迷い子の月下美人

エウラ

文字の大きさ
上 下
426 / 533

419 竜王と獅子王の対談 2

しおりを挟む

翌日。

どうやらアークとノアは未だにお籠もり中とのコトで、当然ながら抗議目的の対談には不参加。

「良いよ良いよ。私達に任せて。ノアちゃんの希望通り、獣人国には行かない方向で話を進めるからね。ついでにあのクソアホ猫の案件もこちらで全て采配出来るように言質をもぎ取って来るからね。・・・・・・ふふふ、腕が鳴るなぁ」

昨日も見せた和やかな笑みに不穏な発言を乗せて王城に向かったウラノスとレーゲンを見送るアンジェリクとシルヴァラ、アルジェントとレイン、執事長のアヴィール。

「頑張ってね!」
「いってら~」
「頼みますよ」
「気を付けて行ってらっしゃい」
「・・・・・・お相手の方々が不憫ですな。自業自得でしょうが」

それぞれ声をかけて仕事に戻って行った。

ウラノスが不在のため、仕事を割り振って熟しているのだ。
それもこれもノアのためだから皆、文句は言わない。

レイン?
レインの仕事はアルジェントを癒すことだ。
それによって仕事の捗り方が違うので、レインには存分に発破をかけて貰っている。

「アル、終わったらいっぱい構ってね?」
「もちろんだとも。その為には早く終わさねばな!」
「嬉しいけど、無理しないでね?」
「ああ、レインはソファでゆっくりしていて良いからな」

こんな具合に。

おかげで捗って助かります。
レイン様々ですね、とほのほのとするアヴィール達だった。



打って変わって重苦しい空気の王城内。

竜王陛下の執務室に隣接する応接室に集まった
クリカラとリュウギ、ウラノスとレーゲン。
ソコに護衛という名の竜王暴走抑止要員の近衛騎士5名・・・に混じったルドヴィカ。

ちゃっかり近衛騎士の制服を着ているところを見るに確信犯であろう。

「・・・オイコラ、何故しれっと混じってる?」

クリカラが頭が痛いとばかりに眉間に皺を寄せる。
それに対してルドヴィカはにっこり笑って応えた。

「え? イヤだなあ、陛下が暴走したら止めないとですよね? その為にいるんであって参加してるわけじゃ無いですよ?」
「・・・お前は近衛騎士じゃなくて魔法騎士団の団長だろうが。全く何やってるんだ、魔法騎士団は。適当すぎるだろう・・・」

それには近衛騎士達も酷く同感である。
仕事はどうしたと言いたい。
そもそもぴったりサイズの近衛騎士の制服は何処から出してきたんだ。

「・・・仕方無い。お前はそのまま壁と仲良しこよししておれ。良いか? 絶対に喋るんじゃ無いぞ!! 茶化すなよ?!」
「了解です!」

クリカラに一応許可を得られたルドヴィカは張り切ってそう応えたが、全員、気が気じゃ無かった。

「・・・・・・めちゃくちゃ心配だ・・・」

だがしかし、通信の時間が迫っていたために外に連れ出す労力や手間を考えた結果、仕方無く同席を許可するのだった。



---そして迎えた対談の時刻。

リュウギが通信魔導具を起動させて、いよいよ獣人国との対談が始まる。

今までは側近達に対応を任せていたが、今日はクリカラが直接話をする旨を先に連絡しておいた。
故に獣人国向こうでも獅子王レナードと宰相が対応すると返事を貰っている。

『---初めまして、竜王陛下クリカラ殿。私が獣人国の今代の獅子王、レナードと申す者。こちらは我が国の宰相で狼獣人のオウランと申す者です。以後、見知り置きを』
『オウラン・アキーラと申します、竜王陛下』

レナード王は金色の瞳に肩くらいの緩い金髪に獅子の丸い耳が頭に付いているガッチリ体型で、オウランは濃い青の瞳に銀色の癖のない長髪を後ろで緩く縛り、銀色の狼の耳のひょろりと細い体型だった。

「うむ。獅子王レナード殿と宰相オウラン殿だな。儂は知っての通り竜王クリカラだ。これは側近のリュウギ。そしてこちらはヴァルハラ大公家の大公ウラノスとその側近のレーゲン。此度、招喚の要請のあった薬師ノアの義父である」
「ヴァルハラ大公家ウラノスです」
「側近のレーゲンです」

お互い硬い空気のまま、それぞれ軽く自己紹介をしたところで、クリカラは直球で本題に入った。

「さて、ノアの招喚の件だが、断る事になったのでな、その連絡だ」
『---え・・・』

それに対して獣人国側は呆然と呟いたのだった。





※漸く対談が始まる。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

処理中です...