも体が動く。
軽く体術の型をなぞっていると、自然と集中して仮想の敵を相手にしていた。
それを皆に見られていることも気付かずにひたすら体を動かしていた。
一通り技を出して、ふっと集中が切れた時に凄い視線が集まっているのに気付いてびくっとした。
「え? 何?!」
「いや、初めてまともに動いてるアルカスを見たから、こんなに動けるんだって思って」
フェイがびっくりした顔で言った。
リリーもウィステリアもアーサーも、いつの間にか戻っていた騎士団の皆も頷いている。
「あー・・・前にクラビスには言ったっけ? 変態野郎とか撃退するのに体術習ったって。俺、向こうじゃ結構な頻度で喧嘩してたからそれなりに強いよ?」
父さん達ほどじゃないけど。
って言ったら、あの人達と比較するなって遠い目で言われた。
魔法だったら俺のが上だって。
て言うか、魔法の凄さが際立っていて、体格のこともあってひ弱だと思われてた。
実際、還ってきてからはしょっちゅう倒れてたもんね・・・。
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