【完結】水と夢の中の太陽

エウラ

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第二章 王都編

王都観光二日目 2

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やって来ました、冒険者ギルドへ。

例によって顔パスでっす。
昨日の今日でギルマスは忙しそう。

・・・クラビスのお父さんなんだけどね。

「昨日ぶりだね! 昨日の依頼の件かな?」

書類の山を避けて顔を出す。

「ああ、フェイにOK貰ったんで。あと、ウィステリア殿も同行したいそうだ」
「え、まじで?! 森の賢者が?!」
すげー驚いてるけど、森の賢者?
「なあ、クラビス。森の賢者って、何?」
「ああ、ウィステリア殿の通り名、二つ名って感じかな」

へえ、凄いなあ。
俺も頑張ったらそんな通り名貰えるかな?

「アルカスは別に頑張らなくていいよ」

何故分かった!

「アルカスの防具を発注してるから、それが済み次第フォレスター領に戻るから、リリーにも伝えといて。後で連絡するけど」
「了解した。アルカス様、また来てね!」
「あっ、そうだ。ラクス義父さん、俺のことはアルカスって呼び捨てて? 息子になったんだから、他人行儀なのは無しで!」

そう言って親指をグッと立てた。

「アルカスぅーー!」

むせび泣く義父さんを置いてギルドを後にした。

「クラビスのお父さんって面白い人だよね」
好きだな、ああいう人。
「最近は鬱陶しい」
ハハハ。何時もだとそうかも?

「とりあえず、用事は済んだから、馬車で帰ろう」
「そうだ。馬車だった! 魅惑のもふもふ!」
「・・・・・・帰りも触るんだ?」
ちょっと引いてるが関係ないね!
「早く厩に行ってモフるの!」

そうして足早に向かった先で、何か揉め事のようだ。

「何だろう?」
「馬が暴れてるみたいだな」
「えっ!! 何で? あんなに大人しいのに」

クラビスがこめかみを押さえながら言う。

「普通はあんなに簡単に触れないくらい気性が荒いんだよ。元々魔獣だし、テイマーが調教して子供の頃から慣らしてるのが今の馬だ。お前くらいだよ、嬉々として触るのも大人しいのも」
「え、そうなの?!」

初耳!
どおりで最初にモフった時、クラビスもレイブンもドン引きしてたわけだ。納得!

「ところで、如何するの? アレは」
どこの馬か知らんけど、うちらの馬車、出られなくね?
「退いて貰わないとうちのが出られないね。・・・・・・アルカス?」

クラビスが呼びかけるけど無視して歩いて行く。

「ーーーっアルカス、危ないって!」

クラビスの焦った声が聞こえるが、ちょっと待ってね。

「はいはい退いて。馬さんこちら」

そう言ったら、暴れてた馬がグリンとこっちを向いた。

その場にいた全員、あの子供、死んだ・・・と思ったろう。
が、しかし。
一気に静まり返る厩に、呑気な声が響いた。

「にゃんにゃんもふもふ! 魅惑のボディ!!」

アルカスが馬に突撃していった。

クラビスが『あちゃあ』という顔で頭を抱えた。
案の定というか、馬はアルカスのゴッドハンドに陥落し、お腹を出して寝転んだ。

その場にいた全員、唖然としていた。
信じられないモノを見たような。
当の本人はえへへ、とだらしない顔をして一心不乱にモフり倒していた。

「・・・アレ?」

不意に手を止めた。

「・・・・・・アルカス? どうした」
クラビスが傍まで来て尋ねる。
「この子、調子悪いみたい。あっ、お腹が痛くて暴れてたのか。そっかそっか、辛かったねえ。今、治してあげるからね?」

そう言って治癒魔法をかけると、瞬時に治ったのか、ムクッと起き上がって顔をペロリと舐めてきた。

クラビスに速攻回収されて浄化された。

「馬さん、変なモノ食べちゃ駄目だよ?」
そういえば何を食べるんだ?
「雑食だから、何でも食べるぞ。おそらく、傷んだ残飯でも食べてしまったんだろう」
「うへえ。気を付けてね? じゃあまたね」

そう言って今度は自分の馬車の馬に突撃していった。

「まだモフるのか?」

苦笑するクラビスに、当然と応える。

騒ぎを見ていた人達が呆然としている中、思う存分モフって気が済んだアルカスは、満足げに馬車に乗って帰って行った。

それを見送ってから皆が動き出して色んな話をし出す。

さっきの子供は一体誰だ。
初めて見たぞ。
可愛かった。
連れの色男がアルカスって呼んでたな。
さっきの馬車に付いてた家紋って、将軍様のでなかったか?

・・・・・・え?

あの子と色男の耳と腕に、婚姻の証が付いてたよな。

・・・・・・は?

え? 夫夫・・・・・・?

中途半端な情報のせいで余計に場が混乱しただけだった。


アルカスはたくさんモフって最高な気分で帰路についた。
クラビスはちょっと頭痛がして、アルカスの非常識さを再認識した。


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