497 / 533
489 手がかり
しおりを挟む
それからは黙々と鑑定作業に没頭した。
今回押収した物品は、錬金術師ギルドと薬師ギルド両方からなので量も多く種類も多岐にわたる。
俺はまずまとめて貰った薬草類の鑑定を行った。俺が知っている素材が大半だったので鑑定自体はサクサク進んだ。
案の定、特に不審な効能は見受けられない。
薬草類にはこれといった効能のモノは見つけられなかったが、しばらく鑑定を続けていると怪しいモノが引っかかった。
「・・・・・・このキノコ・・・・・・」
そのキノコは乾燥されたモノと生の状態のモノがあり、それぞれの鑑定結果に大きな違いがみられた。
名前は『シメピ』。
大きさはカサが直径一センチメートルで丈は五センチメートルほどの小さく地味なキノコ。乾燥させたモノはもっと縮んで見失いそうになるほどの細さだった。
生でも乾燥させても食用に向かない。香りはいいが苦みの強いキノコで、成分も主に虫下しや下剤に使われるモノだ。
俺もそういった調薬に必要なモノだからと採取してたくさんインベントリに入れているが、俺のモノは生と乾燥後の成分に違いはなかった。多少凝縮されたくらいだ。
それがごく一般的なシメピなんだけど。
「・・・・・・これも古の森に生えてたシメピなのかな?」
もしかしたらあの森の濃い魔力で突然変異した亜種なのかも。
乾燥前は俺の持つシメピと同じなのに、乾燥の工程で変化するのか元からそういう要素があったのか分からないが、乾燥後はどうにも変わった効能が現れていた。
「アーク、ちょっといい?」
「ん? どうした、ノア。何かあったか?」
アークに声をかけると作業を中断して来てくれたので簡単に事情を説明する。
「───という訳で、押収した中の鉱石類を最優先で鑑定して貰っていい?」
「分かった。その中にあるだろうソレを見つければいいんだな?」
「うん。おそらくこのキノコとあわせるとアレが出来る」
「・・・・・・なるほど? ソレは証拠に成り得るな。ヨシ、早速取りかかろう」
大量にあったこの乾燥シメピの中には俺の持つシメピと同じモノもあった。ただ、騎士団が押収したときに混じったのか、それともワザと混ぜて誤魔化そうとしたのかの判別が俺には出来ない。
なので、この鑑定を元に実験をして仮説が確定になったらティンバー団長に任せよう、そうしよう。
今アークに探して貰っているのは『イエローアパタイト』と呼ばれる輝石にあたる鉱石。
普通に貴金属として取り引きされる宝石だが、実はあまり一般には知られていないが、良い意味でも悪い意味でも俺達のような錬金術師にはいわく付きの鉱石だ。
この鉱石には『誘惑』という石言葉があり、普通の人には『誘惑』されるくらい素晴らしい輝石という意味にとられるが、実際、この鉱石には周りを誘惑し魅了する効果が大なり小なり付いているのだ。
もちろん魅了魔法のようなあからさまな効果はない。若干、惹きつけられるような気持ちになるというくらいだ。
だがさっきの乾燥シメピなどを組み合わせて錬成するとアレになるという鑑定結果が出たんだ。
アレ───つまりエレンが使っていた、あの香水のことだ。
今回の捕縛はそれを罪状にしているそうだから、証拠が出ないと長期の拘留は難しいらしい。
俺が自白剤を作って飲ませれば手っ取り早くていいんじゃない? と言ったら『それは最終手段で』って言われたからやらないけど。
作ったことないけど、たぶん後遺症とかなしでイケると思うんだけどな。
試してみない? って提案してみたけどオウランに速攻で却下された。
『世に出してはいけない薬になるから駄目だ』ってアークにも言われたから止めておこう。
それはともかく。
「押収した書類などにもレシピが残っていないなら、ヴァンが一番臭いと言ったその偉いヤツが頭で覚えているだけなのかも」
証拠を残さないために用意周到なヤツなのかもしれない。
「メーレに盛った毒の元のレシピもすでに破棄されたようで残ってないらしいし。頭に残せるくらいには賢いってことだよね」
その頭を違うことに使えばよかったのにね。
「まあ、何にせよ、俺は材料を揃えて本当にあの香水が出来るか試作するだけだね。ふふふ、楽しみ」
「・・・・・・何かノアが含み笑いをしてるが、アレは絶対、何かやらかすな・・・・・・」
『・・・・・・ノアのヤツ、心の声が漏れてるぞ。思いっきり楽しみにしてるだろう』
アークのジト目と呆れた声、それとヴァンのぼやきが聞こえたが、俺は鑑定作業に没頭しているように装い、聞こえないふりをした。
だって、新しい実験って楽しいよね!
