4 / 8
ネコにした理由?
しおりを挟む「うええ---、何で、僕、急に人妻にぃ・・・」
今まで恋愛のれの字もなかったのに、たった一日で初体験で処女喪失してそのまま伴侶ってぇー?!
僕の人生、オワタ。
「・・・別にいいだろ、人妻になったって仕事は普通に続けるんだし、ココに住めば衣食住全部使用人がやってくれるし。楽だろ?」
「え、辞めなくて良いの?」
「リナリアが辞めたいって言うなら辞めても良いけど、どうせ辞めないんだろ?」
それにぶんぶん首を振る。
だって魔塔辞めたら僕の出来ることないもん。
「良かった・・・。僕から魔導具研究取ったら何にも残らないもん」
「・・・そんなことないだろ?(・・・・・・まあでも、思いの外バカでアホで良かったよ)」
「ないない。だってずっと役立たずって言われてたもん。何なら死んだ方がマシって・・・アトリウム?」
「・・・・・・何で、そんなこと・・・笑って言うんだよ」
アトリウムが心なしか震えながらぎゅっと抱き締めてきた。
僕は平気だよ?
両親が死んじゃったときからずっと言われてる。
『お前のせい』『役立たず』『いなくなれ』『疫病神』『バカでぐず』・・・僕を表す言葉はたくさんあるけど、どれも概ね同じ。
だから唯一出来る、好きなことを頑張って。
それが誰かの役に立てば嬉しい。
だからね、アトリウムがそんな顔しなくていいんだよ?
泣かないで。
でも・・・ありがとう。
「ところで結局、何で僕をネコにしたにゃん?」
ネコっぽく言ってみた。
アトリウムは顔をサッと赤らめてそっぽを向く。
「・・・・・・お前なあ・・・。俺がお前に惚れてるからに決まってんだろ!」
「嘘だあ・・・! 僕の何処にそんな要素が?!」
思わず耳も尻尾もぴんっと立った。
「良いんだよ、俺だけ分かってれば! 他のヤツらにお前が目ぇつけられても困るし」
「? 誰も僕なんて気にしないでしょ?」
「・・・・・・お前は、自己肯定感なさ過ぎ。まあいいや。もう俺の嫁だし。というわけで、お前の魔塔の宿舎の部屋も引き払うから、今日からここがお前んちで俺達の新居な」
当然のように告げるアトリウムに。
「・・・・・・決定事項?」
「決定事項。今荷物取ってこさせてる。何か自分じゃないとマズいモノとかあるか? あるなら今から行くが・・・」
「あー、大事なモノは特殊な箱に入ってるから、それだけは僕じゃないと触れない。たぶん持つことも出来ないよ。それくらいかな」
「ヨシ、じゃあ行こうすぐ行こう」
「・・・アトリウムってせっかちって言われない?」
「これが普通だ。お前が呑気なだけ」
「・・・そっか、ふふふ」
それ以上は何も言わずに、黙って僕の手を引いて馬車で魔塔に向かった。
お互い黙ったままだけど、その空気が何か気持ち良かった。
ちなみに猫耳尻尾は気合い入れて『消えろー消えろー』って念じてたら何か引っ込んだ。
でも驚いたり気を抜くとすぐに出て来ちゃう。
だから一応フード付きの長いローブを羽織って誤魔化す。
そうして着いた魔塔では、すでに僕達の婚姻が知れ渡っていた。
そりゃそうか、宿舎の部屋の引き払いにアトリウムの家の人が来て説明したんだろうし。
でも皆、お祝いムードで、何かびっくり。
もっとサバサバした関係だと思ってたから・・・。
「おめでとう!」
「良かったな」
「アトリウム、リナリアを大事にしろよ?」
「---分かってるよ」
「新婚休暇、一週間で足りるの?!」
「大きな御世話だ!」
皆、嬉しそう、楽しそう。
僕も、何か嬉しい。
「ほら、宿舎に行くぞ」
「うん、あのまた後でね」
「「「おう!」」」
皆、仕事の手を止めて手を振ってくれた。
嬉しい。
宿舎の僕の部屋ではすでにアトリウムの家の使用人がほとんどの荷物をまとめ終えていた。
と言っても、荷物は着替えが少しと魔導具関連の書物くらいで後はほとんど無い。
そして空っぽのクロゼットにぽつんと置き去りになっている小さい箱。
「良かった。これだけは僕じゃないと触れないんだ」
「・・・魔導具なのか? タダの箱に見えるけど」
「内緒」
そういって誤魔化す。
実はちょっと秘密があるんだ。
・・・いつかアトリウムにも話せると良いけど。
ヒョイと持ち上げると、使用人が驚いていた。
やっぱり触れなかったんだね。
苦笑して、アトリウムに声をかける。
「---じゃあ行こうか」
「もう良いのか? さっさと片付けさせた俺が言うのもなんだけど」
「うん。ここにはただ寝るのに帰ってただけだし、特に思い入れも無いから大丈夫。ありがとう、アトリウム」
「・・・なら良いんだけど」
最後にお辞儀だけして、部屋をあとにした。
「そういえば、他に何か手続きとかって・・・?」
「全部俺がやるから心配ない」
「わー、頼れるダンナサマ」
「・・・バカにしてるだろう」
「ええ? 真面目だよ。頼りにしてるよう! 僕、本当にポンコツだから」
「知ってる」
「ははは、酷いなあ」
なんだかたった一日で、僕の世界が変わった。
たぶん良い方に。
アトリウムを見ると、なんだか幸せそうで。
僕自身がそうさせたような気がして、何だか嬉しかったんだ。
魔導具以外でも、誰かを幸せに出来たみたいで、嬉しいんだ。
※2月22日、何なら2月中にも終わらないにゃん。もう少しお付き合い下さいにゃん。
38
お気に入りに追加
192
あなたにおすすめの小説
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う
hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。
それはビッチングによるものだった。
幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。
国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。
※不定期更新になります。
カエルになったら幼なじみが変態でやべーやつだということに気づきました。
まつぼっくり
BL
カエルになったけど、人間に戻れた俺と幼なじみ(変態ストーカー)の日常のお話。時々コオロギさん。
え?俺たちコイビトなの?え?こわ。
攻 変態ストーカーな幼馴染
受 おめめくりくりな性格男前
1話ごとに区切り良くサクサク進んでいきます
全8話+番外編
予約投稿済み
ムーンさんからの転載
【2話目完結】僕の婚約者は僕を好きすぎる!
ゆずは
BL
僕の婚約者はニールシス。
僕のことが大好きで大好きで仕方ないニール。
僕もニールのことが大好き大好きで大好きで、なんでもいうこと聞いちゃうの。
えへへ。
はやくニールと結婚したいなぁ。
17歳同士のお互いに好きすぎるお話。
事件なんて起きようもない、ただただいちゃらぶするだけのお話。
ちょっと幼い雰囲気のなんでも受け入れちゃうジュリアンと、執着愛が重いニールシスのお話。
_______________
*ひたすらあちこちR18表現入りますので、苦手な方はごめんなさい。
*短めのお話を数話読み切りな感じで掲載します。
*不定期連載で、一つ区切るごとに完結設定します。
*甘えろ重視……なつもりですが、私のえろなので軽いです(笑)
王子様のご帰還です
小都
BL
目が覚めたらそこは、知らない国だった。
平凡に日々を過ごし無事高校3年間を終えた翌日、何もかもが違う場所で目が覚めた。
そして言われる。「おかえりなさい、王子」と・・・。
何も知らない僕に皆が強引に王子と言い、迎えに来た強引な婚約者は・・・男!?
異世界転移 王子×王子・・・?
こちらは個人サイトからの再録になります。
十年以上前の作品をそのまま移してますので変だったらすみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる