迷い子の月下美人

エウラ

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443 クルール借りーる

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魔人国でのウロボロスとのやり取りからまた暫く経った頃、農場での収穫作業中に今度はアークからギギルル兄弟に通信が入った。

『よう、久しぶりだな。忙しいところ悪いな』
「いや、ノアのおかげでずいぶん楽させて貰ってるから平気だよ。ソレよりも珍しいね、どうしたの?」

たまたま通信の対応をしたルルが手を休めて話を聞く。

『---うん、まあ・・・ちょっとワケありで今、古の森に籠もってるんだが・・・』
「え? 何でまた・・・。あ、お兄も呼ぶからちょっと待って。---おーい、お兄! アークから連絡!」
「おう、ちょっと待て! 悪い、ちょっと抜けるな」

従業員にそう言いながらルルの元に駆け寄るギギ。

「おう、久しぶり。・・・なんだ、ココじゃ言い辛い話? んじゃ、部屋に行くか。防音もしっかり出来るし」
『悪い、頼むわ。詳しい事はソコで。取りあえずクルールから一人二人借りたいんだが・・・』
「ソレは別に問題ないが・・・っと、今、部屋に入って防音魔法使うから待ってくれ」

話ながら歩いて部屋に着いたので、アークに断って魔法を張った。

「ヨシ、良いぜ。で? どうしたんだ?」
『・・・実は、知ってるかもしれないが、獣人国の王妃が病気になってな』

ソレを聞いて、二人はこの前のポーション関連かとピンときた。

「・・・あー、アレか。一応知ってる。実はノアの錬成したポーションが欲しいって言われて。アインの街の冒険者ギルドのギルマス・・・ウロボロスの話はしたろう? アイツから少し前に連絡貰ってな」
「悪い。勝手だったけど、俺等の手持ちのポーション譲ったんだよ。実は新しい領主がその王妃様の息子なんだって聞いてさ」

ギギとルルがその時の話をアークに告げる。
気を悪くするかと思いきや、アークはケロッとしたものだった。

『ああうん、お前達のモノになった時点でどうしようと構わないから、ソレはいいんだが。そうか・・・アソコの新しい領主、王妃の息子か。じゃあ、一応、王妃は古の森で静養中って連絡しておいてくれるか? 色々あってノアがぷっつんしてさあ、最近王妃を攫ったんだよ。でもそのおかげで命は無事で、ノアが今介護してるって』

ソレを聞いた二人は呆れた顔でお互い見合った。

「・・・・・・何をどうしてどうなって攫ったんだよ。めちゃくちゃ気になんだろうが。・・・でもまあ、分かった。ウロボロスから伝えるように話しておくわ。・・・で? 用事は?」
『ああ。ソレでノアがほぼ一人で介護してるからさすがに無理して体調がな・・・。で一応一人、いや二人?雇ったんだが、補助要員でクルールからも数人、借りたいと思って』
「ソレでさっきの話ね。確かにちんまいけどチートだから役には立つよね」

色々と気付けば手の足りないところを補ってくれるし、魔法も的確に使うし。

「「何よりだよな」」
『ソレも確かにある』

ギギルル兄弟の言葉にアークも賛同して笑った。

「何時来る? あと、誰を連れて行く?」
『今から精霊王に転移して貰うから、行ってから選ぶ。あ、ソッチで必要だってヤツは抜くから心配すんな。じゃあ、えーと、5分後に行くから頼むな』
「りょーかい」
「じゃあ5分後に」

そう言って通信は切れた。

「どれ、親父に声かけて、クルールアイツら集めて・・・うわ、結構時間厳しい。忙しい」
「親父ー!! ちょっとクルール呼んできてー!!」
「あーん? 何だってぇ?!」

遠くにいるゾアに声をかければ疑問形で返ってきた。

「あ、ダメだ。聞こえてない。俺等で呼んでこよう!」
「急がないとアーク来ちゃうよ!」

ワタワタとクルールを集めているウチにあっと言う間にやって来たアークが、相変わらず賑やかだと笑うのはすぐのこと。

「あ、そうだ。ココの果実や野菜も少し売ってくれ。王妃に擦り下ろしたり柔らかく煮て食べさせてやろう。上手いからなあ、ココの食物」
「おう、幾らでも持ってけ!」

ノアに良い手土産が出来たとほくほくのアークと、よだれが出そうな顔の精霊王に大笑いのギギ達は、アークが選んだ猫獣人ゴーレムと一緒にジェラートをたんまり詰めたマジックバッグを持たせて精霊王を喜ばせたのだった。

「何かあれば遠慮なく頼れよ、アーク」
「ああ、助かる。またな」
《邪魔をしたの。食べ物、ありがとうな》
「何時でもどうぞー」
「今度はノアも一緒に来られるといいな」
「ああ。その時はまた世話になる」
「ノアにヨロシク」

そう言って別れた。

「いやあ、忙しなかった」
「一息吐いたら、ウロボロスに連絡してやろうよ」
「だな。・・・・・・一国の王妃様を誘拐って、獣人国の王様、大丈夫なんか?」
「息子だっていう新領主のフィフス王子・・・気が気じゃ無いんじゃないの?」
「あの人達も振り回されて大変だよなあ」
「ホント。ご愁傷様・・・」

ギギ達の声は陽気な魔人国の空気に解けて消えていった。





※さて、クルールは誰を連れて行ったんでしょうね?

久しぶりに両手の蕁麻疹でかゆかゆな上に右目のものもらいでオイワさん状態・・・Oh・・・。
皆様も御自愛下さい。ノアのポーション、欲しい・・・。





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