※イエローアパタイトは石言葉に実際にあるらしいですが、こちらはフィクションなので実物を怖がったり嫌わないで下さいね。
参考にしただけですので。
そしてシメピももじっただけです。
あと、ノアは別にマッドサイエンティストではありません。
実験って楽しいよね? 出来たら試したいよね? ってくらいの気持ちです(いやそれがマッド・・・・・・?)。
今回押収した物品は、錬金術師ギルドと薬師ギルド両方からなので量も多く種類も多岐にわたる。
俺はまずまとめて貰った薬草類の鑑定を行った。俺が知っている素材が大半だったので鑑定自体はサクサク進んだ。
案の定、特に不審な効能は見受けられない。
薬草類にはこれといった効能のモノは見つけられなかったが、しばらく鑑定を続けていると怪しいモノが引っかかった。
「・・・・・・このキノコ・・・・・・」
そのキノコは乾燥されたモノと生の状態のモノがあり、それぞれの鑑定結果に大きな違いがみられた。
名前は『シメピ』。
大きさはカサが直径一センチメートルで丈は五センチメートルほどの小さく地味なキノコ。乾燥させたモノはもっと縮んで見失いそうになるほどの細さだった。
生でも乾燥させても食用に向かない。香りはいいが苦みの強いキノコで、成分も主に虫下しや下剤に使われるモノだ。
俺もそういった調薬に必要なモノだからと採取してたくさんインベントリに入れているが、俺のモノは生と乾燥後の成分に違いはなかった。多少凝縮されたくらいだ。
それがごく一般的なシメピなんだけど。
「・・・・・・これも古の森に生えてたシメピなのかな?」
もしかしたらあの森の濃い魔力で突然変異した亜種なのかも。
乾燥前は俺の持つシメピと同じなのに、乾燥の工程で変化するのか元からそういう要素があったのか分からないが、乾燥後はどうにも変わった効能が現れていた。
「アーク、ちょっといい?」
「ん? どうした、ノア。何かあったか?」
アークに声をかけると作業を中断して来てくれたので簡単に事情を説明する。
「───という訳で、押収した中の鉱石類を最優先で鑑定して貰っていい?」
「分かった。その中にあるだろうソレを見つければいいんだな?」
「うん。おそらくこのキノコとあわせるとアレが出来る」
「・・・・・・なるほど? ソレは証拠に成り得るな。ヨシ、早速取りかかろう」
大量にあったこの乾燥シメピの中には俺の持つシメピと同じモノもあった。ただ、騎士団が押収したときに混じったのか、それともワザと混ぜて誤魔化そうとしたのかの判別が俺には出来ない。
なので、この鑑定を元に実験をして仮説が確定になったらティンバー団長に任せよう、そうしよう。
今アークに探して貰っているのは『イエローアパタイト』と呼ばれる輝石にあたる鉱石。
普通に貴金属として取り引きされる宝石だが、実はあまり一般には知られていないが、良い意味でも悪い意味でも俺達のような錬金術師にはいわく付きの鉱石だ。
この鉱石には『誘惑』という石言葉があり、普通の人には『誘惑』されるくらい素晴らしい輝石という意味にとられるが、実際、この鉱石には周りを誘惑し魅了する効果が大なり小なり付いているのだ。
もちろん魅了魔法のようなあからさまな効果はない。若干、惹きつけられるような気持ちになるというくらいだ。
だがさっきの乾燥シメピなどを組み合わせて錬成するとアレになるという鑑定結果が出たんだ。
アレ───つまりエレンが使っていた、あの香水のことだ。
今回の捕縛はそれを罪状にしているそうだから、証拠が出ないと長期の拘留は難しいらしい。
俺が自白剤を作って飲ませれば手っ取り早くていいんじゃない? と言ったら『それは最終手段で』って言われたからやらないけど。
作ったことないけど、たぶん後遺症とかなしでイケると思うんだけどな。
試してみない? って提案してみたけどオウランに速攻で却下された。
『世に出してはいけない薬になるから駄目だ』ってアークにも言われたから止めておこう。
それはともかく。
「押収した書類などにもレシピが残っていないなら、ヴァンが一番臭いと言ったその偉いヤツが頭で覚えているだけなのかも」
証拠を残さないために用意周到なヤツなのかもしれない。
「メーレに盛った毒の元のレシピもすでに破棄されたようで残ってないらしいし。頭に残せるくらいには賢いってことだよね」
その頭を違うことに使えばよかったのにね。
「まあ、何にせよ、俺は材料を揃えて本当にあの香水が出来るか試作するだけだね。ふふふ、楽しみ」
「・・・・・・何かノアが含み笑いをしてるが、アレは絶対、何かやらかすな・・・・・・」
『・・・・・・ノアのヤツ、心の声が漏れてるぞ。思いっきり楽しみにしてるだろう』
アークのジト目と呆れた声、それとヴァンのぼやきが聞こえたが、俺は鑑定作業に没頭しているように装い、聞こえないふりをした。
だって、新しい実験って楽しいよね!
※イエローアパタイトは石言葉に実際にあるらしいですが、こちらはフィクションなので実物を怖がったり嫌わないで下さいね。
参考にしただけですので。
そしてシメピももじっただけです。
あと、ノアは別にマッドサイエンティストではありません。
実験って楽しいよね? 出来たら試したいよね? ってくらいの気持ちです(いやそれがマッド・・・・・・?)。
1,056
お気に入りに追加
7,359
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる