40 / 90
第二章 王都編
王都観光(side憲兵隊隊長)
しおりを挟む
その連絡を貰ったのは今朝早くだった。
夜勤明けで今日、明日は非番。
家でゆっくり寝るかと甲冑を脱いで身軽になった頃、急に詰め所にある伝達魔導具が震えた。
事務方が対応に出る。
「こちらは王都中央憲兵隊詰め所です」
《朝早くから申し訳ございません。王都邸のフォレスター家執事でございます。憲兵隊隊長殿はいらっしゃいますでしょうか?》
「は、はい! 少々お待ち下さい!」
事務方が慌てて私を呼んだ。
「隊長に、フォレスター家から、ご指名ですっ!!」
「・・・は?」
「フォレスター家の執事殿から隊長にご指名ですって!」
「・・・何でまた?」
そろりと魔導具へ向かい、用件をうかがうと、三男のアルカス様が夫のクラビス殿を伴って王都に繰り出すそうで、出来れば気にかけてやって欲しいとのこと。
魔導具でお二人の容姿も確認し、了承の旨を伝えると、最後に爆弾をぶち込んできた。
《王都の有名菓子店を最初に訪れる事になっております。クラビス殿は大層な美丈夫ですので、大物が釣れると思いますよ? 記録結晶を携帯なさるとよろしいかと》
「・・・は」
では、と言って通信は切られた。
・・・・・・は?
ソレってそういう事だよな?
・・・ドコまで知ってるんだ。怖い。
「・・・隊長。どうされるので?」
「どうもこうもあるか。休み返上でやるしかないだろう。・・・ったく、強制じゃないところがらしいっちゃらしいが」
はあーっと溜息を吐いて、汚れを落とす為に一度家に戻ることにした。
「昼番のヤツにも連絡してくれ。何かあったときの為にすぐに動けるようにしておくようにと」
「了解です」
手をひらっと振ると詰め所を後にした。
家に戻ると、婚約者が待っていた。朝御飯の用意をしてくれていたらしい。
「お帰りなさい。お疲れ様」
「ああ、ただいま。何時もありがとう」
婚約者で幼馴染みの彼は、例の菓子店で店員をしている。今日もこれから仕事の筈だ。
「帰って早々忙しないが、急用が出来てな、非番だが出かけなくてはいけなくて」
朝食を取りながら簡単に説明する。
隊長という役職柄、わりとこういう事があるため、彼も割り切ってくれて助かるが。
「ただ、今回はちょっと面倒な事になりそう何だ。・・・今日はお前、イートイン担当だよな?」
「ええ、そうですが、それが何か・・・」
キョトンとした顔も可愛いな・・・って違う!
「その面倒ごとが店で起きそうなんだよ」
詳しくは言えないから、注意を促す。
うち(憲兵隊)に連絡して来るくらいだ。菓子店でも同じように連絡が入る筈だ。
「おそらく、店でも何か言われると思うが、俺も店内に入っておくから心配するな」
「・・・分かりました。頼りにしてますね」
ニコッと笑う顔に癒された。
風呂に入って私服に着替え、ひとまず彼を職場である菓子店へ送る。
ついでに何かあったときの為に、退路や危険な物などを素早くチェックしておいた。
一旦広場に戻り、これから来るであろう2人を遠目から探す。
・・・いた。
・・・・・・めちゃくちゃ目立ってんだが。
何だアレ。
王子と美少女、いや美少年。
片手に縦抱っこって。
事前に人相は確認していたが、歳の離れた兄弟か、ロリコンにしか見えない。
ヤバい。犯罪臭がする・・・・・・。
俺の婚約者、普通に可愛い子でよかった!
気配を追うと、影っぽいのが3人か?
見た感じ、あからさまに護衛ってヤツはいないな。
まあS級冒険者が旦那様って、護衛は要らんな。
・・・・・・俺も要らんだろう?
アレか、揉め事の後始末係。
知らんぷりして後を追う。
アルカス様は気付かないが、クラビス様は当然分かっている。
さっきチラッと目が合ってビビった。
そうして、菓子店で仲睦まじい様子を見て、俺の婚約者も見て、ほのぼのとした空気の中に、予想通り割り込んできた女二人。
早速、記録結晶を作動させる。
お前らおよびじゃねえっての。素気なく追い払われているのに、なぜ気付かないのか。
止めろ!
それ以上はクラビス様がキレる!
・・・・・・何とか落ち着いたが、結局、お二人は店を出て行ってしまった。
去り際、クラビス様がぽそっと、
「悪いが後始末を頼みます」
と言っていた。
やっぱりかーーー!
いや、仕事だからいいんだけれども!
さっさと片付けて家に帰ろう。
婚約者も、オーナーに話をして、連れて帰ろう!
そうして宣言通り、ちゃっちゃと終わらせて、婚約者と一緒に再びアルカス様達を追っていくと、影が気配無く耳元で囁いた。
『後は大丈夫とのことです。お疲れ様でしたと』
そう言って去って行った。
またかよ! ビビったわ!
彼は気付かなかったようで、キョトンとしながら
「お腹空いたね。予定外だったから、屋台で買っていって、家でゆっくり食べようか」
そう言ったので、俺も耳元で囁いた。
「そうだな。家で、ゆっくり、食べたいな?」
お前を。
途端に耳まで真っ赤になった婚約者をこれでもかと可愛いがる俺だった。
こんな日も悪くない。
夜勤明けで今日、明日は非番。
家でゆっくり寝るかと甲冑を脱いで身軽になった頃、急に詰め所にある伝達魔導具が震えた。
事務方が対応に出る。
「こちらは王都中央憲兵隊詰め所です」
《朝早くから申し訳ございません。王都邸のフォレスター家執事でございます。憲兵隊隊長殿はいらっしゃいますでしょうか?》
「は、はい! 少々お待ち下さい!」
事務方が慌てて私を呼んだ。
「隊長に、フォレスター家から、ご指名ですっ!!」
「・・・は?」
「フォレスター家の執事殿から隊長にご指名ですって!」
「・・・何でまた?」
そろりと魔導具へ向かい、用件をうかがうと、三男のアルカス様が夫のクラビス殿を伴って王都に繰り出すそうで、出来れば気にかけてやって欲しいとのこと。
魔導具でお二人の容姿も確認し、了承の旨を伝えると、最後に爆弾をぶち込んできた。
《王都の有名菓子店を最初に訪れる事になっております。クラビス殿は大層な美丈夫ですので、大物が釣れると思いますよ? 記録結晶を携帯なさるとよろしいかと》
「・・・は」
では、と言って通信は切られた。
・・・・・・は?
ソレってそういう事だよな?
・・・ドコまで知ってるんだ。怖い。
「・・・隊長。どうされるので?」
「どうもこうもあるか。休み返上でやるしかないだろう。・・・ったく、強制じゃないところがらしいっちゃらしいが」
はあーっと溜息を吐いて、汚れを落とす為に一度家に戻ることにした。
「昼番のヤツにも連絡してくれ。何かあったときの為にすぐに動けるようにしておくようにと」
「了解です」
手をひらっと振ると詰め所を後にした。
家に戻ると、婚約者が待っていた。朝御飯の用意をしてくれていたらしい。
「お帰りなさい。お疲れ様」
「ああ、ただいま。何時もありがとう」
婚約者で幼馴染みの彼は、例の菓子店で店員をしている。今日もこれから仕事の筈だ。
「帰って早々忙しないが、急用が出来てな、非番だが出かけなくてはいけなくて」
朝食を取りながら簡単に説明する。
隊長という役職柄、わりとこういう事があるため、彼も割り切ってくれて助かるが。
「ただ、今回はちょっと面倒な事になりそう何だ。・・・今日はお前、イートイン担当だよな?」
「ええ、そうですが、それが何か・・・」
キョトンとした顔も可愛いな・・・って違う!
「その面倒ごとが店で起きそうなんだよ」
詳しくは言えないから、注意を促す。
うち(憲兵隊)に連絡して来るくらいだ。菓子店でも同じように連絡が入る筈だ。
「おそらく、店でも何か言われると思うが、俺も店内に入っておくから心配するな」
「・・・分かりました。頼りにしてますね」
ニコッと笑う顔に癒された。
風呂に入って私服に着替え、ひとまず彼を職場である菓子店へ送る。
ついでに何かあったときの為に、退路や危険な物などを素早くチェックしておいた。
一旦広場に戻り、これから来るであろう2人を遠目から探す。
・・・いた。
・・・・・・めちゃくちゃ目立ってんだが。
何だアレ。
王子と美少女、いや美少年。
片手に縦抱っこって。
事前に人相は確認していたが、歳の離れた兄弟か、ロリコンにしか見えない。
ヤバい。犯罪臭がする・・・・・・。
俺の婚約者、普通に可愛い子でよかった!
