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25 巣篭もり中に終わってたらしい 2

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「で、まあ尋問をして自白させて、証拠も揃えてあったからアイツらは全員牢屋の中で処罰を言い渡されるのを待っている状態なんだ。めでたしめでたし!」

そう締めくくって、この件は終わり、とアディスは話を終わらせてしまった。
こうなるともう何も言わないのを分かってる俺はさっさと気持ちを切り替えた。
別に復讐してやろうとか思ってないし、面倒臭いし。

ソレよりも気になるのはコッチ!

「じゃあ、次はアルヴァのお兄さんのこと教えてくれるんだよね?」
「・・・・・・ああ・・・・・・うん。そうだね・・・・・・何処から話そうか」

アディスにしては珍しくたっぷりと思案したあと、サイモンに視線を移す。

「サイモンは公爵家に仕えて長いんだよね?」
「そうでございますね。私は元々、ダスク公爵家の分家で執事として仕える家系の者で、人族ですが幸いにも魔力が多く成長が緩やかでしたので、執事長となってからすでに100年は経ちます」

そう言って軽くお辞儀をするサイモンに、アディスが真面目な顔で聞いた。

「では、ドーン公爵家の長子のエヴァルド殿の番いのことも知っているかな」
「はい、存じ上げております」
「・・・・・・父様?」

サイモンも俺もソレを聞く意味が分からず、首を傾げた。

「───エヴァルド殿の番いは、およそ100年前に魔物討伐中の怪我で亡くなっている」
「えっ! 知らなかった。アルヴァもドーン公爵夫妻も何も言ってなかったし」

そもそもお兄さんに会ったのは今日が初めてだし、所属が違くて王城でも接触する機会はなかったし。

「彼はそれ以来、自宅には帰っていないらしいし、私もこの前が初めてだったよ。ただ、会わなくても私は

んん? 初めましてなのによく知っている? どういうこと?
サイモンはこの時、ちょっと眉毛がピクッと動いた気がする。

何かあるの?

「・・・・・・セラータ、この世界では魂で繫がった番い同士の場合、死んだあとも生まれ変わって再び出逢い、番うことが出来ると言われているんだ」
「・・・・・・え? でも、何時何処に、それこそ種族だって生まれるまでどうなるか分からないでしょ? それに相手のことを覚えてないんじゃ・・・・・・?」

それとも、知らないだけで俺みたいな前世の記憶持ちがたくさんいるのか? もっとも俺はこの世界の住人じゃなかったけど。

「もちろん、普通は覚えていることはないだろう。・・・・・・だが、私は生まれたときから記憶があった」
「え!? ・・・・・・いや待って、ソレって今の話からすると、え? もしかしてもしかするの!?」

ソレってつまり───。

「エヴァルド殿の亡くなった番いは、私だ」

・・・・・・やっぱりー!

「この前の合同訓練のあと、近衛騎士団長のエヴァルド殿と会った。生まれてこのかた全くお互いの接点はなかったんだが、あのとき目が合って彼もすぐに気付いたらしい」

竜人ってそういうのすぐに感じとれるんだな。凄い。でもアルヴァは自覚するのにだいぶかかってたけど。人それぞれってヤツかな。

「実はあのあと私も魔力枯渇気味で倒れてね。結果的に彼に軽く魔力補給をされて・・・・・・目覚めてすぐに求婚されたんだが・・・・・・」

ええ!? アディス、やっぱり結構魔力使ってたんじゃん! そんな素振り見せなかったのに。
でもまあ、ちょうどよかった・・・・・・のかな?
それより求婚って・・・・・・。

「もももちろん、オッケーしたんだよね?」
「いや? 保留にして貰った」
「はああ!?」
「・・・・・・!?」

あっけらかんと言うアディスの言葉に俺は思わず叫び、サイモンは目を瞠った。

いやいや、過去とはいえ番いなんでしょ? でもってアディスの言い方だと今回は偶然にもその番いだった記憶があって、お互いちゃんと認識してるんだよね!?

じゃあ何で断ってんの!? ・・・・・・あれ? 待て、断ったんじゃなくて

「セラ、だからね。私の方の事情があるんだ。・・・・・・以前、セラが私に『父様が子作りすればいいでしょ』って言ったの覚えてる?」
「───ああ、うん。父様の血筋を残すならその方がいいでしょって言ったと思う」
「その時、私には縁のない話なんだ、と言ったのも覚えてる?」

覚えてる。寂しそうな、片想いしてるような切ない顔だったから。でもソレってこのせいだったんだね。

「・・・・・・うん。父様、アレって、自分がエヴァルドお兄さんの番いだったって分かってたからそう言ったんだね?」
「ああ、それも原因の一つかな。もう一つは、今世の私はダスク公爵家の一人息子だということだよ」

こういうとき、貴族っていうのは厄介だと思う。政略結婚とか、血を残すとかしがらみが多くて。

「その血を残すには誰かと婚姻しなくちゃいけないけど、エヴァルドは私に気付いていないし向こうもドーン家の後継者だからね。まあ婚姻は出来るだろうが・・・・・・」
「両家とも跡取り息子だから子供を残さなきゃいけない。けど竜人は子供が出来にくいんだっけ」

ドーン家はともかく、人族のダスク家は早いとこ跡継ぎが生まれないと困る。

「そう。お互いせめて一人ずつ跡取りの子供が必要だろう? でもそんなすぐに最低でも二人孕めるとは限らない。それに次男のアルヴァはまだ幼児だったし、セラもいなかったからね」

なるほど。そんなに前からアディスは色々と考えてたんだな。

「あ、でも今は俺がアルヴァと番ったから、えっと、もしかしてアルヴァがドーン公爵家を継いでエヴァルドお兄さんが父様に婿入りすれば、お互い血筋は残せる?」
「そうだね。たぶん今頃はエヴァルドがシヴィルにそう交渉中だろうね。・・・・・・まあ、断られることはないだろうけど」
「・・・・・・でもさ、アルヴァに公爵家当主が務まると思う?」

結構脳筋だよ?
そう思っていたのが分かったのか、アディスは苦笑した。

「そこはエヴァルドがシヴィルと一緒にサポートするだろうね。それに優秀なセラータがいるから大丈夫。アルヴァは堅物なだけでバカじゃないし、長命なんだからそのうち慣れるだろうさ。・・・・・・じゃないと困る」
「ははは・・・・・・」

気長に行くしかないかー。
でもその話が纏まったら、アディスは再びエヴァルドの番いになるんだね。

「あれ? でももう一度番うって出来るの?」

竜珠を飲んでからアレして咬んでって・・・・・・。

「ああ、竜珠の効果はずっと続いてるんだ。私の魂に馴染んで同化しているといえばいいのかな? だから生まれ変わって記憶がなくても惹かれあうらしい。だから中に精を出して貰って咬んで貰えば元通り番いになるよ」
「・・・・・・明け透けだね、父様」
「貴族だから当然閨教育は済ませてるし、何なら前世の記憶がバッチリだからね。今世では清いままだけど、精神的にはお爺さんだから!」

そうあっけらかんと笑うアディスにポカンとしつつ、俺はその閨教育って受けてないなと思った。

「セラにはすでにアルヴァがいたから、必要ないかなと思って。むっつりなアルヴァのことだ、どうせ懇切丁寧にネチっこく愛撫されて身体中開発されたんだろう?」

俺の考えを読んだらしいアディスにニヤリとそう言われて顔を真っ赤にする。

確かにアルヴァには無垢な身体を開発調教されたけどさぁ───!

色々と未経験で庶民な前世の記憶があるせいでめちゃくちゃ恥ずか死ぬ───!

真っ赤になってお茶を飲みながら落ち着くまで、アディスとサイモンが生暖かい目で見つめていたのに気付かない俺だった。





※次話はちょっとすぐに投稿できないかもしれません。お待ち下さい。
そろそろエンディングからの番外編になるかな・・・・・・?

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