24 / 50
国王陛下と王太子 3
しおりを挟む近衛騎士達に続いて控えの間に向かう。
途中は人払いをしていたのか、人っ子ひとりいない。
静まり返った廊下をカツンと靴の音だけが響く。
暫くして他の近衛騎士が立つ扉の前に着いた。
「ご苦労」
「はっ」
側近のサンクス殿が声をかけ、警備中の近衛騎士が扉を開ける。
中に入ると、お茶やお菓子が用意されていた。
「準備が整い次第お呼び致しますので、こちらで少々お待ちください」
そういってサンクス殿は部屋を出て行った。
残された近衛騎士達は内側の扉の左右に立ち、侍従長がお茶を入れてくれた。
セバスも手伝っている。
「じゃあそれまではゆっくりしよう。ヒューズ、ルカを頼む」
「ルカ、疲れたろう。ソファに座ってお茶を頂こうか」
「はい、ヒューズ」
「ヒューズ、くれぐれも膝に乗せるんじゃないぞ」
ダグラスの発言に、扉で控えていた近衛騎士が一瞬ぎょっとした。
侍従長は辛うじて堪えたが、一瞬、目を見開いた。
「分かっている。せっかく綺麗に着飾ったのを乱してはいけないと堪えているのだ。すまない、ルカ。俺の隣で我慢してくれ」
「僕も我慢するよ。格好いいヒューズの衣装が皺になるのはイヤだもの」
そういって仲良く並んで座る二人は誰が見ても甘い雰囲気を醸し出している。
イライアスとダグラスは通常運転の二人にほっとしながらも、甘い空気にすでに胸焼け気味だった。
四人ともが紅茶を口に運び、ヒューズがヴェールを少し捲ってルカの口に一口大のケーキをフォークで差し出すと、躊躇なくあーんをするルカ。
コレも辺境伯家では日常茶飯事なので頓着しないが、近衛騎士と侍従長は表情を変えないように必死だった。
それを何度か繰り返し、ルカがケーキを一皿食べ終わった頃にノックがあり、準備が整ったと連絡が入ったので、再び移動することになった。
別の案内人と最初からいる近衛騎士二人について行く。
セバスは侍従長と共に控えの間で待つ。
「行ってきますね、セバス」
「行ってらっしゃいませ」
そういって軽く手を振るルカににっこり笑って見送るセバス。
姿が見えなくなると、侍従長がおそるおそる声をかけてきた。
「・・・その、セバス殿は、稀人様と仲がよろしいので・・・?」
「ええ。保護した当初からお世話をさせて頂いておりますので」
「・・・こんなことを聞くのは本来いけないと分かってはおりますが、稀人様はどのような方なのでしょう・・・?」
「---そうですね。この後色々と公表されるでしょうが、一言で申すならば、とてもお優しい方ですね。こんな老いぼれを『お爺さま』と慕って下さる、孫のような方です」
「・・・それは、羨ましいですな」
何となくほのぼのとしながら控えの間に入っていく二人を残った近衛騎士達は黙って見送ったが、内心、良いなあと思っていた。
一方、控えの間から謁見の間に移動した四人は気合いを入れ直した。
「さあて、準備は良いかな?」
「ええ」
「はい」
「もちろん」
お互い見合って頷く。
「ノースライナ辺境伯卿ノースライナ・イライアス様、ノースライナ・ヒューズ様、ノースライナ・ミドウ・ルカ様、ノースライナ・ダグラス様お着きにございます!」
案内人が名乗りを上げると、扉を警護する近衛騎士が重厚な造りの扉を開く。
イライアスを先頭に、ヒューズにエスコートされたルカ、その後ろをダグラスが続く。
足を踏み入れた途端にざわめきが起こった。
先程の名乗りで気付いた者もいるだろうが、それよりもやはりヴェールを被った渡り人が想像以上に小柄な事が影響しているだろうな。
ざわめきは陛下の御前に着いても収まる気配が無かった。
279
お気に入りに追加
1,232
あなたにおすすめの小説
地味で冴えない俺の最高なポディション。
どらやき
BL
前髪は目までかかり、身長は160cm台。
オマケに丸い伊達メガネ。
高校2年生になった今でも俺は立派な陰キャとしてクラスの片隅にいる。
そして、今日も相変わらずクラスのイケメン男子達は尊い。
あぁ。やばい。イケメン×イケメンって最高。
俺のポディションは片隅に限るな。
神は眷属からの溺愛に気付かない
グランラババー
BL
【ラントの眷属たち×神となる主人公ラント】
「聖女様が降臨されたぞ!!」
から始まる異世界生活。
夢にまでみたファンタジー生活を送れると思いきや、一緒に召喚された母であり聖女である母から不要な存在として捨てられる。
ラントは、せめて聖女の思い通りになることを妨ぐため、必死に生きることに。
彼はもう人と交流するのはこりごりだと思い、聖女に捨てられた山の中で生き残ることにする。
そして、必死に生き残って3年。
人に合わないと生活を送れているものの、流石に度が過ぎる生活は寂しい。
今更ながら、人肌が恋しくなってきた。
よし!眷属を作ろう!!
この物語は、のちに神になるラントが偶然森で出会った青年やラントが助けた子たちも共に世界を巻き込んで、なんやかんやあってラントが愛される物語である。
神になったラントがラントの仲間たちに愛され生活を送ります。ラントの立ち位置は、作者がこの小説を書いている時にハマっている漫画や小説に左右されます。
ファンタジー要素にBLを織り込んでいきます。
のんびりとした物語です。
現在二章更新中。
現在三章作成中。(登場人物も増えて、やっとファンタジー小説感がでてきます。)
スキルも魔力もないけど異世界転移しました
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
なんとかなれ!!!!!!!!!
入社四日目の新卒である菅原悠斗は通勤途中、車に轢かれそうになる。
死を覚悟したその次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。これが俗に言う異世界転移なのだ——そう悟った悠斗は絶望を感じながらも、これから待ち受けるチートやハーレムを期待に掲げ、近くの村へと辿り着く。
そこで知らされたのは、彼には魔力はおろかスキルも全く無い──物語の主人公には程遠い存在ということだった。
「異世界転生……いや、転移って言うんですっけ。よくあるチーレムってやつにはならなかったけど、良い友だちが沢山できたからほんっと恵まれてるんですよ、俺!」
「友人のわりに全員お前に向けてる目おかしくないか?」
チートは無いけどなんやかんや人柄とかで、知り合った異世界人からいい感じに重めの友情とか愛を向けられる主人公の話が書けたらと思っています。冒険よりは、心を繋いでいく話が書きたいです。
「何って……友だちになりたいだけだが?」な受けが好きです。
6/30 一度完結しました。続きが書け次第、番外編として更新していけたらと思います。
光と闇の子
時雨
BL
テオは生まれる前から愛されていた。精霊族はめったに自分で身籠らない、魔族は自分の子供には名前を付けない。しかしテオは違った。精霊族の女王である母が自らの体で産んだ子供、魔族の父が知恵を絞ってつけた名前。だがある日、「テオ」は消えた。
レイは生まれた瞬間から嫌われていた。最初は魔族の象徴である黒髪だからと精霊族に忌み嫌われ、森の中に捨てられた。そしてそれは、彼が魔界に行っても変わらなかった。半魔族だから、純血種ではないからと、蔑まれ続けた。だから、彼は目立たずに強くなっていった。
人々は知らない、「テオ」が「レイ」であると。自ら親との縁の糸を絶ったテオは、誰も信じない「レイ」になった。
だが、それでも、レイはただ一人を信じ続けた。信じてみようと思ったのだ。
BL展開は多分だいぶ後になると思います。主人公はレイ(テオ)、攻めは従者のカイルです。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
攻略対象者やメインキャラクター達がモブの僕に構うせいでゲーム主人公(ユーザー)達から目の敵にされています。
慎
BL
───…ログインしました。
無機質な音声と共に目を開けると、未知なる世界… 否、何度も見たことがある乙女ゲームの世界にいた。
そもそも何故こうなったのか…。経緯は人工頭脳とそのテクノロジー技術を使った仮想現実アトラクション体感型MMORPGのV Rゲームを開発し、ユーザーに提供していたのだけど、ある日バグが起きる───。それも、ウィルスに侵されバグが起きた人工頭脳により、ゲームのユーザーが現実世界に戻れなくなった。否、人質となってしまい、会社の命運と彼らの解放を掛けてゲームを作りストーリーと設定、筋書きを熟知している僕が中からバグを見つけ対応することになったけど…
ゲームさながら主人公を楽しんでもらってるユーザーたちに変に見つかって騒がれるのも面倒だからと、ゲーム案内人を使って、モブの配役に着いたはずが・・・
『これはなかなか… 面白い方ですね。正直、悪魔が勇者とか神子とか聖女とかを狙うだなんてベタすぎてつまらないと思っていましたが、案外、貴方のほうが楽しめそうですね』
「は…!?いや、待って待って!!僕、モブだからッッそれ、主人公とかヒロインの役目!!」
本来、主人公や聖女、ヒロインを襲撃するはずの上級悪魔が… なぜに、モブの僕に構う!?そこは絡まないでくださいっっ!!
『……また、お一人なんですか?』
なぜ、人間族を毛嫌いしているエルフ族の先代魔王様と会うんですかね…!?
『ハァ、子供が… 無茶をしないでください』
なぜ、隠しキャラのあなたが目の前にいるんですか!!!っていうか、こう見えて既に成人してるんですがッ!
「…ちょっと待って!!なんか、おかしい!主人公たちはあっっち!!!僕、モブなんで…!!」
ただでさえ、コミュ症で人と関わりたくないのに、バグを見つけてサクッと直す否、倒したら終わりだと思ってたのに… 自分でも気づかないうちにメインキャラクターたちに囲われ、ユーザー否、主人公たちからは睨まれ…
「僕、モブなんだけど」
ん゙ん゙ッ!?……あれ?もしかして、バレてる!?待って待って!!!ちょっ、と…待ってッ!?僕、モブ!!主人公あっち!!!
───だけど、これはまだ… ほんの序の口に過ぎなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる