25 / 50
国王陛下と王太子 4
しおりを挟む玉座にはこの国の王が座り、脇に王太子殿下と先程の側近の一人が。
背後には近衛騎士団長と近衛騎士数人が警備にあたっている。
謁見の間の両脇には多くの貴族が立っていた。
話を聞きつけて急遽集まったのであろう。
その貴族達がザワザワとしている。
陛下の御前に着いてもざわめきが収まらないが、イライアス達は平然と陛下に謁見の挨拶を始める。
「この度は陛下のご尊顔を拝謁する栄誉を賜り、至極光栄にございます。こちらはわが次男と稀人様、それに甥でございます」
そういって胸に手をあてて礼をするイライアスに倣って他の三人も礼をする。
「遠路はるばるご苦労であった。急な召喚によくぞ応えてくれたな。して、その、ヴェールを被っておるのが?」
「は、稀人のミドウ・ルカでございます。ルカ、ヴェールをとってご挨拶を」
「はい、義父様」
そういってヴェールを外して出て来たルカの顔に皆、釘付けになった。
艶やかな黒髪に濡れた黒曜石のような大きい黒い瞳は髪と同じく黒い睫毛で縁取られている。
真珠の肌はきめ細かく、染み一つない。
薄紅色の小さい唇。
そして10歳程かと思われる小柄な体。
---美少女かと見まごう容姿に皆、唖然とした。
その服装が男性の物だったので、辛うじて男と判別できたくらい、美しい稀人だった。
「---これは、何とも・・・ルカ殿と言ったか、先程、ノースライナの姓を名乗っておったが、保護者と言うことで卿の養子になったのか?」
「---発言をお許し下さいますか?」
「よい、許す。其方達、詳しく話して聞かせよ」
陛下が前のめりになって返答するのに内心苦笑してイライアスが話す。
「では。ルカですが、養子ではございません。ルカはヒューズの伴侶です。ですから、私の義息子になります」
謁見の間が一瞬にして静まり返った。
「---伴侶?」
陛下が信じられないような目で見て、ぽつんと言った。
「はい。神殿にて婚姻式も行って受理されております」
「---嘘だろう? だって、どう見ても10歳かそこらの子供じゃないか!」
先程からポカンとしていた王太子が我に返ったようで、大声で叫んだ。
陛下も唖然としていて叱責する様子は見られない。
周りの貴族達も口々に嘘つきだの誤魔化すなだのと騒ぎ立てる。
「---恐れながら、私は18歳でございます。ヒューズと出会ったときは17歳でしたが、先月18歳になりました。きちんとアルカエラ神に認められております」
ルカがキリッとした大人顔負けの凛々しい姿で反論した。
「私とヒューズはお互い愛し合って婚姻を致しました。そして認められました。それを否定なさることはたとえ王族といえども許されません」
毅然とした態度で言い切った。
「---うう煩い! そんなこと本当か分からないだろう! 大人だと言うならお前は私にこそ相応しい! 辺境伯のスペアなんかより王太子のこの私の方がよっぽど・・・!!」
「---やめんか! 馬鹿者! アルカエラ神の認めた婚姻を否定するなど愚かな・・・!!」
〈---本当だよね。私の愛し子を傷付けるつもりなら容赦しないからね〉
不意に聞こえた声に謁見の間は静まり返った。
『---あちゃー・・・。やっぱり来ちゃったよ』
そう心の中で思う二人・・・イライアスとダグラスだった・・・。
279
お気に入りに追加
1,213
あなたにおすすめの小説
スキルも魔力もないけど異世界転移しました
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
なんとかなれ!!!!!!!!!
入社四日目の新卒である菅原悠斗は通勤途中、車に轢かれそうになる。
死を覚悟したその次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。これが俗に言う異世界転移なのだ——そう悟った悠斗は絶望を感じながらも、これから待ち受けるチートやハーレムを期待に掲げ、近くの村へと辿り着く。
そこで知らされたのは、彼には魔力はおろかスキルも全く無い──物語の主人公には程遠い存在ということだった。
「異世界転生……いや、転移って言うんですっけ。よくあるチーレムってやつにはならなかったけど、良い友だちが沢山できたからほんっと恵まれてるんですよ、俺!」
「友人のわりに全員お前に向けてる目おかしくないか?」
チートは無いけどなんやかんや人柄とかで、知り合った異世界人からいい感じに重めの友情とか愛を向けられる主人公の話が書けたらと思っています。冒険よりは、心を繋いでいく話が書きたいです。
「何って……友だちになりたいだけだが?」な受けが好きです。
6/30 一度完結しました。続きが書け次第、番外編として更新していけたらと思います。
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
【第2部開始】悪役令息ですが、家族のため精一杯生きているので邪魔しないでください~僕の執事は僕にだけイケすぎたオジイです~
ちくわぱん
BL
【第2部開始 更新は少々ゆっくりです】ハルトライアは前世を思い出した。自分が物語の当て馬兼悪役で、王子と婚約するがのちに魔王になって結局王子と物語の主役に殺される未来を。死にたくないから婚約を回避しようと王子から逃げようとするが、なぜか好かれてしまう。とにかく悪役にならぬように魔法も武術も頑張って、自分のそばにいてくれる執事とメイドを守るんだ!と奮闘する日々。そんな毎日の中、困難は色々振ってくる。やはり当て馬として死ぬしかないのかと苦しみながらも少しずつ味方を増やし成長していくハルトライア。そして執事のカシルもまた、ハルトライアを守ろうと陰ながら行動する。そんな二人の努力と愛の記録。両片思い。じれじれ展開ですが、ハピエン。
神は眷属からの溺愛に気付かない
グランラババー
BL
【ラントの眷属たち×神となる主人公ラント】
「聖女様が降臨されたぞ!!」
から始まる異世界生活。
夢にまでみたファンタジー生活を送れると思いきや、一緒に召喚された母であり聖女である母から不要な存在として捨てられる。
ラントは、せめて聖女の思い通りになることを妨ぐため、必死に生きることに。
彼はもう人と交流するのはこりごりだと思い、聖女に捨てられた山の中で生き残ることにする。
そして、必死に生き残って3年。
人に合わないと生活を送れているものの、流石に度が過ぎる生活は寂しい。
今更ながら、人肌が恋しくなってきた。
よし!眷属を作ろう!!
この物語は、のちに神になるラントが偶然森で出会った青年やラントが助けた子たちも共に世界を巻き込んで、なんやかんやあってラントが愛される物語である。
神になったラントがラントの仲間たちに愛され生活を送ります。ラントの立ち位置は、作者がこの小説を書いている時にハマっている漫画や小説に左右されます。
ファンタジー要素にBLを織り込んでいきます。
のんびりとした物語です。
現在二章更新中。
現在三章作成中。(登場人物も増えて、やっとファンタジー小説感がでてきます。)
実はαだった俺、逃げることにした。
るるらら
BL
俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!
実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。
一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!
前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。
!注意!
初のオメガバース作品。
ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。
バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。
!ごめんなさい!
幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に
復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!
今世では誰かに手を取って貰いたい
朝山みどり
BL
ノエル・レイフォードは魔力がないと言うことで、家族や使用人から蔑まれて暮らしていた。
ある日、妹のプリシラに突き飛ばされて、頭を打ち前世のことを思い出し、魔法を使えるようになった。
ただ、戦争の英雄だった前世とは持っている魔法が違っていた。
そんなある日、喧嘩した国同士で、結婚式をあげるように帝国の王妃が命令をだした。
選ばれたノエルは敵国へ旅立った。そこで待っていた男とその日のうちに婚姻した。思いがけず男は優しかった。
だが、男は翌朝、隣国との国境紛争を解決しようと家を出た。
男がいなくなった途端、ノエルは冷遇された。覚悟していたノエルは耐えられたが、とんでもないことを知らされて逃げ出した。
優しい庭師の見る夢は
エウラ
BL
植物好きの青年が不治の病を得て若くして亡くなり、気付けば異世界に転生していた。
かつて管理者が住んでいた森の奥の小さなロッジで15歳くらいの体で目覚めた樹希(いつき)は、前世の知識と森の精霊達の協力で森の木々や花の世話をしながら一人暮らしを満喫していくのだが・・・。
※主人公総受けではありません。
精霊達は単なる家族・友人・保護者的な位置づけです。お互いがそういう認識です。
基本的にほのぼのした話になると思います。
息抜きです。不定期更新。
※タグには入れてませんが、女性もいます。
魔法や魔法薬で同性同士でも子供が出来るというふんわり設定。
※10万字いっても終わらないので、一応、長編に切り替えます。
お付き合い下さいませ。
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
第12回BL小説大賞に参加中!
よろしくお願いします🙇♀️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる