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438 メーレ王妃誘拐の裏側 2(sideアーク&エレフ&ヴァン)
しおりを挟むメーレ王妃を攫ったその足で、ノアとアークはエレフに獣人国の王都の冒険者ギルドに転移して貰った。
ノアは王妃をシーツで包むと片腕で抱え上げ、アークに目配せをして頷くとエレフに告げた。
「エレフ、ヴァンのところにお願い」
《心得た》
そう一言言ってあっと言う間に転移してしまう。
そしてパッと現れたのは食堂兼酒場で仔狼サイズで寛いでいたヴァンの前。
周りには少なくない数の冒険者達が集まっていて、ギルド職員達も大勢いる。
そんな中、ノアは王妃を片腕抱っこしたまま、もう片方の手でヴァンの顔を鷲掴み。
心なしかギリギリと力が籠もっている気がする。
よく見ればノアの瞳の瞳孔が縦に割れている。
そしてヴァンを鷲掴みしている手の指も爪が鋭い。
ノアがお怒りのためか珍しく竜化していたようだ。
「ヴァン? 俺の言いたいこと分かるよね?」
『うぐっ・・・ノア、す、すまん』
クーンと力無く四肢を垂らしてぶら下がった状態のヴァンを見た周りの冒険者や職員達はノアの圧に戦々恐々。
辛うじてギルマスとサブギルマスがアークに小声で対応していた。
「あの、お初にお目にかかります。ギルマスのシィオンとサブギルマスのアルディーヤと申します。アルカンシエル殿・・・実はヴァン殿から『ノアズアーク隊』に密命を受けてまして。ただいま調査中の事案が・・・」
「ヴァンから? もしかして王妃の件か。じゃあ、竜王国の王都の冒険者ギルドの『ノアズアーク隊』に連絡をしてくれ。俺達に情報が逐一入るようにしておく」
ノアとヴァンの様子を見ながらギルマスにそう告げるアーク。
確かにその状態でヴァンを連れ帰るとギルド側が困るだろう。
ホッとした様子のギルマスがふと気になっていた事を聞いてきた。
「畏まりました。・・・・・・あの、ところでノア殿が抱えている方って・・・もしかして・・・」
「メーレ王妃だ。つい今しがた攫ってきた。悪いがコレからたぶん煩くなるから、もう行くな」
「ギルマス達、お邪魔しました。ヴァンは引き取りますね。では」
『・・・世話になった・・・』
《邪魔したの》
精霊王の声を最後にパッと転移して消えた4人と一頭に、再びギョッとする冒険者ギルド内。
「---ノア様の抱き上げてた人、王妃様って言ってた?」
「確か今、病気で具合が悪いって・・・?」
「・・・・・・攫ってきたって言ってたよ・・・・・・?」
「・・・・・・しーらなーい!!」
冒険者や職員達は首をブンブン振って、何も見なかったと主張するのだった。
ソレから間もなく、アークの言ったとおりに王城の騎士達がやって来て王妃の行方、というかノア達の行方を聞きにきたが、ギルマスがうまくあしらって、こちらに咎は及ばなかった。
---もっとも、あの方々を止められる人物がいるなら教えて貰いたいモノだが。
そうして古の森に連れ帰られたヴァンは、ノアにイッヌ小屋でのステイと飯抜きの刑を言い渡されてしょげかえるのだった。
・・・腕輪のマジックバッグ?
そんなの、制作者であるノアに使用を差し止められたに決まっている。
一定期間、使用不可にされて一日二回、野菜盛り合わせの食事だけだったそうだ。
しかしソコはヴァンの毒の回収という功績が認められて、毒の元となる薬草を古の森の中、ひたすら鼻を頼りに探し回るという役目を貰い、一日頑張れば夕御飯は肉入りご飯になった。
俄然張り切るヴァンに、アークはチョロいなと苦笑した。
ノアは意外と飴と鞭の使い方が上手い。
掌で転がされている感のフェンリルにエレフも笑ったが、いや貴方もブーメランだよと、アークが内心で笑っていた。
「立ってるモノは親でも使えって言うよね?」
ノアはにこりと笑った。
---ソレはそうなんだが・・・。
実際、養父母のエレフは親であってるというか・・・。
でもヴァンは単なる駄犬では・・・?
「・・・・・・ま、いっか。お互いwin-winならば」
ノアもエレフもヴァンも楽しそうだしな・・・。
アークは一人頷いた。
※こうして王妃は攫われ、ヴァンは連れ戻された。
エレフとヴァンは一度結構な底に落とされてるので、ちょっとのご褒美でもテンション爆上がり・・・。
上手いことやりますなぁ、ノアさん。お主もワルよのぉ。
なんてアークが言ったとか言わないとかw
※地震の被災地の方々、お見舞い申し上げます。
身の安全にお気をつけてお過ごし下さい。
3.11の時の震度5強を体験した身としては他人事ではありません。寒空の下、恐怖や不安でお過ごしでしょうが、拙作で少しでも笑って頂けたら幸いです。
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