【完結】猫になれ!

エウラ

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ネコにした理由?

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「うええ---、何で、僕、急に人妻にぃ・・・」

今まで恋愛のれの字もなかったのに、たった一日で初体験で処女喪失してそのまま伴侶ってぇー?!

僕の人生、オワタ。

「・・・別にいいだろ、人妻になったって仕事は普通に続けるんだし、ココに住めば衣食住全部使用人がやってくれるし。楽だろ?」
「え、辞めなくて良いの?」
「リナリアが辞めたいって言うなら辞めても良いけど、どうせ辞めないんだろ?」

それにぶんぶん首を振る。
だって魔塔辞めたら僕の出来ることないもん。

「良かった・・・。僕から魔導具研究取ったら何にも残らないもん」
「・・・そんなことないだろ?(・・・・・・まあでも、思いの外バカでアホで良かったよ)」
「ないない。だってずっと役立たずって言われてたもん。何なら死んだ方がマシって・・・アトリウム?」
「・・・・・・何で、そんなこと・・・笑って言うんだよ」

アトリウムが心なしか震えながらぎゅっと抱き締めてきた。
僕は平気だよ?
両親が死んじゃったときからずっと言われてる。

『お前のせい』『役立たず』『いなくなれ』『疫病神』『バカでぐず』・・・僕を表す言葉はたくさんあるけど、どれも概ね同じ。

だから唯一出来る、好きなことを頑張って。
それが誰かの役に立てば嬉しい。

だからね、アトリウムがそんな顔しなくていいんだよ?
泣かないで。

でも・・・ありがとう。


「ところで結局、何で僕をネコにしたにゃん?」

ネコっぽく言ってみた。
アトリウムは顔をサッと赤らめてそっぽを向く。

「・・・・・・お前なあ・・・。俺がお前に惚れてるからに決まってんだろ!」
「嘘だあ・・・! 僕の何処にそんな要素が?!」

思わず耳も尻尾もぴんっと立った。

「良いんだよ、俺だけ分かってれば! 他のヤツらにお前が目ぇつけられても困るし」
「? 誰も僕なんて気にしないでしょ?」
「・・・・・・お前は、自己肯定感なさ過ぎ。まあいいや。もう俺のモノだし。というわけで、お前の魔塔の宿舎の部屋も引き払うから、今日からここがお前んちで俺達の新居な」

当然のように告げるアトリウムに。

「・・・・・・決定事項?」
「決定事項。今荷物取ってこさせてる。何か自分じゃないとマズいモノとかあるか? あるなら今から行くが・・・」
「あー、大事なモノは特殊な箱に入ってるから、それだけは僕じゃないと触れない。たぶん持つことも出来ないよ。それくらいかな」
「ヨシ、じゃあ行こうすぐ行こう」
「・・・アトリウムってせっかちって言われない?」
「これが普通だ。お前が呑気なだけ」
「・・・そっか、ふふふ」

それ以上は何も言わずに、黙って僕の手を引いて馬車で魔塔に向かった。

お互い黙ったままだけど、その空気が何か気持ち良かった。

ちなみに猫耳尻尾は気合い入れて『消えろー消えろー』って念じてたら何か引っ込んだ。
でも驚いたり気を抜くとすぐに出て来ちゃう。
だから一応フード付きの長いローブを羽織って誤魔化す。

そうして着いた魔塔では、すでに僕達の婚姻が知れ渡っていた。
そりゃそうか、宿舎の部屋の引き払いにアトリウムの家の人が来て説明したんだろうし。

でも皆、お祝いムードで、何かびっくり。

もっとサバサバした関係だと思ってたから・・・。

「おめでとう!」
「良かったな」
「アトリウム、リナリアを大事にしろよ?」
「---分かってるよ」
「新婚休暇、一週間で足りるの?!」
「大きな御世話だ!」

皆、嬉しそう、楽しそう。
僕も、何か嬉しい。

「ほら、宿舎に行くぞ」
「うん、あのまた後でね」
「「「おう!」」」

皆、仕事の手を止めて手を振ってくれた。
嬉しい。

宿舎の僕の部屋ではすでにアトリウムの家の使用人がほとんどの荷物をまとめ終えていた。
と言っても、荷物は着替えが少しと魔導具関連の書物くらいで後はほとんど無い。

そして空っぽのクロゼットにぽつんと置き去りになっている小さい箱。

「良かった。これだけは僕じゃないと触れないんだ」
「・・・魔導具なのか? タダの箱に見えるけど」
「内緒」

そういって誤魔化す。
実はちょっと秘密があるんだ。
・・・いつかアトリウムにも話せると良いけど。

ヒョイと持ち上げると、使用人が驚いていた。
やっぱり触れなかったんだね。
苦笑して、アトリウムに声をかける。

「---じゃあ行こうか」
「もう良いのか? さっさと片付けさせた俺が言うのもなんだけど」
「うん。ここにはただ寝るのに帰ってただけだし、特に思い入れも無いから大丈夫。ありがとう、アトリウム」
「・・・なら良いんだけど」

最後にお辞儀だけして、部屋をあとにした。

「そういえば、他に何か手続きとかって・・・?」
「全部俺がやるから心配ない」
「わー、頼れるダンナサマ」
「・・・バカにしてるだろう」
「ええ? 真面目だよ。頼りにしてるよう! 僕、本当にポンコツだから」
「知ってる」
「ははは、酷いなあ」

なんだかたった一日で、僕の世界が変わった。
たぶん良い方に。

アトリウムを見ると、なんだか幸せそうで。

僕自身がそうさせたような気がして、何だか嬉しかったんだ。

魔導具以外でも、誰かを幸せに出来たみたいで、嬉しいんだ。




※2月22日、何なら2月中にも終わらないにゃん。もう少しお付き合い下さいにゃん。



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