迷い子の月下美人

エウラ

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475 カガシ、捕獲される 1

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気を取り直して冒険者ギルドに向かったカガシ。
つい先程チャリオンを預けに訪れたばかりだったせいか、足を踏み入れた瞬間に一斉に見られたがすぐに視線を外された。

しかしそんなことも気にせず、真っ先に受付にいるチャリオンに向かって進むカガシ。

「───あわわっ・・・・・・いいいいらっしゃいませ!? アレ? さっき振り?」
「・・・・・・テンパり過ぎ、チャリオン」
「可愛いねぇ」

ギルド職員として対応すれば良いのか嫁として接すれば良いのか混乱して焦るチャリオンに、アガットは呆れてベアドはほんわかした。
周りも微笑ましく見ている。

そんな中、スタスタと目の前にやって来たカガシはチャリオンの頬を両手で挟むと、屈んでチャリオンのおでこにチュウをした。
そして呟く。

「・・・・・・ああ、癒し」
「へ? は? ほえっ!?」

チャリオンは事態が飲み込めず、周りは顔を赤くしたりヒューヒューと囃したりザワついた。

「あー、うん。ギルマスいるかな? 用があるんだけど・・・・・・」

赤くなって困っているチャリオンにクスリと笑ってからそう尋ねると、チャリオンの代わりにアガットが応えた。

「いますよ、執務室に。ご案内しましょうか?」

ニヤリと笑ってそう言うアガット。
そういえばこの職員、休日に出かけた時、次の日の休暇申請を頼んだ同僚だったな、とカガシは思った。

「いや大丈夫。ソレよりもつまを頼むよ。アガット先輩?」

カガシがそう言うと、アガットは虚を突かれた顔をしたあと、破顔した。

「おっちょこちょいな後輩ですが、良いヤツです。末永くよろしくお願いしますよ」
「うん、死んでも離さないから安心して」
「───っ! カガシってば!」

アガットとのそんなやり取りを見てチャリオンが恥ずかしくて叫び、更に囃し立てられる中を一人のんびり執務室に向かうカガシだった。


───さて、ギルマスの執務室にて。

ギルマスのシィオンとサブギルマスのアルディーヤを前にカガシがヴァルハラ大公家からの手紙を差しだした。

「先程コレを拝見致しました。そこには窓口が冒険者ギルドマスターのシィオン殿だと書かれていたのですが」

カガシがそう言うと、事前に知らされていたのか、驚きもせずに頷いたギルマス。

「ああ聞いている。ヴァルハラ大公家から頼まれているから問題ない」
「・・・・・・何故、とお窺いしても?」

カガシが緊張気味に尋ねると、少し間があってから応えがあった。

「長くなるので割愛するが、ヴァルハラ大公家のアルカンシエル殿とその番いのノア殿が関係していてね。その縁でヴァルハラ大公家や竜王国の騎士団とも繋がりがあるんだ」

なんでもない様にそう言うギルマスにさすがのカガシも一瞬、意識が飛んだ。

───は?
大公家はともかく、何でそこで竜王国の騎士団も出て来るんだ?!
ヤバくないか?!
そう思ったカガシは保身のためにも深く追及する事を辞めた。

「・・・・・・いや、もう結構です。これ以上の情報はいらないです」
「そうしてくれ。俺等も公言出来ないんだ。悪いな」

お互い、溜息のあと苦笑してその話を流したのだった。

「さて、ここに来たという事は、招喚を受けるという事で良いのかな?」
「そうとって頂いて構いません。ソレはもう腹を決めたので良いんです。ただチャリオンと離れたくないのですが・・・・・・」

カガシはソレだけが気がかりだった。
やっと番えた愛しいつまを置いてなどいけないし、いきたくは無い。
だがどうなるか先の読めないこの身にチャリオンを付き合わせて良いのか。
こんなことになるならば番わなければ良かったとさえ思うほどには迷ったが。

「相手はですからね。我らにとっては敬愛と畏怖すべき種族ですから・・・・・・お断りは出来ません」
「まあ、確かになあ。だがヴァルハラ大公家は例え断っても文句は言わないだろう。・・・・・・ただ確実に外堀埋められて囲われるだろうが」
「・・・・・・いやいや、そんな寛大な貴族なんています? いないでしょう? ていうか結局囲われるんですか?」

───断るって言葉の意味分かってます?
端から捕獲する気満々じゃないですか。

「・・・・・・自分から囲われに来たんですから、チャリオンとの事は最大限譲歩して欲しいんですけど」

カガシは半ば投げやりにそう言った。

「───ですってよ、閣下」
「もちろん。来て貰えるなら君の望み通りに最大限譲歩しよう」
「・・・・・・は?」

ギルマスがカガシの方を見たままそう言ったと思ったら、不意に執務室に影が揺らめいてそこにいるはずの無い人物がギルマスの後ろに姿を現して声を発した。

「・・・・・・は?」

もう一度そう言ってからカガシは何とか頭をフル稼働させる。

「やあ、初めまして。やっと会えたね、カガシ君」
「・・・・・・ヴァルハラ大公閣下・・・・・・?」

回った頭が何とか紡ぎ出した名前だった。
そこには竜王国にいるはずのヴァルハラ大公家当主ウラノスが、のほほんと立っていたのだった。





※ノアの為に自ら来ちゃった。
今日はネコの日。でも閑話とか書いてる暇がない。しくしく・・・。



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