上 下
4 / 11

ユーリだけでいい

しおりを挟む
*子供に対して暴言がありますので、自衛をお願いします*




あれからコツコツと地道にひたすら黙々・・・えっと後はなんて言葉があるかな?

とにかく最初の常時依頼の薬草採集だとか下級の魔物の討伐とかを熟してランクアップして、それからまた必要な依頼を受けて・・・と、着実にランクアップしていたら。

いつの間にかランクがBになってた。

ええと、Aランクになるにはギルドから指定された魔物を討伐して来ること。
その時によって変わるらしいが、今回僕に指定されたのは火口に住むサラマンダー。

火トカゲとも言われるソレは、その名が示すとおり火を吹く大きなトカゲだ。
翼を持たず、好んで火口周辺に住む。雑食で暑いところが好きなヤツ。

僕は暑いの好きじゃない。
さっさと討伐して帰ってこよう。

今回は一人での討伐が条件なので、ユーリにはお留守番して貰ってる。
過保護なユーリはこっそり着いてきそうだったけど、来たら一緒のベッドで寝ないよ、と言ったらこの世の終わりのような顔で崩れ落ちた。

でもゴメンね?





あんまりユーリが暗雲を背負ってるから、速攻討伐して来るからねと言ってサラマンダーが居そうな場所を探索していたら、珍しい事に同族が引っかかった。

しかも二体。
ただ、気配が嫌な感じ。
接触したくない。

気配を消して警戒しながらその場を離れようとしたら、向こうも気付いたようでぐんぐん近づいて来る。

逃げ切ることは出来るが、ユーリを巻き込みたくない。
腹をくくった。

ほどなく到着した二体を見れば、嫌な予感ほど当たるもので、僕と似た色合いの雄と雌の番いだった。

絶対僕の親だろう。

だが知らんぷりをする。
実際知らないしね。





「こんな所に似たような気配を感じて来てみれば、誰かと思ったらお前、あの卵のヤツ?」
「え? アタシが生んだ卵の事? 孵化しなかったんじゃなかったの?」
「お前がこいつに構うのが許せなかったから捨てたんだよ。なのに何で生きてんだよ!」

・・・黙って聞いてれば自分勝手な事を。

「大体、まだ4年くらいだろ? 何でこんなにデカいんだよ。おかしいだろ!」
「ちょっと。似てるだけなんじゃないの? いいからほっとこうよ。関係ないじゃん」
「・・・ソレもそうか。おいお前、二度と俺等の前に顔を見せるな! 見かけたら殺す!」

そう一方的に言い放って飛んで行ってしまった。

「・・・・・・なんなんだよ。ったく」

冗談でもあんなのが親とか勘弁して欲しい。
言われなくても近づくか!
こっちが滅してやりたいくらい。

あー気分最悪。さっさとサラマンダー討伐して帰ろう!





ランがサラマンダーを討伐してランクアップして帰って来た。
来たんだが・・・・・・。

えらく機嫌が悪い。
討伐に苦労したのかと聞けば、一撃だったって言う返事。

じゃあ何故?

ここまでむっつりしているのも珍しい。
だが、追求しても応えないだろう。

ひとまず置いておいて、ランのランクアップのお祝いをしようか。

「ラン、Aランクおめでとう!」

相変わらずランのご飯は俺の魔力と自然界の魔力、それと魔力を含む食物なので好物の料理を用意した。

甘い物も好きらしくて、ハニービーの蜂蜜が魔力を含むのでパンケーキにタップリとかけてやる。

心なしか機嫌が良くなったようだ。
現金なヤツめ。だが可愛いから許す!

「いただきます!」

大好物のステーキを一口。
にまぁと顔が崩れる。
幸せそうなソレにこっちの顔も自然と弛む。

ああ、幸せだ。

その日の夜、約束通り留守番をしていたからとお風呂に入った後、ランがベッドに入ってきた。
ランを拾ってからなし崩し的に同じベッドで寝ている。
ランが小さいのと俺の魔力を糧としていたからだ。俺もランが可愛くてされるがままになっていた。

世間では親バカという。

今住んでいる家は街の外れにある一軒家の貸家だ。
ランが竜と言うこともあり、人の少ない場所で気兼ねなく過ごしたかったから、ランの冒険者登録後、早々に借りたのだ。

お陰で家の中では寛いでいられる。

今日も今日とて、このままくっついて眠るのだと思っていたら。


なんか押し倒されたんだが。

何故に?

「ラン? どうした?」

キョトンとしてランを見つめる俺を獰猛な目が映す。
瞳孔が縦に割れていて、竜の本能が現れている。普段穏やかなぶん、違和感が凄い。

「・・・今日、なんかあった?」

言うまで聞くまいと思っていたのに、今のランを見たら聞かずにいられなかった。

ランが苦しそうに言った。

「討伐に行く途中、僕を捨てた親に会った」
「え」
「父親らしい雄は、僕が邪魔だったって。次に見かけたら殺すって一方的に言って消えた」
「・・・は?」
「母親らしい雌は僕に興味の欠片もなくてどうでもいいって」
「・・・・・・」
「僕もどうでもいいよ。二度と会わないし会いたくもない。僕にはユーリだけ。ユーリだけが親で親友で・・・・・・恋人だ」
「・・・・・・へ?」

俺は驚きのあまり間抜け面で固まった。

親・・・は分かる。拾って育てたからな。
親友も、立ち位置としてはありだな。助言もするし、気の置けない間柄だしな。
恋人・・・・・・恋人?
変人じゃなくて?

「恋人」

思わずポツリと零したソレにランが反応した。

「恋人だよ。出来れば番って欲しい・・・初めて見たときから好きだったんだ。親愛かと思ってた、けど違ったんだ」

苦しそうに言う。

「愛してるんだ。だから最初から契約を結んだんだ。僕のだ。誰にも渡さない。お願いだから・・・ユリウス」

僕と番って?





今、俺はランと繋がっている。

あの後、自分の気持ちを振り返ってみて、俺もおんなじだって気付いた。

ランは鈍ちんて思ってたけど、俺も鈍ちんだった。
自覚したらぼぼっと顔が赤くなって、ランに速攻バレた。
ランに二つ返事で番いになることを了承して、今ここ。


イヤさあ、俺が食うのかと思ってたけど、最近のランは少し大人びて、20代半ばくらい。
あんまり成長しないんじゃなかったの?

たぶんこれで頭打ちって言ってる。本当に?

とにかく俺の方が受けだった。

イヤ、エルフって総じて性欲薄いから、これまでも経験ないしどっちでもいいんだけど。

想像もしてなかった初体験にあっという間に高みに登り詰めて、俺は意識を失った。

最後に幸せそうなランの顔が見えた。



俺も幸せだ。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】攻略は余所でやってくれ!

オレンジペコ
BL
※4/18『断罪劇は突然に』でこのシリーズを終わらせて頂こうと思います(´∀`*) 遊びに来てくださった皆様、本当に有難うございました♪ 俺の名前は有村 康太(ありむら こうた)。 あり得ないことに死んだら10年前に亡くなったはずの父さんの親友と再会? え?これでやっと転生できるって? どういうこと? 死神さん、100人集まってから転生させるって手抜きですか? え?まさかのものぐさ? まあチマチマやるより一気にやった方が確かにスカッとはするよね? でも10年だよ?サボりすぎじゃね? 父さんの親友は享年25才。 15で死んだ俺からしたら年上ではあるんだけど…好みドンピシャでした! 小1の時遊んでもらった記憶もあるんだけど、性格もいい人なんだよね。 お互い死んじゃったのは残念だけど、転生先が一緒ならいいな────なんて思ってたらきましたよ! 転生後、赤ちゃんからスタートしてすくすく成長したら彼は騎士団長の息子、俺は公爵家の息子として再会! やった~!今度も好みドンピシャ! え?俺が悪役令息? 妹と一緒に悪役として仕事しろ? そんなの知らねーよ! 俺は俺で騎士団長の息子攻略で忙しいんだよ! ヒロインさんよ。攻略は余所でやってくれ! これは美味しいお菓子を手に好きな人にアタックする、そんな俺の話。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします

椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう! こうして俺は逃亡することに決めた。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

【完結】魔法薬師の恋の行方

つくも茄子
BL
魔法薬研究所で働くノアは、ある日、恋人の父親である侯爵に呼び出された。何故か若い美人の女性も同席していた。「彼女は息子の子供を妊娠している。息子とは別れてくれ」という寝耳に水の展開に驚く。というより、何故そんな重要な話を親と浮気相手にされるのか?胎ました本人は何処だ?!この事にノアの家族も職場の同僚も大激怒。数日後に現れた恋人のライアンは「あの女とは結婚しない」と言うではないか。どうせ、男の自分には彼と家族になどなれない。ネガティブ思考に陥ったノアが自分の殻に閉じこもっている間に世間を巻き込んだ泥沼のスキャンダルが展開されていく。

主人公に「消えろ」と言われたので

えの
BL
10歳になったある日、前世の記憶というものを思い出した。そして俺が悪役令息である事もだ。この世界は前世でいう小説の中。断罪されるなんてゴメンだ。「消えろ」というなら望み通り消えてやる。そして出会った獣人は…。※地雷あります気をつけて!!タグには入れておりません!何でも大丈夫!!バッチコーイ!!の方のみ閲覧お願いします。 他のサイトで掲載していました。

悪役なので大人しく断罪を受け入れたら何故か主人公に公開プロポーズされた。

柴傘
BL
侯爵令息であるシエル・クリステアは第二王子の婚約者。然し彼は、前世の記憶を持つ転生者だった。 シエルは王立学園の卒業パーティーで自身が断罪される事を知っていた。今生きるこの世界は、前世でプレイしていたBLゲームの世界と瓜二つだったから。 幼い頃からシナリオに足掻き続けていたものの、大した成果は得られない。 然しある日、婚約者である第二王子が主人公へ告白している現場を見てしまった。 その日からシナリオに背く事をやめ、屋敷へと引き篭もる。もうどうにでもなれ、やり投げになりながら。 「シエル・クリステア、貴様との婚約を破棄する!」 そう高らかに告げた第二王子に、シエルは恭しく礼をして婚約破棄を受け入れた。 「じゃあ、俺がシエル様を貰ってもいいですよね」 そう言いだしたのは、この物語の主人公であるノヴァ・サスティア侯爵令息で…。 主人公×悪役令息、腹黒溺愛攻め×無気力不憫受け。 誰でも妊娠できる世界。頭よわよわハピエン。

処理中です...