迷い子の月下美人

エウラ

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461 影達の暗躍とかノアズアーク隊とか 1(side影達)

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※もう少し続きますと言いつつ今回メインは影達になります。悪しからず。



「---それで? だから話す気になったって?」

竜王国のリュカリオン王子の影であるランが冷たい表情で見下ろす先には、王宮専属薬師の副薬師長ペルルがいた。
---いや、すでに副薬師長の職を辞しているためが頭に付くが。

ここは獣人国の王城敷地内にある騎士棟の地下牢。
先日、ヴァルハラ大公家経由でアルカンシエル殿から影達に連絡があり、メーレ王妃の意識がハッキリ戻りに倒れる直前の話を本人から窺った、というのだ。
そこから密かに副薬師長ペルルの身柄を拘束した影達は今、その地下牢でペルルの尋問をしているところだった。

実は影達も副薬師長の事は調べていて容疑者の一人と分かってはいたのだが、黒幕の手の者が優秀なのか決め手となる証拠が出て来なかったため手を出せずにいたのだ。
さすがに『疑わしきは罰せよ』とはいかないものなので。
・・・・・・まあ、ランだけはそんなことはお構いなしに確保しようと動いて、他の三人に慌てて止められたという裏事情もあったが。

そのランは今、冷めた目でペルルを見下ろしていた。

「・・・・・・とても大変なことをしたと、日に日に窶れていく王妃殿下を見るのが辛くて。私は、一人でも多くの人を助けるために薬師になったのに」

そう言うペルルは俯いて、膝の上に置かれた両手の拳をぎゅっと力いっぱい握り締めて震えていた。
確かに良心はあったのだろう。
流されて悪事に加担し、今は良心の呵責に苦しんでいる。

---だが・・・・・・。

「結局は自分の欲望に負けて、自分で選んだんじゃん。本当にやりたくなかったなら自分がどんな目にあっても断るか、相手に苦言を呈するか。・・・・・・やろうと思えば出来たよね?」
「---そ、それは・・・・・・」
「何処かに甘えがあったんでしょ? 逃げ道を作ったんでしょ? 『コレだけ』で済むなら良いかって。違う?」
「・・・・・・」

ランが痛いところを突いたようで、ペルルは何も言い返せなかった。

---確かにペルルは『コレだけ』で終わり、と言われてホッとしていたのも事実だ。
あとは実際、関わっていないのだから。
良心の呵責と言ったって、結局は自分が少しでも楽になりたいから自白したようなモノだ。

ペルルはメーレ王妃が寝込んだ後、二週間ほどで自ら副薬師長の座をおりた。
日に日にメーレ王妃の具合が悪くなり、薬も効かず、その責が自分にあると思うととうとう心が堪えられなくなった。

結局はソレを理由に、後ろ暗いことをしてまで得た王宮専属副薬師長はおろか、王宮専属薬師さえも辞めてしまった。
そして静養と称して領地に戻り、日がな一日をメーレ王妃の回復のためにただただ祈っていたのだ。

そんなところへ先触れも無く現れたラン達に、疲れ果てていたペルルは全てを悟って、抵抗もせず大人しく同行したのだった。

そして錬金術師ギルドマスターのロキとの事を洗いざらい自白したというわけである。

「だいたいさあ、そんなに後悔するくらいなら最初っからやんなきゃ良いんじゃん」
「---いやお前、ソレが出来たら今こうなって無いだろう」

ランの独壇場だったが、一緒に聞いていた大公家の影のサンが思わずツッコミを入れた。
獣人国の影であるセロとディアスも小さく頷く。
それに若干ムッとするランだったが、無表情のまま大袈裟に溜息を吐いた。

「---まあ良いよ。王宮内は僕達で掃除するから。がやってくれるんだよね? 大丈夫かな?」
「問題ない」

ランの言葉にサンが応えた。

は王都の錬金術師ギルドの事では言わずもがな『ノアズアーク隊』の事だ。
それもサンが即座に応える。
セロとディアスも、最初は困惑していたが『ノアズアーク隊』の行動力や情報網には脱帽してすっかり頼りにしていた。

奈落に落ちたように静かなペルルを一瞥してラン達は地下牢をあとにする。

重たい扉を閉める瞬間、ランが振り向いて無邪気に笑って言った。

「あとでノア殿に死んだ方がマシってくらいられてしまえ」

ソレを見たペルルは、顔を真っ青にして震えた。

「フン、いい気味」
「・・・・・・意地が悪い」
「これくらい良いだろ?」
「「・・・・・・」」

任務以外で笑わないランの笑顔にサン達は背筋をゾッとさせながら地上に戻るのだった。




※次話、ノアズアーク隊のターンの予定。
















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