【完結】水と夢の中の太陽

エウラ

文字の大きさ
上 下
51 / 90
第二章 王都編

王都の門衛は見た!(side門衛隊長)

しおりを挟む
その日、俺達は奇妙な3人組を見た。

昼前だった。
冒険者2人に子供1人。しかもその冒険者はSランクとAランク。
子供を連れて森の方へ行くと言う。

子供を見れば、フードを被っていて顔はよく分からないが、身につけているものは相当な代物だった。
イイトコロのお坊ちゃんか。

しかしいくら高ランクが2人いようと、装備がよかろうと、危険なものは危険だ。
そう言って引き留めていたのだが・・・。

何故か爆笑している2人を苦虫をかみつぶしたような顔をしてフードを取った子供が、首からさげたギルドカードを・・・ギルドカード?!

え?!
成人してたの?!
は?
20歳?!
嫁?!
フォレスター?!

・・・・・・情報過多で処理しきれなかった。

外壁を潜って外へ出た3人をポカンと見送っていたが、ハッと我に返った。

「・・・・・・」
「何だったんスかね?」
「・・・俺に聞くな」
「おおい! 今しがたの騒ぎは何だったんだ?」
「SとAランク二人に将軍閣下の三男様のトリオで、三男様はSランクの嫁だそうだ。ちなみに20歳だった・・・」
「はあ?!」

皆もそうなるよな?

気疲れが過ぎる。



それからさほど時間を置かずにこちらへ戻ってきた3人に、冷静を装って声をかければ、アルカス様が具合を悪くしたから休ませて欲しいと。

それはいいが、将軍閣下に連絡をしなくていいのか聞いたところ、しょっちゅう倒れてるが意識があるだけマシって。

それは大丈夫とは言わないと思うぞ?

心なしか、アルカス様がうんうん頷いた気がする・・・。



お茶に誘われたのでこれ幸いと早めに交代に入ってもらい、Aランクのフェイと雑談をする。

「フォレスターの街のイースでも同じやり取りをしてなあ。やっぱり門衛に止められて、さっきみたいにギルドカードを見せて叫んだんだ。『アルカス・フォレスター、19歳。クラビスの嫁でっす!』って。その時はまだ19歳だったんだけど」

ヤケクソ気味に叫んでて大笑いしたっけなあ、って思い出し笑いをしていた。

「で、出た先で今度は冒険者になりたてのガキに絡まれて。未成年のくせに俺達を金で護衛にしたんだろうって。クラビスの威圧にチビって腰抜かしたそのガキにもういっぺんギルドカードを見せて追い討ちかけて」
「・・・ああ、なるほど」

さっきの女冒険者共も似たような事をしでかしたわけだ。
思わず遠い目をした。

「まぁ、その後倒れるまでがセットなんだけどな? 見事に前回の事をコッチでも踏襲してて、もう笑いが止まらねえ・・・!」

だから門でのやり取りを笑っていたのか。納得だ。

「ただ、前回は意識をなくして丸一日目覚めなかったから、クラビスの動揺が激しくて、みていられなかった。さすがにあの時はフォレスター家に連絡を入れて貰って、邸に戻ったけどな」

だから今回は大丈夫。
そう言って締めくくった。



その後すぐに、元気になったらしいアルカス様達がお礼を言いつつ去って行ったのを見送った。

「なんか、門衛になってそこそこ経ちますけど、今日みたいな濃いぃ日は初めてッス」
「・・・そうだな」

それにしても、クラビス殿はアルカス様が愛おしいという感じを全く隠さないし、フェイ殿は見た目とのギャップが激しかった。

フェイ殿は確実に受けの容姿なのに、口が悪くて、細マッチョだった。

「隊長・・・?」
「良いな、フェイ殿」

思わずぽそっと零れた言葉にバースがギョッとした。
それに苦笑交じりで誤魔化すが、実際のところ一目ぼれに近いかもな。

彼になら抱かれてもいい、なんて思ってることはナイショだ。





しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

キスから始まる主従契約

毒島らいおん
BL
異世界に召喚された挙げ句に、間違いだったと言われて見捨てられた葵。そんな葵を助けてくれたのは、美貌の公爵ローレルだった。 ローレルの優しげな雰囲気に葵は惹かれる。しかも向こうからキスをしてきて葵は有頂天になるが、それは魔法で主従契約を結ぶためだった。 しかも週に1回キスをしないと死んでしまう、とんでもないもので――。 ◯ それでもなんとか彼に好かれようとがんばる葵と、実は腹黒いうえに秘密を抱えているローレルが、過去やら危機やらを乗り越えて、最後には最高の伴侶なるお話。 (全48話・毎日12時に更新)

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

闘乱世界ユルヴィクス -最弱と最強神のまったり世直し旅!?-

mao
BL
 力と才能が絶対的な存在である世界ユルヴィクスに生まれながら、何の力も持たずに生まれた無能者リーヴェ。  無能であるが故に散々な人生を送ってきたリーヴェだったが、ある日、将来を誓い合った婚約者ティラに事故を装い殺されかけてしまう。崖下に落ちたところを不思議な男に拾われたが、その男は「神」を名乗るちょっとヤバそうな男で……?  天才、秀才、凡人、そして無能。  強者が弱者を力でねじ伏せ支配するユルヴィクス。周りをチート化させつつ、世界の在り方を変えるための世直し旅が、今始まる……!?  ※一応はバディモノですがBL寄りなので苦手な方はご注意ください。果たして愛は芽生えるのか。   のんびりまったり更新です。カクヨム、なろうでも連載してます。

神は眷属からの溺愛に気付かない

グランラババー
BL
【ラントの眷属たち×神となる主人公ラント】 「聖女様が降臨されたぞ!!」  から始まる異世界生活。  夢にまでみたファンタジー生活を送れると思いきや、一緒に召喚された母であり聖女である母から不要な存在として捨てられる。  ラントは、せめて聖女の思い通りになることを妨ぐため、必死に生きることに。  彼はもう人と交流するのはこりごりだと思い、聖女に捨てられた山の中で生き残ることにする。    そして、必死に生き残って3年。  人に合わないと生活を送れているものの、流石に度が過ぎる生活は寂しい。  今更ながら、人肌が恋しくなってきた。  よし!眷属を作ろう!!    この物語は、のちに神になるラントが偶然森で出会った青年やラントが助けた子たちも共に世界を巻き込んで、なんやかんやあってラントが愛される物語である。    神になったラントがラントの仲間たちに愛され生活を送ります。ラントの立ち位置は、作者がこの小説を書いている時にハマっている漫画や小説に左右されます。  ファンタジー要素にBLを織り込んでいきます。    のんびりとした物語です。    現在二章更新中。 現在三章作成中。(登場人物も増えて、やっとファンタジー小説感がでてきます。)

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

処理中です...