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417 ヴァンの動向 2
しおりを挟む暫く運動不足解消を兼ねた魔物狩りを楽しんで気が済んだらしいヴァンが、足取り軽く精霊王の住処に戻ってきた。
『おーい、精霊王!! たんまり狩ってきたぞ---!! ・・・・・・って、アレ? ・・・精霊王は?』
ワフワフと叫べば、ドコにも見当たらない精霊王。
代わりに上位精霊達が返事を返してくれた。
《スミマセン、精霊王様は少し前にノア様達に呼ばれたようで出かけてしまいました》
『あーん? 呼ばれた? ノア達に?』
そう言うとめちゃくちゃガラ悪く低い声で唸るフェンリル様・・・コワイ。
《---は、はい。あ、でもイヤな感じとかでは無くて、呼ばれた瞬間に嬉々として消えましたから、たいした用事ではないと思われますが》
『そうか、なら良いが』
ビクビクしながら慌てて言い返すとホッとするヴァン。
騒いでいてもやはりノア達が心配な様子。
落ち着いたヴァンに上位精霊が尋ねた。
《フェンリル様はお帰りに? ソレとも精霊王様がお戻りになるまでお待ちになりますか?》
『うーむ・・・どうせ暇だし、待ちながらまたそこいらを駆けて来るわ』
ソワソワしながらちょっと考えてそう言うヴァンにクスッとしながら上位精霊が返す。
《畏まりました。フェンリル様には無用でしょうが、一応、お気をつけて》
『おう! じゃあ戻ったら知らせてくれ!』
そう言うと一目散に駆けだしていった。
《了解しまし---・・・もう行っちゃったよ》
《あーあ、楽しそう。・・・仕方がない。精霊王様がいないから私は西を見廻ってくるか・・・》
《じゃあ私は東》
《私達は北と南かな》
《そうだね。サッサと終わらせてこよう》
そう言って皆、それぞれの方角に散って行くのだった。
それから暫くして、見廻りを終えて近況報告をしていた上位精霊達の元に不意に精霊王が還って来た。
《お帰りなさい、精霊王様》
《ああ、ただいま。すまなかったね、急に》
《いえいえ、何時ものこ・・・いえ、大丈夫です》
上位精霊の一人が口を滑らせそうになり、隣から小突かれていた。
《・・・・・・精霊王様? どうかなさいましたか?》
やや浮かない顔の精霊王に気付いた他の精霊が声をかければ、向こうで何かあったのか、不意に精霊達に情報収集を頼み始めた。
《獣人国の様子を知りたいのだ。どうやらあちらの王妃が病に伏せっておるそうでな、その関係でノアが獣人国に招喚されているらしいのだ》
《ノア様が? ソレは大変ですね! 詳しく調べてきましょう!》
《頼んだぞ》
そう言って皆が散り散りに消えたときに、遊んでいたヴァンが精霊王に気付いて戻ってきた。
『おう、精霊王。ノア達に呼ばれたらしいの。どうだった?』
《む、ヴァンか。まだ居たのか》
『お主を待っておったのだ。ノア達のところに居たのだろう? まだ帰っていないのか?』
《うむ。ちいと厄介事があったらしくての。気になって一足先に戻ってきたのよ》
精霊王の話を聞いたヴァンが眉をひそめる。
『・・・・・・何やらキナ臭い感じがするの』
《・・・そうよな。今、情報収集を頼んだところでな・・・》
---はああ・・・と溜息を吐く二人。
ノア達は色々と騒動を引き寄せやすい。
それが楽しいことならば大歓迎だが。
---ノアやノアの大切なモノを傷付ける厄介事であるならば・・・。
---徹底的に潰すまでだ。
もちろんノアやレインには絶対に気付かせない方向で。
情報を待つ間、二人はドス黒いオーラを放っていたのだった。
---そしてその後、精霊王のやらかし(かもしれない)話を聞いてヴァンが密かに笑うのだったが。
---我も確認してこようかの。
獣人国のかつての王には少々貸しがあるしの・・・。
『我も情報収集をして来るから獣人国へ送ってくれ。後で喚ぶから、そうしたらノア達の元へ転移を頼む』
ふっふっふ、と黒い笑みを溢しながらヴァンは精霊王に獣人国の側の古の森付近に転移して貰うのだった。
※遅くなりました。
精霊王の陰でこちらも暗躍中。
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