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450 その頃の獅子王
しおりを挟む獣人国の王太子リオラルが竜王国との対談で叫び声を上げていた頃、この国の王であるレナードは一人自室のソファで項垂れていた。
先日、竜王国との対談の後、侵入者によってメーレ王妃が攫われた。
その侵入者は薬師マイスターで錬金術師で冒険者Sランクのノアだったのだが。
ヴァルハラ大公家のアルカンシエルも一緒に来て封蝋付きの手紙を置いていったため、大事にはならなかったのだが・・・・・・。
王妃のいない寝室を目の当たりにしたレナード王が暴走し、結果、精霊王の改良した魔性植物の蔓の檻に閉じ込められて魔力等を適度に吸い上げられて弱体化された。
もちろん吸収した魔力によって蕾を付け、花が咲き終わると魔石の実になり再利用できる。
怒り狂ったレナード王は、さすが腐っても王様。
魔力量も多かったので何十個と立派な魔石を生み出していた。
本人が正気に戻り魔力もかなり吸収され大人しくなったところで蔓は引っ込んだが、精霊王が《何度でも使える》と言ったとおり、完全に消えたわけでは無かった。
レナード王の私室内部の扉の前に立つ護衛騎士二人は、ソファで項垂れている王の頭頂部をチラチラと見ながら、何とも言えずに顔を見合わせて苦笑した。
「・・・・・・アレ、気になるな」
「だよね」
二人の視線の先には獅子王レナードの旋毛辺りに鎮座する魔性植物の花が見えた。
---そう。発芽して蔓を出していたその植物は、蔓を縮めたあと消えることなくレナード王の頭の旋毛辺りに自生して蕾を付けているのだった。
檻にはならないが時折魔力を吸収するのか、花が咲いて暫くすると魔石の実が膨らみ、落果する・・・・・・ということを未だに繰り返していたのだった。
その様子は護衛騎士達に何度も見られており、レナード王は威厳も覇気も何も無い、普通のおじさんのようで護衛騎士達は気まずそうだった。
「---はあ。俺は、なんて役立たずなんだ」
誰に言うとも無く一人ぽそっと呟く背中には哀愁が漂っている。
十年は老けたようなレナード王に、護衛騎士の一人は思わず声をかけた。
「陛下、あんまり気を落とさないで下さい。王太子殿下がどうにかしてくれるでしょう?」
「・・・・・・うん」
「陛下は王妃殿下がお戻りになられたときに胸を張れるような行いをなさればよろしいのでは?」
「---そう、か。そうだな」
たかが護衛の分際で意見を述べることは普通は出来ないししないのだが、あまりにも萎れていて見るに堪えない状態だったので。
しかしその甲斐あってか、幾分かヤル気を出したような気がする。
「・・・・・・ヨシ、とりあえずリオラルが頑張ってくれてるから、そうだな・・・・・・俺の影達もリオラルの手伝いに回すか。そうすれば情報も得られやすいだろう」
そう言いながら部屋の天井に潜む王家の影のリーダーらしき者にボソボソと話しかけているレナード王。
その後幾分か気持ちが浮上したらしいレナード王は最近あまり口にしなかった食事を用意させて、部屋で黙々と食べた。
「---リオラル達が頑張ってくれているんだから、俺も踏ん張らないとな・・・・・・」
そう言いながら、光の戻ってきた瞳で遠くを見据えていた。
護衛騎士達は獅子王の威厳を少し取り戻しつつある王に安堵するのであった。
※短いですが、こんな感じで。
この間からどうにも頭に花を咲かせてしょんもりする獅子王が頭から離れなくてですね・・・。この話を入れたくなりました。
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