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番外編 斬り捨てた者達 or 斬り捨てられた者達

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※ざまぁな話ですかね。自業自得?
ロステム侯爵視点。とりあえず番外編一発目。暗くてスミマセン。正妻やら子供やらの名前は出ません。モブです。次話はお待ち下さい。




───何処から間違えたのだろう・・・・・・。


ダスク公爵家公子殺害未遂、公子への誹謗中傷を始めとする数々の悪事を暴かれ、我がロステム侯爵家は爵位剥奪の上、一家全員が深淵の森を監視する砦に犯罪奴隷として送られることになった。

幸いというのか、一族の中でも此度の悪事に加担していない者は、貴族籍を抜かれて平民に落とされたものの犯罪奴隷にはならなかった。
それでも傅かれる生活が当たり前の貴族が自力で生活できるかといえば、それはほぼ全員が不可能だというだろう。

そもそも経済苦で没落したという理由でなく剥奪されて平民に落とされるということがすでに蔑みの目で見られることなのだから。
そんな者に優しく手を差し伸べてくれるはずもない。

どちらにせよ、遅かれ早かれこれから私達には地獄の日々が待っているのだ。



───今現在、私には正妻と愛人がおり、それぞれに一人ずつ息子がいる。愛人の元子爵令嬢は社交界でも一目置かれる美貌で、私が愛人にするため裏から手を回して没落させ手に入れた。おそらく本人達は気付いていないだろう。

正妻とは家同士の政略結婚だった。

仲が悪いわけではないがよくもない。結婚して二年も経つのに懐妊の兆しもなく、そこへ社交界デビューしたあの子爵令嬢に一目惚れして、手に入れたいと思った。

正妻に子が出来ぬのだ。跡継ぎのためと言って愛人を囲うのに問題はなかった。・・・・・・まあ下位貴族だったため正妻に抵抗され側室には出来なかったが。

そもそも娘を溺愛していた子爵はデビュー直後から殺到した釣書の中でも、初婚で誠実な貴族家を望んでいて、私のような側室や後妻といった家は眼中になかった。

だから手に入れるために秘密裏に冤罪を被せて没落するように仕向けて、表向きは令嬢の生活保護を申し出て、渋る子爵に首を縦に振らせたのだ。
子爵も令嬢が平民になって生きていけないことは分かっていたのだから。

そうしてまんまと令嬢を手に入れた私は早速既成事実を作って愛人にした。
令嬢はあっという間に子供を身籠もり、待望の第一子となる我が子を産んでくれた。
もちろん跡継ぎのための教育も受けさせた。正妻との間には依然として子がいない。このままだとこの子供が跡継ぎになる。
五歳になるときに披露目をして後継者の宣言をするか・・・・・・と思っていた矢先にその子供が攫われ、スラム街で死んだらしいと耳にした。

『いい気味だわ。正妻の私を差し置いて鼻高々にのうのうと暮らしていて、気分が悪いったら!』

正妻のその言葉を聞いて、誘拐はコレがやったのだと気付いたが愛人の令嬢がちょうど二人目を懐妊していたし、その少し後に正妻も懐妊が分かって、じゃあ最低二人は跡継ぎ候補が出来るのだから別にいいかと放置した。

死んだ最初の子のことをすっかり忘れた頃、愛人が先に可愛らしい容姿の子を産み、少し後に正妻も子を産み落とした。こちらはどちらかというと私と正妻の容姿に似ていた。

こうなると、建て前としては正妻の子が後継者候補となる。だからか正妻は勝ち誇ったような顔で子供の教育に力を入れた。
愛人の子は彼女に似て可愛らしい容姿だったので、自分としてはこちらに甘かったように思う。人並みの教育はしたが、蝶よ花よと育てた気はする。

やがて十五歳になり、正妻の子は魔物討伐の騎士団に、愛人の子は同じく魔導師団に入団した。
その頃になると第二王子派筆頭だった我が家の愛人の子の方を第二王子の婚約者に据えようと画策し始めた。
そんな矢先に不意に湧いた第二王子からダスク公爵家の公子への求婚話に、意味が分からず戸惑う。

公爵家は三家とも中立的な立場であらねばならないと定められている。それをあの王子は分かっていないのか? そこまでバカだったか?
私は心の中で不敬にもそう思った。

案の定、何度も申し込んではすげなく断られている。もう、ウチの息子でいいだろう? こんなに美人で愛らしいのに。
だが頑として首を振らない王子に、私は公子の根も葉もない噂を撒き散らして、更に暗殺者も差し向けて牽制した。しかし王子は諦めない。それを二年あまり続けて・・・・・・。

そしてあの日、ドーン公爵家の公子とダスク公爵家の公子が番いだと知った第二王子が魔導師団と騎士団の合同訓練中に番い相手のドーン公爵家の公子を暗殺しようと目論んで。
もはや手段を選ぶ時期はとうに過ぎていて、我が家の影もこれを機にダスク公爵家の公子暗殺を企て・・・・・・。

その結果が今の状況だ。

向かいの牢屋には正妻と愛人が隣り合って入っていて、正妻は喚き散らしている。
愛人の方はブツブツと独り言をひたすら呟いていた。
私の両隣には息子達が入っている。
正妻の子は正妻に似てやはり当たり散らし、愛人の子はモノには当たらないもののやはり喚いていた。

全員が『どうして、何故、私達が、俺達が』ということを言っていた。

それは一番私が言いたい。

『何故』

そしてふと思い出す。

十七年前に正妻によって殺された最初のあの子供・・・・・・。
名前は何だったか・・・・・・。覚えていないが、アレが生きていたら、また何か違ったのだろうか?

あのとき私はその子を斬り捨てた。
あとが出来たから別にいいと、探そうともしなかった。

「・・・・・・そういえば、魔導師団の副師団長、ダスク公爵公子は養子だったな」

十七年前にドーン公爵の知人の遺児を養子にしたとか。
私は遠目でしか見たことはないが、髪に私と同じような橙色の髪が混じっていた。

時期的に合うし、愛人と似通った顔立ちをしてなくもない・・・・・・か?

───いや、有り得ないな。アレは髪は全部橙色だったし、そもそも死んだのだ。それに他人のそら似なんて結構あるだろう。


それよりも、今後の地獄に思いを馳せる。
私達の首には魔力制御を施した枷が嵌まっている。

これから一生、魔力を搾り取られながら、あの砦で魔物に怯える恐怖を抱えて生きるのだ。

それは今すぐ死んだ方がマシだと思うような生活に違いない。

それならばせめてここにいる間だけでも静かに眠りたい。

周りで騒ぐ家族だった者達の罵詈雑言を耳を塞いで追いやり、硬いマットに壁に向かって寝転び、私は目を瞑って無理矢理眠るのだった───。









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