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351 コレが本題 1
しおりを挟む精霊王はアレからすぐに還っていった。
ただ、ギギルルの実家の農園にいるクルール達が大変気になったようで、近いうちに顔を見に行くと言って還った。
相変わらず自由奔放である。
グラウクスは漸く復活してお茶を飲んで一息吐いた。
「---もう、お前ら非常識過ぎて、何も言えねえわ・・・。少しは年寄りを労れっての・・・」
めちゃくちゃ疲れたようである。
「こういうときだけ年寄り扱い。普段はジジイ扱いすんなって怒るクセに」
「ホントだよな」
ギギルルのごもっともな言い分に返す気力も無さそうである。
「---ところで、本当はこういう話がしたかった訳じゃないんでしょう?」
不意にノアが話し出した。
ギギルル兄弟はキョトンとしてノアとグラウクスを見た。
アークは苦笑している。
「・・・・・・あー、うん。よく分かったな」
バツが悪そうにそう言うグラウクス。
ギギルル兄弟はえっと驚いた。
「・・・マジ?」
「ノア達の武勇伝が聞きたかったんじゃないんだ?」
「いや、ソレも聞きたかったのは本当。ただ、本命は違ってて・・・竜人に話を聞きたかったんだよ。考古学者としてな」
そう言って真剣な顔になったグラウクス。
「---それでな、その話を」
「する前にもう一回お代わり! 店員さーん! 飲み物とケーキ追加注文お願いします!!」
「え、まだ食うの?」
「だってもう食べちゃったから」
「・・・お前ら、話の腰を折りやがって・・・」
グラウクスが漸く話し出そうとしたら、ルルが待ったをかけるように被せてきて、追加のケーキを頼んでいた。
ギギが呆れて、グラウクスも深い溜息を吐いた。
アークとノアは苦笑しながら飲み物だけ追加した。
結局、ルルは今度はフルーツタルトをワンホール頼んで、再びもぐもぐ食べ始めた。
「ほれほほほはひーはは、ほーほ」
「・・・俺のことは良いからどうぞ・・・だってよ」
「凄いねギギ、よく分かったね」
「ひひんへんひん!」
「『以心伝心』じゃねえよ! 飲み込んでから喋れ!」
「はははは・・・」
---全く、と言いながらお茶を飲んで一息吐くギギ。
お疲れ様。
そして漸く本題に入れそう。
「・・・はぁ。すまんな、煩くて」
「何時ものことだ。気にするな。それで?」
「ああ、実は俺達考古学者の間では有名な都市伝説なんだが・・・」
「都市伝説?って、何?」
グラウクスの言葉にある都市伝説の意味が良く分からなかったようで、ノアが申し訳無さそうに聞いてきた。
「都市伝説っていうのはな、本当にあるかどうかも分からないような噂話みたいなもんだ。誰も実際には見ていないのに、あたかも体験したとか存在するって言われているモノの事だな」
「え、なんか怖そう」
グラウクスの話に怖そうと言いつつノアがちょっと楽しそうだ。
「その都市伝説の話の中に、天空に浮かぶ島があって」
「・・・・・・それって、竜王国の事じゃ無いの?」
グラウクスの話を聞いて最初にパッと浮かんだのはすっかりお馴染みになった竜王国だった。
それにグラウクスは首を振った。
「いやいや、竜王国は実在しているし、そもそも何千年も前からあるだろう? 都市伝説じゃ無い。だが空に浮いている島って、見える範囲でも幾つかあるだろう?」
「・・・・・・あるの?」
ノアはキョトンとしてアークに問いかけた。
アークは苦笑しながら応える。
「ああ、あるな。竜王国からも幾つか見えるが、実際にはその浮島に行く用が無いから見るだけで足を踏み入れたことはないが」
「へえ・・・。俺、アークと番うまであの街と側の迷宮くらいしか行ったこと無いし、生まれて初めて翔んだのって北の迷宮の中だし、まともに翔んだのは要塞都市と神聖な霊山くらいだから周りを見る余裕なかったもんな・・・」
何となくつらつらと記憶の中の出来事を事務的に言葉にしただけなのに、ノアの裏事情を知っているギギルル兄弟やアークはちょっとしんみりしてしまう。
詳しいことはほとんど知らないグラウクスだが、ノア自身が竜人の混血だったことを知らなかったのかな、と想像し、それなら今まで天空の浮島を知らなかったとしても仕方が無いと結論づけた。
そしてしんみりするほどの事情があったのだろう事も・・・。
だが深くはツッコまない。
グラウクスはヘンなところで空気の読める、賢い変人だった。
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