月の至高体験

エウラ

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本編

3 学園生活の始まり

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煩い陽希の視線を無視してクラスへと向かう。

この学園は主に貴族が通っているが、平民でも成績優秀者なら学園側で授業料を免除して、尚かつ支度金として毎月それなりのお金も支給される。
まあ、卒業後に王宮勤めが約束されるが。
それでも食いっぱぐれはなくなるので、お互いWinーWin。

学園は男女に分かれていて、たとえ学園内でも交流はないそうだ。
まあ、万が一が起こったら大変だしね。

僕のクラスはSクラスでトップの成績優秀者が20名入っている。
次にAクラス、Bクラス、Cクラスとなる。
A、Bも各20名でCは30名。合計で90名が今年度の入学者だ。

席順だと、陽希はCクラスだな。
そもそも、合格だった事に驚いた。権力とお金でどうにかした感が否めない。

離れててよかった。四六時中一緒とか死ねる。
確か寮も違ってたな。よきよき。

Sクラスに着いた。
スオウと雑談をしながら来たので楽しかった。
「ありがとう。こんなに気さくに僕と話してくれたのは君が人生で初めてだ。生きててよかった」
思わずぽろりと溢れた言葉に、ハッとして口を抑える。
スオウは目を瞠った後、にっこり笑った。
「これっきりみたいな言い方だな。これからもずっと一緒に過ごすんだぜ? 気楽に行こう。もう友達だろ?」
「・・・・・・え、友達」
「ん?」
「人生初の、友達・・・」

じわじわと顔が赤くなっている気がする。
え?
本当に?
友達になってくれるの?

「大丈夫か? 真っ赤だけど」
コクコク頷く。
きっと涙目だ。
そっと下からスオウを覗くと、ゴクッと喉がなった音がした。

(ヤベえ)

ぽそっと何か聞こえた気がするが、とにかく。
「お友達になって下さい」
振り絞った声は震えていた。

「おう! よろしくな!」

僕の新しい学園生活が始まった。



今日はクラスで自己紹介をして、明日以降の連絡をしたら解散で、各自好きにしていいらしい。


担任はミスト先生という男の先生だった。26歳って言ってた。若いのに優秀な先生なんだなあ。

一通りの連絡をして、じゃあまた明日と去って行った。

書類を片付けていると、スオウが声をかけてきた。
「この後一旦寮まで戻ってから学食でお昼を食べようぜ」
「うん。そうする。ありがとう」
相変わらず表情筋が仕事をしないが、声は弾んでるはず・・・。

教室を出たところで取り巻きを連れた陽希にばったり会った。というか、待ち伏せてた?

「ねえ、朔夜。何で新入生代表なんかになってんの? おかしいよね? ずるしたんじゃないの?!」
「してねえよ」
おっと、心の声がダダ漏れした。口を抑える。
ヤバい。
陽希は一瞬ポカンとし、スオウはお腹を抱えて声を出さずに笑ってる。器用だね?

「不正はしてない。そういうクレームは学園に入れてくれ。暇じゃないので失礼」

スオウの腕を掴んでさっさと寮へ向かった。



寮の入り口まで来て、腕を離した。

「いつまで笑ってる」
「・・・っ悪い! だって、あんな『してねえよ』って言って・・・よもやサクヤの口から出るとは・・・似合わねえ!」

まだ立ち直れないスオウ。転げ回りそう。

・・・もうほっといて部屋へ行こうかな。

どうやら僕も新生活に浮かれてたようだ。
気が弛んでる。うっかり『前世』の言葉遣いが出た。

気を付けなくちゃ。

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