迷い子の月下美人

エウラ

文字の大きさ
上 下
347 / 534

343 猫獣人ゴーレムの性能

しおりを挟む

アレから庭にテントを出して、ノアとアークはテント内のお風呂でちょっとだけイチャイチャしたあと、朝までぐっすり眠った。



猫獣人ゴーレム達は纏めて『クルール』と呼ぶことにした。
虹色をイメージしているからだ。

彼等はすっかりゾアに懐いていて、談話室を出るときも離れず、結局スリングに7人押し込んで抱っこしていった。

「見た目に反してゴーレムだから頑丈なんで。そんなに心配要らないよ。一緒に寝ても潰れないし」

ノアがそう言い、じゃあ一緒に寝るかとゾアが聞くとコクコク頷いて『あい』と返事をする猫獣人ゴーレムクルール達にメロメロなゾア。

おそらく全員、布団に乗ったり潜ったりするんだろうなあ、可愛いだろうなとちょっぴり羨ましいノアだった。



そして次の日、日が昇る前に起きて軽く朝食をテントで済ますとノア達は外に出た。

テントを片付けてギギ達の母屋を見ると、すでに起き出して野菜の収穫に向かうところだった。

「おはようギギ、ルル」
「おう、おはよう。何だ、野菜の収穫もやってくれるのか?」
「ああ、うん。クルール達の性能を見て貰おうと思って。もう来てる?」
「ああ、ほら。親父にくっついてる。昨夜は一つのベッドにぎゅうぎゅうで寝たらしいぜ」
「絵面がヤバい」

ギギ達は見てはいないが想像したらしい。
肩が震えている。
笑いを堪えているのだろう。

「・・・まあ、可愛いんじゃない?」

何となく、猫に布団を取られて隅っこで寝ている様子が目に浮かんだ。

「それはともかく、あの子達に仕事の指示を出そうか。ゾアさん、こっち来てくれる?」
「---おお、おはよう。コイツらか?」

声をかけたら近付いてきてくれた。
相変わらず頭から肩からしがみつかれてる様子に笑いながらノアが言う。

「基本的にはゾアさんの指示で動くけど、他の従業員の言うことも聞くよ。ただ優先度はゾアさんだから気を付けてね。あと『お願い』と『命令』だったら『命令』が優先されるからその辺りも注意して」
「お、おう、そうなんだ。可愛いからあんまり『命令』はしたくないなあ」

困ったように笑いながらそう言うゾア。
やっぱり優しい。

「『命令』って言っても、これは絶対にしちゃダメとか、逆にこれは絶対やって欲しいという約束事を命令にして、普段はこの野菜を収穫してくれとかそういう言い方で良いんだよ」

ノアがゾアに取説を渡してそう言った。

「あと、収穫の仕方は昨日俺が教わった果物はすでに記憶させてあるけど、それ以外の果実や野菜は今日これから目と耳で憶えさせるから連れて行ってあげて。一人が記憶すれば共有されて全員仕事を把握できるから」
「---そうなのか、凄いな。でもこんなに小っさくて、仕事は憶えても作業できないんじゃ無いか?」

ゾアが至極まともな事を言った。
それをノアは微笑んで返す。

「大丈夫。小さいけど、俺の作ったゴーレムだから」

それを聞いて疑問符だらけのゾアとは反対に妙に納得しているギギルル兄弟とアーク、それにヴァン。

「なんとなーく想像できるな」
「うん、やらかすよね」
「ノアだからな」
『ノアだからな!』

すっかりノアの規格外な能力に慣れたギギルル兄弟だった。



そうして、やはり想像通り。

各々の持ち場に向かった従業員について行かせた先で、クルール達は自分達の能力を遺憾なく発揮した。

魔法で対応できるところはすべて魔法を使い、昨日のノアの如く繊細な魔法操作でもってあっという間に収穫。

魔法が難しい作物は魔法で触手のような手を何本も作り、操作して(一応)で収穫。

昨日ノアがもいでいためちゃくちゃ大きいパラハニーの果実の収穫と運搬の時は、猫獣人ゴーレムがデカいゴーレムを作ってそのゴーレムを操作するという、意味が分からない事をしでかしていた。

「・・・・・・どういう事?」
「あー、アレは錬金術じゃ無くて、単なる土魔法で作る土人形ゴーレムだよ。魔石も使ってないから、不要になったら土に戻せる。さっき作ってた触手っぽいのも同じ。土が無ければ水魔法で同じ事が出来るようになってるよ」
「・・・・・・へー・・・」
「・・・・・・まだまだ驚かされることがあるんだねえ・・・・・・」

あまりの事に聞けばそう返ってきたが・・・。
たぶんソレ、ノアだから出来ることだと思うとギギルル兄弟もアーク達も心の中で思ったはずだ。

ゾアだけは未だに衝撃から立ち直れていなかった。

「ちなみに魔力は魔石に入っている分で百年は保つと思う。空気中の魔力も勝手に吸収するから補充も少なくて済む。まあ、余裕があれば毎日一度は使った分の補充に、指先に魔力を籠めて口に持っていってあげて。ちうちうと吸うから。満足したら口から離すから」
「・・・・・・そう言えば、普通の食事とかは?」

ゾアが我に返ってそう聞いてきた。

「必要はないけど、微量の魔力を吸収するから大丈夫。全部取り込むから、排泄はしない」
「そっか、良かった。昨夜は寝るときになって気になってなあ・・・良かった良かった!」

---すっかりじぃじの顔になったゾアだった。






※遅くなりました。


しおりを挟む
感想 1,184

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼第2章2025年1月18日より投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...