気配を追うと、影っぽいのが3人か?
見た感じ、あからさまに護衛ってヤツはいないな。
まあS級冒険者が旦那様って、護衛は要らんな。
・・・・・・俺も要らんだろう?
アレか、揉め事の後始末係。
知らんぷりして後を追う。
アルカス様は気付かないが、クラビス様は当然分かっている。
さっきチラッと目が合ってビビった。
そうして、菓子店で仲睦まじい様子を見て、俺の婚約者も見て、ほのぼのとした空気の中に、予想通り割り込んできた女二人。
早速、記録結晶を作動させる。
お前らおよびじゃねえっての。素気なく追い払われているのに、なぜ気付かないのか。
止めろ!
それ以上はクラビス様がキレる!
・・・・・・何とか落ち着いたが、結局、お二人は店を出て行ってしまった。
去り際、クラビス様がぽそっと、
「悪いが後始末を頼みます」
と言っていた。
やっぱりかーーー!
いや、仕事だからいいんだけれども!
さっさと片付けて家に帰ろう。
婚約者も、オーナーに話をして、連れて帰ろう!
そうして宣言通り、ちゃっちゃと終わらせて、婚約者と一緒に再びアルカス様達を追っていくと、影が気配無く耳元で囁いた。
『後は大丈夫とのことです。お疲れ様でしたと』
そう言って去って行った。
またかよ! ビビったわ!
彼は気付かなかったようで、キョトンとしながら
「お腹空いたね。予定外だったから、屋台で買っていって、家でゆっくり食べようか」
そう言ったので、俺も耳元で囁いた。
「そうだな。家で、ゆっくり、食べたいな?」
お前を。
途端に耳まで真っ赤になった婚約者をこれでもかと可愛いがる俺だった。
こんな日も悪くない。
91
お気に入りに追加
769
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
キスから始まる主従契約
毒島らいおん
BL
異世界に召喚された挙げ句に、間違いだったと言われて見捨てられた葵。そんな葵を助けてくれたのは、美貌の公爵ローレルだった。
ローレルの優しげな雰囲気に葵は惹かれる。しかも向こうからキスをしてきて葵は有頂天になるが、それは魔法で主従契約を結ぶためだった。
しかも週に1回キスをしないと死んでしまう、とんでもないもので――。
◯
それでもなんとか彼に好かれようとがんばる葵と、実は腹黒いうえに秘密を抱えているローレルが、過去やら危機やらを乗り越えて、最後には最高の伴侶なるお話。
(全48話・毎日12時に更新)
神は眷属からの溺愛に気付かない
グランラババー
BL
【ラントの眷属たち×神となる主人公ラント】
「聖女様が降臨されたぞ!!」
から始まる異世界生活。
夢にまでみたファンタジー生活を送れると思いきや、一緒に召喚された母であり聖女である母から不要な存在として捨てられる。
ラントは、せめて聖女の思い通りになることを妨ぐため、必死に生きることに。
彼はもう人と交流するのはこりごりだと思い、聖女に捨てられた山の中で生き残ることにする。
そして、必死に生き残って3年。
人に合わないと生活を送れているものの、流石に度が過ぎる生活は寂しい。
今更ながら、人肌が恋しくなってきた。
よし!眷属を作ろう!!
この物語は、のちに神になるラントが偶然森で出会った青年やラントが助けた子たちも共に世界を巻き込んで、なんやかんやあってラントが愛される物語である。
神になったラントがラントの仲間たちに愛され生活を送ります。ラントの立ち位置は、作者がこの小説を書いている時にハマっている漫画や小説に左右されます。
ファンタジー要素にBLを織り込んでいきます。
のんびりとした物語です。
現在二章更新中。
現在三章作成中。(登場人物も増えて、やっとファンタジー小説感がでてきます。)
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。
市川先生の大人の補習授業
夢咲まゆ
BL
笹野夏樹は運動全般が大嫌い。ついでに、体育教師の市川慶喜のことも嫌いだった。
ある日、体育の成績がふるわないからと、市川に放課後の補習に出るよう言われてしまう。
「苦手なことから逃げるな」と挑発された夏樹は、嫌いな教師のマンツーマンレッスンを受ける羽目になるのだが……。
◎美麗表紙イラスト:ずーちゃ(@zuchaBC)
※「*」がついている回は性描写が含まれております。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる