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ノースライナ辺境伯領へ

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暫くして涙が止まったようで、もぞもぞとヒューズの腕の中で身じろぎをしたのでそっと腕を離すと、目元を赤く染めて恥ずかしそうに見上げた。

「あの、ありがとうございました」
「グッ、い、いやこれぐらい、何ともない。遠慮なく頼って欲しい。じゃなくて、頼ってくれ」
「・・・はい」
「とりあえずだな、君の着ていた服はちょっと着られない状態なので、できるだけ体格に見合うサイズを探していたんだが・・・」
「ちょっと大きいのしか無くて悪いけど、コレを着てくれる? 今年入団した一番下の子の服を借りてきた。袖は捲って、裾はブーツに入れ込めば何とか・・・」

そういってダグラスが服を手渡すと、御礼を言って、その場で着替えだした。

そう、躊躇無く服を脱いだのだ。

俺達がビックリして後ろを向いたら、ルカはキョトンとして。

「・・・ああ、つい。すみません。・・・家で使用人の世話に慣れてるとこういう弊害が・・・・・・」

などとブツブツ呟いていた。
やはり高位貴族か。世話をされるのに慣れているから、人前で肌を曝すことに抵抗がないのだろう。

ましてや自分が性対象として見られるという自覚がないのだろう。

それとも異世界では同性愛者は居ないのだろうか。

などと考えていると、着替え終えたようで、声をかけられた。

・・・・・・うん。デカいな。

「・・・16才の子の服なんだけどな」

幾重にも折られた袖はそれでも掌を隠せそうだし、ウエストは紐で固定しているが腰の細さを強調するばかり。
ズボンの裾はブーツに入れてもダボダボ。
肩はずれ落ちそうで華奢な鎖骨が綺麗に見える。

「・・・・・・ヒュー。これ、マズいよね」
「・・・・・・マズいな、ダグ」

中性的な綺麗な顔が、男女関係なく惹きつける。
救いなのが、未成年であるということ。
さすがに未成年に手を出せば犯罪だ。

そう考えて少しほっとしたのも束の間。

更なる爆弾が投下された。

「僕、これでも男としては170cmあって大きい方だったのに。僕、17才なんだけど。・・・ええ? この世界の人って大きくない?」
「・・・・・・17才?!」
「大きい方?!」

ソレを聞いてお互いこう思った。

『異世界の常識って全く当て嵌まらない』

ちなみにヒューズ達こっちの世界では16才が成人で、普通に職を手にするそうだ。
ルカの国では18才となっていて、暦が同じかは分からないが、一月後に18才になる。

だから子供扱いはしなくていい、と言ったのだが。

「いや、危険だから辺境伯領に行くまでは歳の話はしないで子供の振りをしててくれ」

二人に真剣な顔で諭されたので頷いておいた。

結局上からフードコートを羽織らされて、軽く食事を済ませて片付け、野営地を後にした。

幸い、ルカは乗馬を習っていたので、ヒューズの馬に相乗りさせて貰った。
フードを目深にしっかりと被って前もちゃんと留めて捲れないようにした。

ヒューズは前に座ったルカを落ちないように左手で支え、グッと自分の方に引き寄せた。
細い体がすっぽりと収まる。

『どこもかしこも小さくて細くて、これでもうじき18才になるとか、嘘だろう』

庇護欲をかき立てる容貌に何とも言えない気持ちのまま、出立の声をかける。

「辺境伯領に向けて出立!」
「応!」

騎士団はゆっくりと進み出した。

「あの、どれ位で着くんですか?」
「ああ、言ってなかったな。この速度だと半日というところか。全速力で行けば2時間くらいで着くが、急ぎではないし途中休憩も入るから割とゆっくりだ」
「怪我の負担にならないように進みますが、異常があれば直ぐに言って下さいね」

ダグラスが気を遣ってくれた。それに御礼をしつつ返事をする。

「ありがとうございます。大丈夫です」

そうしてゆっくりながら、午後の早い時間には辺境伯領に着いたのだった。






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