371 / 533
365 Let’s 探索! 2
しおりを挟む昼食の準備が終わる頃、ワッフワッフと足取り軽くヴァンが戻ってきた。
『おう、一通り駆けてきたがコレといった脅威になるモノは見当たらんな!』
褒めて褒めてと言わんばかりの尻尾の振りようにノアは笑った。
「そっか。楽しかった?」
『おう! それで良い匂いがしてきたから急いで戻ってきた! 早う食べるぞ!!』
「・・・相変わらず食いしん坊イッヌだな」
『なんとでも言え! 食えれば構ワン!!』
「ふふっ、ヴァン、可愛いなあ」
食いしん坊のヴァンに呆れ顔のアークに、楽しそうなノア。
のんびりとしたピクニックのように和やかな空気の中、ノアの料理に舌鼓を打ちながら昼食を終えると、ノアは辺りを鑑定しだした。
実は足を踏み入れたときから気になっていたのだ。
目に見える範囲の草原のあちこちに、薬草が群生しているのに気付いていたノアは、薬草の少なそうな場所を選んでテーブルを広げていたのだ。
「---うわ、見事だな・・・」
近くの草むらの鑑定で見えたモノは、ありきたりな薬草の群生が主だったが、手つかずのおかげか通常の倍以上の大きさで量もたくさんあった。
おもむろに一つ摘んで詳しく鑑定すると、薬草の品質が『A』ランク。他のもおおよそ同じで、低くても『C』だった。
地上では薬草畑で手間暇をかけて育てても精々が『B』だった事を考えると、ココは薬師にとっては天国だ。
「アーク、他も見てきて良い?」
「良いよ、ていうか俺も行くから、何でも言ってくれ」
「うん、ありがとう! じゃあじゃあ、あっち行きたい!」
そう言ってワクワクしながら木々が集まった林の方を指しながら歩き出した。
「---ふはっ! ノア、言うより先に足が動いてる。そんなにか!」
「え、だってだってめちゃくちゃ生えてるんだよ?! 珍しい薬草があるかもしれないしそれがワサワサあったらめちゃくちゃ嬉しいじゃん!!」
息継ぎもせずに言い切るノアの、常に無い興奮状態が知れた。
アークは笑いながら、鑑定でさりげなく薬草を避けて歩いてノアの後を着いて行く。
ノアも同じように避けて行ったので、それが正解だろう。
着いた林の辺りにも薬草が群生していた。
やはり『A』ランクが多い。
アークはそこまで薬草に詳しく無いので『へえ、凄いな』くらいの感想しか出てこないが、ノアはずっと興奮していた。
曰く、ココの薬草を使えば確実に高品質で高性能のポーションが作れるらしい。
イヤ貴方、今でも普通に品質『S』のポーション作れるでしょうよ、とツッコみたくなったアーク。
---お前が錬金術や普通の調剤で作ったら確実にもっと高品質になるよ。
---うん?
試しに調剤する?
うんうん、確認は必要だよな。もちろん良いぜ。
ノアはそれを聞いてぱあっと顔を綻ばせて、いそいそと薬草を摘み始めた。
「俺も手伝うぜ。駆け出しの頃にも薬草採取は散々やったからな」
・・・駆け出しって言ってもいきなりCランクからだったけど。
でも何事も経験だとFランクの依頼も受けまくったなあ・・・。
「ありがとう! 助かる」
ノアの役に立ってるから、結果オーライだ。
それから一通り見て回って必要数+予備で少し採取し、最初に昼食を摂った場所に戻ったのは夕方だった。
結果、この平原に生えていた薬草は初級クラスのポーション用に使うモノばかりだったが、平均して品質『A』だったので期待は出来そうだ。
「今日はココにテントを出して一泊しよう。試作は明日だ。良いな?」
「・・・・・・うう・・・早く試したいけど、我慢する」
「ヨシ。じゃあテント出して・・・、夕飯も外で食べるか?」
「せっかくだし、そうしよう。夕日が綺麗だ」
『賛成!!』
「・・・ヴァン、どこにいたの?」
『・・・・・・気持ち良くて、さっきまでココでずっと寝てた』
確かに、身体のあちこちに葉っぱが付いて、銀の毛並みが寝癖?っぽい感じに乱れている。
「・・・・・・動いてないのに食べられるの?」
『我は何時でも食べられるぞ!』
「やっぱり食いしん坊イッヌだな」
『幻獣!!』
「うん。食べ過ぎても太らないところは良いかもね」
『そこは我も感謝している。食べ放題!』
「「前言撤回。やっぱり食いしん坊イッヌ」」
ハハハッと楽しそうな笑い声が響き、テキパキと夕御飯の支度は進んでいくのだった。
173
お気に入りに追加
7,359
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる