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338 ギルファーム改造計画 1
しおりを挟むお昼ご飯のバーベキューは何時ものことだそうで、従業員は手慣れた様子で好き勝手に焼いて食べていた。
「ゾアさん、この一帯がギルファームの敷地なの?」
「ああ。ウチが代々住んでいた家の裏でな、ただの林の小高い丘だったところを少しずつ切り開いて農地にしたんだ。元々は自分ちで賄えるだけの野菜とか少しの果樹が植わっていただけなのを俺が農園にまで広げて商売するようになったんだ」
「親父が冒険者を引退したあとだな。俺達も木を伐採して切り株を引っこ抜いたり手伝ったよ」
「親父、引退したらスローライフするのが夢だったんだよな。・・・・・・忙しくてちっともスローライフじゃ無いけど!」
ゾアの話に補足を入れて笑うギギ達。
ゾアも笑った。
「それな! 俺も思ったけど、商売にしちまったのがいけなかった! 結局、経営とか従業員の面倒とかやることがいっぱいでさあ・・・。でも後悔はしてないんだ。ギギ達が帰る場所を用意できたからな」
「「・・・親父」」
「農園の名前な、お前らの名前を取って付けたんだよ」
---ギギとルル。一文字ずつ取ってギルファーム。
恥ずかしいからな、今初めて言ったわ・・・そう言って照れるゾアにガシッと抱き付く二人。
「親父、ありがと」
「ありがとう」
「・・・・・・良いって。それより誰かいい人見つけて身を固めてくれると安心なんだがな。・・・いなさそうだよな」
「「煩い!」」
「はっはっはっ!」
ガタイの良い三人が抱き合う姿を、従業員達が暑っ苦しいなと思いながら温かく見守っていた。
ノアとアークも微笑ましそうに見つめた。
お昼のバーベキューの後は、従業員達は手が空いたからと別の仕事に戻っていった。
ゾアも今のうちにやれることをやっておくと、事務所に籠もった。
「ギギ達はどうするの?」
「俺達も農園の周りの点検とか行って来るよ。補修が必要なところとか確認してくる。ノア達はゆっくりしていて構わないぜ」
『我もギギ達に付いていってよいか?』
「ああ構わないぜ。良いよな?」
「構わない。好きにしてくれ」
ヴァンがギギ達に付いていくことになり二人になることが決まったノアが言った。
「うん、じゃあ、俺達はあそこにテント出すね。夕方頃までテントにいるから、何かあったら声かけてくれる? ・・・・・・アークに」
「おう、ぜひそうしてくれ」
「「ははっ! りょーかい!!」」
ノアの言い方にアークとギギ達が笑って了承する。
おそらく何か作業をするんだろう。
ノアは集中すると周りが見えなくなるらしいからな。
自覚してアークに頼るようになったのは良いことだ。
そうしてめいめいに去っていった後に残った二人はちゃっちゃとテントを広げて中に入った。
「アーク、俺、暫く作業部屋で錬成とかするから、何かあれば声かけてね」
「おう、俺はリビングで勝手に寛いでるから心配するな。ノアも無理はするなよ」
「うん、ありがとう」
そう言って部屋に入っていった。
それを見送り、お茶を出してひと息つくアーク。
「ノア、何か農作業用の魔導具でも錬成するんだろうな。アレは繊細で重労働だった。従業員はもう慣れたんだろうが、大変だったもんな」
補助する魔導具なのか、どんなのを作るんだろうな。
ノアは何時も斜め上の発想で、規格外な事をやらかすからなあ・・・。
「ま、出来てからのお楽しみってヤツだな」
アークは呑気に鼻唄を歌いながらお茶を楽しんでいた。
※短くてスミマセン。キリ良くしたら短くなってしまった。
続きは次の話で。
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