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本編
15 口が悪いサクヤ
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あの後、散々泣いて愚痴をこぼした僕は、そのまま泣き疲れて寝てしまった。
有り得ない。
うんと小さいとき以来だ。恥ずかしい。
声を出して泣いたのなんて何年ぶりだろう。
スオウに出会ってから割と気持ちが弛んでる気がする。
・・・たぶん、気の置けない人になったんだと思う。
今までそんな人いなかったし、そもそも関わり合う人なんて邸の使用人と母と弟。
・・・・・・誰もいねえな。
前世含めて誰もいねえ・・・・・・。
あー、口調が悪いが、限界・・・。
俺、結構ぎりぎりだったんだな。
あのくらいで感傷的になって・・・・・・。
「っあー・・・、情けねぇ・・・」
「そんな事ないぜ」
目元を腕で隠して、思わずポロッと口に出た言葉に、返事が返ってきて驚く。
「・・・ぇ、は? ・・・・・・スオウ?」
腕を退かして目線を向けると、ベッドの脇に椅子に座ったスオウがいた。
気付かなかった。
何故か慈愛に満ちた顔をしている。
「・・・・・・いや、もう・・・はあ。ごめん。駄目だ、混乱してて、何を言えば・・・」
両手で顔を覆った。
「・・・悪いが、ちょっと言葉遣いおかしくなると思う」
「気にしないぜ? たまにおかしくなってるし?」
「・・・・・・そうだな。とりあえず、ありがとう。胸を貸してくれて。あと、ベッドに運んでくれたろう?」
「全然。役得だった」
ニカッと笑う。
・・・・・・そうなのか?
どこが?
「とりあえず、もう夕方だから、晩御飯食べような。昼抜いちゃったからお腹空いただろ?」
「ああ、そう言えば・・・・・・すっかり迷惑かけて」
「気にすんな! もう家族みたいなもんだろう?」
家族・・・・・・。
「か、ぞく」
呆然と呟く。
え、家族?
あんなゲスでクズな人を人とも思わないようなヤツらじゃなくて?
たった数時間しか過ごしてない俺に?
こんな、素敵な人達が・・・・・・?
家族みたいって・・・・・・。
「なにそれ嬉しすぎる!」
「ふはっ! 心の声全部ダダ漏れだぞ。お前って素はそっちか? 俺って言うのな」
「・・・えっ、いや、その・・・・・・あー・・・」
覚悟を決めるか。
「・・・・・・俺、前世の記憶があって、時々そっちの記憶に引き摺られるんだ。言動がおかしくなるのもそのせいで「うん。知ってる」・・・・・・へ?」
ビックリして変な声が出た。
「知って・・・?」
「ああ、うん。前に一緒のベッドで初めて寝たとき、お前、寝言言っててさ。何となくそうだろうなって」
「・・・・・・そっか」
気付いてて知らんぷりしてたんだ。
「あー、黙ってたのは、お前が自分から話すのを待ってたんだよ。俺を信用してくれたら話してくれるかなって。・・・誰だって秘密の一つや二つ持ってるだろ? それに、俺がお前の一番になりたかったから」
照れくさそうに苦笑してスオウが言った。
「話してくれて嬉しいよ」
「・・・うん。俺も、気の置けない人がスオウでよかった」
「・・・うん。まだその枠か・・・・・・。いや、サクヤはソッチは鈍いし天然だから、自覚すれば・・・」
難しい顔をしてブツブツ言うスオウ。
???顔の俺を見て、よし、と声を出して着替えを促した。
「支度が済んだら声をかけてくれ」
と、隣の自室に戻っていった。
姿見で自分を見ると、泣き腫らした目で髪は下ろしてくれたがボサボサ。着物も長襦袢を身に着けてるだけで、シワがよっている。
治癒魔法で腫れを直し、浄化魔法で髪や体の汚れを落とす。
サッパリはしたが、身支度を整える気力が、今はなかった。
「ーーーはあ。・・・各務、いる?」
「ここに」
音もなく現れた各務に驚くこともせず、仕方なさそうに告げる。
「悪いが身支度を頼む。着るものは任せるから、好きにしてくれ」
ぶっきらぼうに言うサクヤに驚くこともなくテキパキと襦袢を脱がせて新しい服を着付ける。
さっきのスオウとのやり取りを見ていたのは知っている。おそらくオクタヴィア家の者全員、すでに知っているのだろう。
「・・・夕飯の後に時間を取って貰えるか、リオネル父様に聞いておいて貰える?」
髪型までしっかり整えた各務にそう言えば。
「すでに了承を得ております」
「・・・そう。さすがだな。ありがとう」
そう言ったタイミングで、スオウが声をかけてくれた。
「終わった?」
「こっちから声をかけようとしてたのに」
苦笑して言った。
「・・・サクヤが笑ってる」
「・・・え?」
「だいぶ表情筋が解れたな! よかった」
そう言って屈託なく笑うスオウにつられて口角が上がった気がする。
「俺の表情筋、頑張れよ」
「他人事みたいに言うなよ」
二人して笑った。
少しは頑張って仕事してるようだ。
有り得ない。
うんと小さいとき以来だ。恥ずかしい。
声を出して泣いたのなんて何年ぶりだろう。
スオウに出会ってから割と気持ちが弛んでる気がする。
・・・たぶん、気の置けない人になったんだと思う。
今までそんな人いなかったし、そもそも関わり合う人なんて邸の使用人と母と弟。
・・・・・・誰もいねえな。
前世含めて誰もいねえ・・・・・・。
あー、口調が悪いが、限界・・・。
俺、結構ぎりぎりだったんだな。
あのくらいで感傷的になって・・・・・・。
「っあー・・・、情けねぇ・・・」
「そんな事ないぜ」
目元を腕で隠して、思わずポロッと口に出た言葉に、返事が返ってきて驚く。
「・・・ぇ、は? ・・・・・・スオウ?」
腕を退かして目線を向けると、ベッドの脇に椅子に座ったスオウがいた。
気付かなかった。
何故か慈愛に満ちた顔をしている。
「・・・・・・いや、もう・・・はあ。ごめん。駄目だ、混乱してて、何を言えば・・・」
両手で顔を覆った。
「・・・悪いが、ちょっと言葉遣いおかしくなると思う」
「気にしないぜ? たまにおかしくなってるし?」
「・・・・・・そうだな。とりあえず、ありがとう。胸を貸してくれて。あと、ベッドに運んでくれたろう?」
「全然。役得だった」
ニカッと笑う。
・・・・・・そうなのか?
どこが?
「とりあえず、もう夕方だから、晩御飯食べような。昼抜いちゃったからお腹空いただろ?」
「ああ、そう言えば・・・・・・すっかり迷惑かけて」
「気にすんな! もう家族みたいなもんだろう?」
家族・・・・・・。
「か、ぞく」
呆然と呟く。
え、家族?
あんなゲスでクズな人を人とも思わないようなヤツらじゃなくて?
たった数時間しか過ごしてない俺に?
こんな、素敵な人達が・・・・・・?
家族みたいって・・・・・・。
「なにそれ嬉しすぎる!」
「ふはっ! 心の声全部ダダ漏れだぞ。お前って素はそっちか? 俺って言うのな」
「・・・えっ、いや、その・・・・・・あー・・・」
覚悟を決めるか。
「・・・・・・俺、前世の記憶があって、時々そっちの記憶に引き摺られるんだ。言動がおかしくなるのもそのせいで「うん。知ってる」・・・・・・へ?」
ビックリして変な声が出た。
「知って・・・?」
「ああ、うん。前に一緒のベッドで初めて寝たとき、お前、寝言言っててさ。何となくそうだろうなって」
「・・・・・・そっか」
気付いてて知らんぷりしてたんだ。
「あー、黙ってたのは、お前が自分から話すのを待ってたんだよ。俺を信用してくれたら話してくれるかなって。・・・誰だって秘密の一つや二つ持ってるだろ? それに、俺がお前の一番になりたかったから」
照れくさそうに苦笑してスオウが言った。
「話してくれて嬉しいよ」
「・・・うん。俺も、気の置けない人がスオウでよかった」
「・・・うん。まだその枠か・・・・・・。いや、サクヤはソッチは鈍いし天然だから、自覚すれば・・・」
難しい顔をしてブツブツ言うスオウ。
???顔の俺を見て、よし、と声を出して着替えを促した。
「支度が済んだら声をかけてくれ」
と、隣の自室に戻っていった。
姿見で自分を見ると、泣き腫らした目で髪は下ろしてくれたがボサボサ。着物も長襦袢を身に着けてるだけで、シワがよっている。
治癒魔法で腫れを直し、浄化魔法で髪や体の汚れを落とす。
サッパリはしたが、身支度を整える気力が、今はなかった。
「ーーーはあ。・・・各務、いる?」
「ここに」
音もなく現れた各務に驚くこともせず、仕方なさそうに告げる。
「悪いが身支度を頼む。着るものは任せるから、好きにしてくれ」
ぶっきらぼうに言うサクヤに驚くこともなくテキパキと襦袢を脱がせて新しい服を着付ける。
さっきのスオウとのやり取りを見ていたのは知っている。おそらくオクタヴィア家の者全員、すでに知っているのだろう。
「・・・夕飯の後に時間を取って貰えるか、リオネル父様に聞いておいて貰える?」
髪型までしっかり整えた各務にそう言えば。
「すでに了承を得ております」
「・・・そう。さすがだな。ありがとう」
そう言ったタイミングで、スオウが声をかけてくれた。
「終わった?」
「こっちから声をかけようとしてたのに」
苦笑して言った。
「・・・サクヤが笑ってる」
「・・・え?」
「だいぶ表情筋が解れたな! よかった」
そう言って屈託なく笑うスオウにつられて口角が上がった気がする。
「俺の表情筋、頑張れよ」
「他人事みたいに言うなよ」
二人して笑った。
少しは頑張って仕事してるようだ。
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