迷い子の月下美人

エウラ

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333　冒険者ギルド経由ギギルル兄弟のお宅訪問　１

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「おー！　ひと月振りの故郷だぜ」
「でも何か久しぶりって感じしないよね」
「･･･色々、ほんっと色々あったからあっという間に過ぎたひと月だったよな･･･」

しみじみと言うギギとルルを見てからヴァンに目を向けると、タラーッと汗を垂らした(ように見える)ヴァンがそっと目を逸らした。

･･･うん、色々に心当たりがあるんだね？

ノアはアークと顔を見合わせて苦笑した。

そんな久しぶりの冒険者ギルドに一歩足を踏み入れると、シーンと沈黙･･･。
からのアークの威圧(軽め)までがお約束だった。

「ご無沙汰しております。アルカンシエル殿、ノア殿、その他の愉快な仲間達」

そしてやはり当然のように待ち受けていたラミエル。

「俺らの扱いが雑だな！　アークと一緒な！」
「愉快な仲間達、じゃねえよ！　その他で纏めんな！」
「･･･お前、出入口に塩撒いたろ」
「は？」
「へっ？！」

ギギルル兄弟がぎゃあぎゃあ騒いでると、ポツッとアークが呟いた。
それにギギルル兄弟が変な声を出して固まる。

「おや、バレましたか」

ニヤリと口の端をあげて黒い部分をチラッと見せるラミエルにアークは呆れた。

「お前ねえ･･･幾ら俺達が来たからって、何も塩撒くこと無いだろうが」
「ジョークの通じない方ですねえ」
「通じてるわ。ノアが気にするからヤメロって言ってんの！」

若干イラッとしつつアークがそう言うと、ラミエルはハッとした。

「ああ、失礼致しました。ノア殿、アレはただの冗談ですよ。何時でも大歓迎ですので」
「･･･そっか、冗談なんだ。良かった。てっきり呪いとか除霊で撒いてるんだと･･･あっ、もし必要なら『聖浄化魔法ピュリフィケーション』使おうか？」

キョトンとしてそう言うノアに、罪悪感いっぱいの顔になったラミエル。

「･･････すみませんでした、アルカンシエル殿。全面的に私が悪かったです」
「･･････分かりゃあ良いんだが･･･そっちか」

玄関先に塩を撒く意味を普通に御祓いの意味にとったノアの斜め上の解釈に気の抜けたアーク達だった。

そんなやり取りをギルド職員や冒険者達に見られながらラミエルに執務室に案内をされた。

「お久しぶりです。お元気そうですね」

カフカが席を立ち、軽く挨拶をしてきた。
ノア達は促されてソファに座る。

「今回はどうしたんです？　特に連絡は無かったと思いましたが･･･？」

不思議そうに言うカフカに応えたのはギギ達だ。

「ああ、それな。俺達兄弟の里帰りに着いてきただけだよ」
「ギギルル殿の？」
「うん、この前はそれどころじゃなくて竜王国に戻っちゃったからさあ、ここら辺でのんびりしてちょっと親孝行しようと思って」
「ギギルル兄弟のお父さんに挨拶をしたくて、アークと着いてきちゃった」

なるほど、とカフカ達は思った。
ノアの母親のアリテシアの救出依頼を受けた冒険者ＰＴのメンバーだったと思い出したからだ。

「ではコレから？」
「んー、親父に何にも連絡してないからなあ、とりあえず俺等は家に行ってみるが、アーク達はどうする？」
「うーん、場所を知りたいからとりあえず一緒に行ってみて、留守なら予定を合わせて会えるようにする。それから、宿だが･･･」

アークがちょっと考えているが、ノアはこの前の宿が気に入っていた。
それに迷宮に捕まっていたから、ちょっと滞在期間が短くてもったいなかったので。

「アーク、この前の『火の鳥』が空いてたら良いな」
「あそこか。別に良いが他の宿も色々あるぞ？」
「あそこの雰囲気が好きなんだ。･･･ダメ？」

ノアが無意識の上目遣いでアークに懇願した。
それにアークはノックアウト。

「･･･っぐ。良いぜ、先に宿に向かおう、すぐ行こう。空いてると良いな！」
「うん！」
「アーク、チョロいな」
「ノア限定だけどね」

もはやココがギルマスの執務室であることを忘れていそうな二人にギギ達もカフカ達も苦笑した。

『おーい、我を忘れとるぞ』

半ば空気と化したヴァンも呆れていた。

「邪魔したな！」
「お邪魔しました」
「「『またな』」」
「何かあれば何時でもどうぞ」
「来なくて良いです」

サッサと出て行くアーク達に続いてギギ達も執務室をあとにした。

それをカフカは何時ものお決まりの文句を言って見送り、ラミエルは聞こえないような呟きを返していた。

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